さて、これは言っておくことが「義務」だと思うから言うが、昨日午後十時からNHK教育であった特異な科学的話題をテーマにした放送『時空を超えて』「宇宙人はどのように思考するのか?」で、集団化した蟻は一個の頭脳のように働くという、興味ある事実の紹介があった。これは集合的容喙現象の理解に役立ちそうである。この主題で括っているぼくの叙述の、三節前と二節前で、都市に自動車が密集して走っているのに街路や広場には誰も見えなかったという、ぼくの経験した怪異事実を述べたが、これはぼくの経験したことの一例であり、他にも夥しいその種の現象を経験している(具体的に今は列挙しない)。その種のことが社会的な一定規模で起こっている。現象に共通していることは、通常の日常社会空間のなかで、計画的に集められたはずもない、各自の都合で右往左往しているはずの人々(例えばデパート内にあふれている買い物客)が、集団的にじつに異様に統率のとれた動きと様子と変化を見せる、ということである。その異様な「まとまり性」は、昨日の放送で紹介された蟻の集団行動とそっくりであると見做せることに気づいた。どうも現在、あるいはずっと以前から(例えばルソーの頃から)か、或る必要や命令に応じて、この世のかなり広範な一定地帯が、「蟻の集団知性」の出現したような様相を呈する仕組が、出来上がっているらしい。人為的技術的手段を用いる現代の集団容喙者達は、自分達の意志を、此の世の「蟻の集団知性」次元にもリンクさせる術を知っているようだ、とぼくは思う。此の世にはそういう不可視の構造がもともとあるらしい、と思う。すべては、ぼくがこれまでずっとかんがえ言ってきたことを根拠づけるようなことなのである。