最近の鑑定依頼(8)
筆跡の鑑定依頼は最近は契約書等や金融機関関連の約定書等の住所と署名に関するものが多い。
特に金融機関関連の鑑定資料は複数ある場合が多い。また依然として遺言書の鑑定依頼もある。遺言書を偽造しようとする人にとっては遺言書に記載する文字すべての本人の筆跡がすべて揃うことはまずない。例えば遺言書の遺は通常の文面ではまず使用しない。その他にもなかなか書かない文字があるので、ここに遺言書鑑定の重要なポイントがある。
住所や署名は臨書で手本となるものは多数見つかるので、文字通り鑑定技術との戦いになる。
デジタル技術の進歩は偽造技術を格段に進歩させた。従って目視ではもはや真偽判断は至難である。
長い文章であれば、筆脈や誤字、誤用が有力な鑑定手法となるが、短い文章であればそのような鑑定は行えない。
視点を変えて書写技能や筆勢解析あるいは統計検定を行わないと正確な真偽判断ができないところまできている。ましてパソコンを使用して筆跡の偽造がなされる時代である。文字を書くのではなく、お絵かきの感覚での偽造である。法曹界や鑑定人も殆どこのことは知らない。
筆跡鑑定人にとっては疑わしきは罰せずではなく、疑わしきはもっと深く解析せよである。
筆跡鑑定人は広範な知見が必要である。図面やアートデザインの手法を知らないと、お絵かきソフトで筆跡の偽造ができるだけとは思いつきすらしないのである。