優美な音色は それに相応する鍵盤への触れ方をしてはじめて生じるものであることを、きみほどはっきりと おしえてくれるひとはいない。 

 

優美なだけでなく、きみの音色はおどろくほど純粋で深い魂を籠めている。人目を気にしないで(視線をとても敏感に意識してしまうきみはかわいらしい!)独りで弾くきみの表情を存分に見ることができたら、きっと納得するものを感じるだろう。

 

弾き終えたあとのきみの満足そうな表情は、仕事を果たした安堵や脱力とは無縁の、最高の意味での自分本位(マイペース)の成就の満足をしめしていて、きみがきみの魂を生きて演奏していたのであることを明かしてくれる。 もし無理した緊張の労働であれば、それほど聴く者の心に沁みないはずだ。その場合は 必死で表現するものを虚空から引き出そうとする神経戦的演奏だろうが、そういうものの微塵もないきみの演奏の様子のすばらしさは、きみが演奏しつつ表現する世界に住みきり、その世界を生ききっていることがわかることだ。〔しかも客観的に心を打つ音色を技術的にも生んでいる。〕 ほかにそういうひといないよ。