テーマ:自著講読
平穏に見えても「外」は日々是戦場なのである。ヘーゲルは精神現象学をナポレオンの戦火の下で執筆し、ヴィトゲンシュタインはトラクタートゥス・ロギコ・フィロソフィクスの草稿に兵士として塹壕で没頭し、アランも大砲を撃ちながら芸術体系の稿を練った。ぼくはいま、嘗て或る念力治療師が、「わたしが製薬会社の薬無しの病気治療法を公開したらわたしは企業によってこの世から消されてしまう」、と真剣な真顔で言っていたことを思い出す。世間社会はその背後の命で何でもやるだろう。真の完全犯罪を。治せるはずの症状の治療開発も企業の都合次第だ。社会という底無しの集合体の力が個人を押し潰すその力に戦時・平時の違いなどありはしない。集団に依って生きること自体が、個人の善意の有無に関らず猜疑・対立・戦争(怒りと憎しみ・悲しみの記憶)に導くことを理解するには、渡来人と現地人との間の物語を歴史の中から少し思い出すだけで充分だろう。そういうことを勉強したまえ。そういう中でもぼくは自分の存在と美を証したい。これが本当のイデアリスム(世で理想主義などと翻訳されている精神態度)の原点だ。甘っちょろい予定調和的な世界観ほど無責任で薄情でエゴイスティックで腹の立つものは無い。人間と社会の無限のアンティノミー(二律背反)と先生が繰返し指摘している事態を自分の中で徹底的に煮詰めよ。それが幸福論の門だ。