私達は、その後ダーツに行った。
ダーツなんて全然やらないからな〜と言っていたが、彼はそこそこ上手かった。一時間程楽しんだところで、時計は1時を回っていた。
流石にもう終電はない。
私達はあてもなく歩き出した。
しばらくして、彼の手が私の手に触れた。
私はその手を優しく握り返した。
あの日、一瞬だけ触れたことのあるあの手を…。
今はしっかりとこの手で握り返している。
彼もその手を握り返した。
今度は強く、離れないように。
そして辿り着いた場所はホテルだった。
お互い躊躇していたものの、この時間に男女が行く場所と言ったらここしかない。
迷いながらも中へ入って行った。
部屋に着くと、彼はベッドに座りこみ、どうしたら良いのかわからないと言った表情で固まってしまった。
私はそんな彼の表情を見て、彼が今どんな気持ちでここにいるのか、どんな事を考えているのかが痛い程伝わって来てしまい、ただ隣に座ることしか出来なかった。
誰にも邪魔されない、2人きりの空間。
しばらく沈黙が続いた後、私の方から話を切り出した。
初めて会話をした時から、ずっと気になっていた事。
一緒にいるととても楽しくて時間が経つのがあっという間だった事。
そして…好きになってしまった事。
彼はしばらく考え込んだ表情で黙っていた。
離婚したばかりで、こんな風になっていいのかわからない。子供もいるし、どうして自分なのか…他にもっといい人いるんじゃないか…
肝心な彼の気持ちはその言葉の中には無かった。
私が聞きたいのは、彼が私の事をどう思っているか。ただそれだけ。
「私の事、好き?」
本当はこんな事聞くつもり無かった。痛い程彼の気持ち分かるから…。
「好きかもしれない…多分」
その言葉を聞いた瞬間、私は思わず彼を抱き締めた。
「今はそうかもしれないけど、絶対に好きにさせてみせる。私と付き合ったら楽しいよ!」
目の前の大好きな人を失いたくなくて、少しの可能性に賭けてみたくなった。
彼はその言葉をどう受取ったかわからない。
でも確実だった事、それは…
その言葉が私達の物語の始まりだった。
戸惑いながらも重ねた唇と身体は、もうずっと一緒にいるかのような安心感と、ドキドキが入り交じっていた。