第28場 2015年1月1日 アメリカ山岳部時間(MST Mountain Standad Time GMT-7)9時 ロッキー山脈地下基地司令部支所~秘密時空保安局局長室
新居というか局長専用寝室での初睡眠は意外とよかった。あくまでも寝室であって住む場所ではないので物を置くスペースはほとんどないがシャワーにトイレ、洗面台、テレビ、オーディオ、ノートパソコン、小さな冷蔵庫そして一番肝心なもの・・・ベッドと狭い割にはいろいろなものが揃っている。洗濯機は置いていないがこの地下基地では安価でクリーニングサービスが受けられるので寝室レベルでは不要なものだ。ちょっとしたホテルに滞在している気分だがルームサービス等はないので空いた時間にでも何か売店で買ってきて冷蔵庫に入れておくしかない。保安局職員や秘書、ましてや事務長などを飲食物等の私的な買い物に使ってはいけない。秘書のメアリー・ステュアートとウォーレン・マクレーン事務長は気を回して何か差し入れとして持ってくるかもしれないが禁酒、禁煙、禁ローソクの地下基地生活の楽しみはせいぜい充実したレストランでの食事しかない。オーディオセットもスピーカーはなく、ヘッドフォンで楽しむのでは味気ない。休日にゆっくり過ごす別荘ではなく本来は単に寝る目的だけの場所なのでぜいたくな言えないのだが。パソコンにしてもさんざん仕事として見飽きているのでここで触る気も起きない。もっとも仕事場のパソコンでは見れない類のものを癒し目的で楽しむこともできるが過激すぎる性情報はネット上の暴力にしか感じない。つくづく仕事としてパソコンを通じていろいろなものを見るようになってから、技術進歩と共に多様化する文化についていくのは容易ではなかった。秘密時空保安局局員として一番仕事をした年代である1920年から1965年あたりが自分としては居心地のよさを感じる時空でさすがに今執務をはじめる2015年は目新しいものがありすぎて毎日若手の職員に教えてもらう日々が続くのだろう。
朝9時、事務長以外はこの年代の職員とは初顔合わせなので三交代制で本来休みの時間である職員にも無理を言って付き合ってもらった。余分なことは喋らずに局長としては短い任期ではあるがそれゆえ全力で走り抜けたいという趣旨のことを口早に言ってすぐに執務をはじめた。
わたしの机の上には山のような書類の束があった。ウォーレン・マクレーン事務長の説明によると1980年4月10日から2014年12月31日までのL1,L2,L3,M1,M2の定時報告の抜粋とアーノルド・ロッドマン氏の動向調査の抜粋と事務長自らが選び出した重要な分岐点等々の報告書で他の秘密時空保安局局員の動向についてはパソコンから個別に情報が取れるようになっていますと言われたが、わたしとしてはアーノルド・ロッドマン氏の件に専念するつもりなので他の案件は事務長判断でうまく取り計らってくれるようにたのんだ。さあ、大変だ。今日はすべてをざーっと流し読みすることにして明日からL1,L2,L3,M1,M2と五人ひとりずつのレポートを読むことにしよう。