先日、久しぶりに「情熱大陸」を見ました。


今回は、シルク・ド・ソレイユの“カー”に出演している日本人、高橋典子さんにスポットを当てていました。


シルク・ド・ソレイユというのは、知っておられる方も多いと思いますが、ラスベガスで人気のサーカス・ショーです。


僕も1回だけ、本場ラスベガスで観る機会がありました。シアトルであった学会の帰りにラスベガスに寄り、いくつかある中の“オー”というショーを後輩のN先生と二人で観に行きました。 


ショーが始まるまでは、“中国雑技団の西洋編”みたいな軽い印象を持っていたのですが、一旦舞台が始まるや、どんどん引き込まれ、終わる頃には、不覚にもなんとこの僕が涙していました。


決してショーのストーリーに感動したわけではありません。そうではなく、このショーを完成させるのに、この何十人という人達が、どれほど努力してきたかと想像するだけで、自然と涙が出てきたのです。


涙を覆いながら、スタンディング・オベーションし、ふっと隣のN先生を見ると、彼の目にも、うっすら涙が・・。



二人とも、しばらく無言。


中年男が、二人揃って、涙している姿は周りからはかなり奇妙に思われたかもしれませんが、きっと、あの舞台を観た人には共感してもらえると思います。とても貴重な経験でした。

番組(「情熱大陸」)では、彼女が、幼少の頃からバトンを毎日練習し、世界選手権で優勝を何回も経験したこと、しかし、日本では、幼児を対象としたバトンの先生しか職がなく、それで、たまたま知ったカナダのシルク・ド・ソレイユに手紙を出すと、メールが来て、出演することになったこと、そのうち、ヒロインに抜擢され、一人だけで4分間の舞台をさせてもらえるようになったことなどの経緯が紹介されていました。



これは僕がいつも思うことですが・・。


人間っていうのは、結果が出ると分かっていれば、比較的頑張れると思うんです。もちろんそういう形でも立派だと思います。


しかし改めてすごいなと思うところは、報われるかどうかも分からないのに、いや、むしろ、報われないだろうと、無理だろうと半ば諦めながら、それでも全力を出し、一生懸命努力し続けられること。一人舞台が終わった後、彼女に対し、惜しみない拍手が送られるのは、そんな彼女の努力を、観客がよく理解しているからだと思います。


皆さんも、ラスベガスに行く機会があれば、シルク・ド・ソレイユ、是非観てきてください。

メタボリックシンドロームとは、簡単に、説明しておきますと、食習慣や運動不足が原因で、内臓脂肪がたまり、高血圧や糖尿病、高脂血症になる疾患群と言えます。


最近診察していると、“いわゆるメタボリックシンドロームです”と説明すると、皆さん、一様にうなずき、“なるほど”と理解して頂ける方が多くなってきました。


それだけ、メタボリックシンドロームという言葉が一般的になってきたのでしょうね。

実は、医学的には、高血圧や糖尿病、高脂血症、肥満を合わせて、「シンドロームX」や「死の四重奏」とも呼ばれ以前から注目されてはいましたが、その呼び名はあまりpopularにはなりませんでした。


では、なぜ、ここにきてメタボリックシンドロームの概念が普及してきたのでしょうか?


そのことを考える前に、メタボリックシンドロームの診断基準をおさらいしておきましょう。


まず、おへその位置のウエスト周囲径(ウエストではありません!)が、男性では、 85cm以上、女性では90cm以上の方で、次のうち2つ以上あてはまると、メタボリックシンドロームです。

血圧 収縮期血圧 130mmHg以上 かつ/または 85mmHg以上

血糖 空腹時血糖 110mg/dl以上

脂質 トリグリセライド 150mg/dl以上 かつ/または HDL 40mg/dl未満


ここで注意して頂きたいのは、これら3つの項目は、それぞれ、高血圧、高脂血症、糖尿病の診断基準までは満たしていないのです。


例えば、

高血圧ならば  収縮期血圧 140mmHg以上 または 90mmHg以上
糖尿病ならば 主に 空腹時血糖 126mg/dl以上 かつ 食後2時間値 200mg/dl 
高脂血症ならば タイプによりますが、主にLDL 140 mg/dl以上 またはトリグリセライド 150mg/dl以上 または HDL 40mg/dl未満
などを満たす必要があります。


すなわち、高血圧ではない、糖尿病でもない、高脂血症でもない、といった人でも、血糖が少し高く、血圧が少し高い、少し中性脂肪が高いなどの要因が2つ、3つ重なれば、メタボリックシンドロームであり、相乗的に血管が硬くなり、心筋梗塞や脳梗塞の危険性が一段と高くなる、ということが最近分かってきたんですね。


実は、メタボリックシンドロームの概念が普及しているのは、この点に注目されたからと僕は理解しています。


健康を維持するためには、ちょっと血圧が高いな、とか、ちょっと血糖が高いな、とか、高脂血症はあるけれど大丈夫ですと医者に言われた、などという段階から、食事療法、運動療法を心がけ、早め早めに受診し、場合によってはお薬を服用するなど、積極的に治療することが大切です。


ちなみに、これが私の内臓脂肪です。


先週の木曜日、医院を休診させて頂き、東京で行われた日本消化器外科学会という学会に参加させて頂きました。


日本消化器外科学会は、消化器(胃や腸、肝・胆・膵など)の外科医が毎年一同に集まる大きな学会です。


学術的な講演はもちろんですが、最近は、世相を反映してか、医療行政や、医療訴訟、外科医の医療環境など、10年前には考えられなかった演題が多くあり、興味深く聴かせて頂きました。

“消化器外科医療の現状と医療制度改革に向けた情報発信”という理事長講演の中では、消化器外科が、医院や病院の標榜科目にないということが問題視されていました。


言うまでもなく、標榜科目というのは、患者さんに、医院や病院が、どういう疾患を対象にしているかを伝えるためのもので、厚生省が、対象が拡がり過ぎないために、33科だけに限定しています。
一方で、現行では、一般的な診療科と専門的な診療科とが混在しているとの指摘があり、患者さんからすると、病気によってはどの科に行けばいいの?という混乱が生じることもあるようです。


例えば、乳腺科というのは、標榜科目にはなく、患者さんから、乳がんを疑った場合、どこに行けばいいのか分からないとよく言われます。

一般的には、乳腺腫瘍は、主に外科が診察にあたる疾患ですので、乳腺にしこりがある、という時は、産婦人科ではなく、外科を標榜している医院や病院を受診する必要があります。


乳腺外科はともかく、「消化器外科も標榜科目にない」。実は、僕にとっては、今更ながら意外なことでした。僕だけかといえば、そうでもなく、僕の周りの外科医も、同じ意見でした。

 確かに今まで働いてきた病院では、消化器外科ではなく、“外科”でした。 僕自身、消化器外科というのは、どこの外科と言われることも多かったです。

開業の際、標榜科目を選択しなければありませんでしたが、医院で消化器外科を標榜するわけにいきませんので、ないことに気に留めていませんでした。


なぜ、消化器外科のようなポピュラーな呼び方が抜け落ちるのでしょうか?


厚生省による標榜科目の選定というのは、政治力が強く影響するそうです。
これまでは、医師会の影響力が強く、消化器外科学会は、そういう方面で出遅れていたのだと、発表演者は訴えておられました。

奥ゆかしいのは、学会だけでなく、一般の消化器外科医は、他の科の先生方に比べ、我慢強いように感じます。僕の周りでもそうですが、仕事は一生懸命するし、少々のことでは不平や不満は吐かないタイプが多いと思います。



学会の夜は、そんな消化器外科医達?の師匠や後輩たち10人ほどで、会食し、楽しい時間を過ごせました。


帰りは、師匠のS先生と一緒でした。学会に行くときはいつもそうですが、行き帰りの時の師匠の話が大変為になります。

研究の話、膵癌などの治験の話、留学時代の話や家族の話など。時には、“あれ、この話しは前にも聞いたな”と思いながら、繰り返し聞くことになるのですが、その度に自分なりに解釈をし、新しい刺激を受けることができます。


師匠は、会えば必ず現状に妥協せず、“こんなレベルではだめだ”、“もっと上を目指さねば”と常に前向きに進化し続けています。



僕の好きな岡本太郎が残した言葉に、“己を殺せ”というセリフがあります。


いくら成功しても、過去の自分を否定するほどの覚悟と情熱を持って、新しいものを創造し続け、生き抜け、という意味ですが、師匠は、間違いなく、岡本太郎的な生き方を実践している一人です。


目指す道は異なりますが、そんな師匠に負けず、自分も、日々成長し続けるべく、精一杯頑張ろうと思います。