「それで、君は、君の生活の方はどうなのだ?」
 私はいままで他人に話す趣味を持っていなかった自分の私生活を彼に話しだした。
「外国人でこの国に来て、君達がおどろいたような孤独の中に閉じこもっていた時に、僕は下らなく女に熱情を燃やしていたのかもしれない。女と賢くやるということはできない。僕は恋愛の巡礼ではなかった。けれども生活の方が巡礼であるからには……。そうしてブルジョワの贅沢に育った女といっしょになって……」
 長くもない私の話をきいていて、彼は言った。
「それで、君は幸福なのか?」
「だろうと思う。幸福になってやろうと思う……」
「君の生活は苦しすぎたから、君には権利があるのだよ……。それが復讐となって返ってきても、自分が幸福を感じるかぎりはね……。僕もそれを求めた……」
「知っている」
「僕にあった話を知っているのか?」
「あの頃、妻君からきいた」
「彼女が君に話したのか……。彼女は尽してくれる。僕がこうして生きているのも、彼女のおかげだ……。けれども僕達には、女に解らないことがありすぎる……。僕も幸福を追って……そう思って、一旦は妻を去って、もう一人の女の方に幸福を追った。けれども……」
「そう、よくわかる……」
 彼はしばらくだまっていた。そうして、
「君、僕達は迷信家なのだよ……。たぶん誰よりも……」


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外は、嵐