量子力学とは、電子のようなミクロの世界を解明する物理学の学問分野のことです。20世紀初頭から急速な発展を遂げてきました。その創設者は、マックス・プランク、アルバート・アインシュタイン、ニールス・ボーア、ヴェルナー・ハイゼンベルグ、ルイ・ド・ブロイ、エルヴィン・シュレディンガー、ポール・ディラック、ヴォルフガング・パウリ、マックス・ボルン、・・・。いやいや、こうして名前を並べてみただけでも圧倒されそうな威圧感がありますね。分かる人には分かると思います。
その後も、物質の基本単位を解き明かす原子核・素粒子の研究、ブラックホールやビッグバン宇宙に量子力学を適用する宇宙論の発展を促し、テクノロジーの分野に至っては、エネルギーが量子的な振る舞いをする「半導体」、量子効果がマクロに出現する「超伝導」、最近では量子暗号や量子コンピュータなどへの応用にも量子力学がベースになっています。人類が謳歌する高度な技術文明において量子力学は私たちの日常生活をしっかりと支えているというわけです。
これらが、現代のサイエンスの深化、高度なテクノロジーへの応用に結びついている量子力学の発展史だと思っていました。いや、量子力学の歴史ってこれしかないと思っていました。
ところが、それだけではないらしいのです!
例えば、大手ネット通販サイトであるAmazonで「量子 スピリチュアル」など入力して検索してみましょう。すると、どうでしょう!
「量子力学的願望実現!」、「量子力学で人生好転!」、「量子力学と引き寄せの法則!」、「量子力学による強運!」などなど、この種の関連書籍が大量にリストアップされるんです!
「えぇーっ!?」
量子力学とスピリチャルが結び付くなんて全く予想もしなかった。しかしAmazonのブックレビューを確かめてみると、いづれも実に評価が高い。世間の一部でこんな状況になっていることに全然気が付かなかったし、私の視界に入っていなかった。さっそくその中から代表的な一冊を購入して読んでみたのですが、これが思った以上に面白いんですね! 本当にびっくりな内容ですが。うーん、灯台下暗し。私が大学時代から格闘してきた伝統的な量子力学とは異なる流派のようで、スピリチャル的量子力学と言えば良いのでしょうか。
たしかに・・・、伝統的な量子力学という学問分野に限って言ってもミクロの現象の解釈をめぐって今でも対立はありますよ。有名なところでは、コペンハーゲン解釈や多世界解釈(パラレルワールドのこと)など。スピリチャル的量子力学は、ラジカルだがそういう新手の解釈の一つだと捉えたら良いのかとも思いました。しかし流派はともかく、物理のファンが増えるのは大変うれしいことで、こういう興味深い現象を私自身はポジティブに受け止めています。流派が異なっていても、その真剣な探求の先で厳密な科学的手法と合流し、やがて大宇宙の神秘や大自然の真理に近づくことができれば申し分ない。
私がそのように感じる理由は2つぐらいあると推測しています。1つ目は、自分の内側に宇宙の物理学的探究と神の探究がごっちゃになったマインドを持っていること(参照:20250902-自分の宗教的なマインドを観察してみる)。これは子どものころからの聖書教育の賜物ですよね、現在でもスピリチャル、と言うか聖書の宗教的なマインドを後生大事に抱いていますから、部分的にもシンパシーを感じるところがあったのではないでしょうか。2つ目は、私自身も若干似たようなアプローチを採用していること。
我々のいる大宇宙は超ミクロな状態から出発したと考えられている。したがって宇宙の極限的な初期にスコープする宇宙論では量子力学が不可欠。これを量子的宇宙論と言う。しかし、宇宙論という学問分野自体が天才たちの墓場と言われるぐらい苛酷極まりない業界のため、量子的宇宙論に挑戦することに強いためらいがある。たまらなく高度な数学を使うし、抽象的でとにかく分かりにくい。専門書を開いても「これ、物理じゃなくて数学の本ですよね???」という感じ。凡人の私がダイレクトに量子的宇宙論にアタックするのは人生の貴重な時間を不毛に消費する結果になるリスクが非常に高い。それで私は超伝導や半導体などの物性物理の力を借りようと試みています。超伝導や半導体も量子力学を活用しているし、しかも視覚的にも現象的にもつかみやすい。こういう分野で量子力学の基礎をしっかりたたきこんでおく。そこで鍛えた量子力学を武器に、いよいよ量子的宇宙論に本格的に切り込んでいこうという目論見です。やや遠回りの道のりですが、半導体の物理は現在の自分の仕事で役立つという実利があるから決して悪くない選択だと考えています。
旺盛な好奇心を持って生活をしておりますと、思いがけず興味深い現象に遭遇することがあるから本当に面白いですよね。