(素描中)

 

 

一日のなかで一定時間を素描に集中することが生のリズムと欲求になってきている。

 

 

 

 

ねえ裕美ちゃん、芸術家はみな仕事に汗をかく、物理的に汗をかくのはほんとうだね。自分の全霊を懸けない芸術家はそもそも芸術家ではない。ここに芸術の何たるかという本質があらわれている。つまり、芸術とは、「魂の熱烈な告白」(ルオー)なのだ。それにきみは日々生きている。ぼくもそのありようがわかってきたよ。じぶんの実践で。 学問者も自己をかんがえるが、自己は行動しなければわからない。芸術家は端的に行動そのものに生きて自己を現わし知る者なのだ。

 

それから、どうもきみ自身かきみのお母さんかが、ぼくの欄と作品をみておられるね。 ほんの瞬間にだけど、以心伝心でつぶやきが聞こえることがあるんだ。ぼくの錯覚でなければだけど、ぼくの長年の経験からかなり蓋然性は高いよ。ぼくの素描についてどういうご感想をお持ちかな、まだ聞くのははやいかもしれないけれど。素人玄人の区別は問題にならない。素描に現われる人間の本質的なものこそ問題なのだ。

 

 

 

 

 

絵には魂が入って「生」が出現しなければならないと思うようになった。そのいみではこれはまだまだ。

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美とは、意図的につくりだせるものではない。感じるものに忠実に一生懸命迫ろうと奮闘する時を生きて おのずと生じているものである。 すべての美の創造はそのようであろう。  それを感得した。

 

(正直、原画を見せられないのが残念です。まさしくぼくの思念したものが実現されている。)