第32場 2015年1月12日 アメリカ山岳部時間(MST Mountain Standad Time GMT-7)9時 ロッキー山脈地下基地司令部支所~秘密時空保安局局長室

 

1980年で何があったのか、そんなことで今は後を引きたくない。それよりヘンリー・アンダーソン軍曹の件はどうなっているのかが心配なので朝一番にウォーレン・マクレーン事務長を呼んで報告を求めた。

 

「局長、遅くなってすみません。ヘンリー・アンダーソン軍曹の件ですが軍の上層部と何度もやり取りをして仮の判断は出ていたのですが、最後の一名の決済が保留されたままで昨晩やっとOKが出ましたので・・・この欄に署名願います。局長の希望通りに中佐に復帰、固定勤務の解除と一部の名誉を回復するということでよろしいでしょうか?」


「ウォーレン・マクレーン事務長、名誉回復が全面的ではなく一部ということはどういうことなのかね?」


「わたしが軍の上層部と何度もやり取りをして時間がかかったのはそこに問題があったからです。当初は全面的な名誉回復を当然ながら主張しましたが、結局は一部の名誉を回復、中佐に復帰、固定勤務の解除、非が一部にあるものの既にそれ相応の罰を受けているものとみなしてこれ以上の構いはなしということで妥協しました。」


「ごくろうさま、でそのヘンリー・アンダーソン軍曹の罪状認否について、突っ込んで聞いてもいいのかね?」


「いえ、一部の名誉を回復ということなのでごく一部しか話せません。要は最後まで問題視されたのは過去から持ち帰ったものを個人的に所有していただけにとどまらす第三者に売買していたのでは?という疑惑が拭いきれないことでした。局長、もう少し時間を費やしても本来は局長に相談するべき事案に発展していたようですが、わたしの独断でここまで進めてしまっていて申し訳ありません。ご不満であれば署名をなさらずに書類を戻してください。ただ、ヘンリー・アンダーソン軍曹の中佐に復帰、固定勤務の解除というのも凍結され、再度交渉のやり直しとなりますが、より交渉の難易度は上がるものと予想されます。わたしごときでは対応できませんので、局長自ら軍の上層部の方々と直接交渉願います。」


「わかった、いい着地点だと思うよ。今すぐにサインをしょう。」


「ありがとうございます、局長。この書類を再度軍の上層部に届ければこの件は完了です。これからすぐに届けさせますのでこの辺で失礼します。」


「ウォーレン・マクレーン事務長、そんなに急がなくてもいい。いくつか質問があるので答えてほしい。黙秘権も特別に与えるので都合が悪ければ答えなくてもいい。

 

質問その1 1980年5月、ワシントンDCに出張の際、何を奥方へのみやげとしたのか?
質問その2 ヘンリー・アンダーソン軍曹の件で最後まで判断を渋っていたのは誰なのか?
質問その3 ヘンリー・アンダーソン軍曹の件で過去から持ち帰ったものを売買していた疑惑について、関連する第三者は特定できるのか?

 

まだ、いろいろ細かいことはあるのだがその他は後でいいから、以上の質問に答えてほしい。」


「今日の局長はずいぶん意地悪な方が中に住まわれているようでびっくりしています。かなりお疲れのようですがだいじょうぶなのでしょうか? すべての質問に拒否権を行使した方が何かと無難に収まるようです。ただ、一つ目はともかく、二つ目、三つ目の質問の答えはわたしが話さなくても局長の立場であれば別なルートで答えを導くことができると思いますので今わたしの口からは言いません。それからもうひとつ重要なものを預かっているのを忘れていました。書類ではなく手紙というかメッセージというのが正しいのでしょうか、1980年5月1日付けのティモシー・カーマイケル中将からのものです。」


「ウォーレン・マクレーン事務長、わたしが悪かった、完敗だ。1980年5月1日はかなり迷惑をかけたな。ティモシー・カーマイケル中将にも失礼なことをしてしまった。」


「いえいえ、わたしもいい経験をさせてもらいました。妻にはおみやげとしてワインを二本ほど買って帰りました。ティモシー・カーマイケル中将はあの日、局長のことを親身に心配していました。直接話ができなかったのですぐにペンを走らせてわたしに託したのです。」


「ありがとう。後でじっくり読むことにするよ、おやすみ。」


「局長、お疲れなのはわかりますがまだ午前中です。体調不良ということで局長専用寝室に下がられますか? それはそれでいいのですが・・・」


「悪いけれどもそうさせてもらうよ。罪人は寝て罪を償うの巻ということだ。」