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 バイオリンの弦を力まかせにぶっちぎってしまったことでガックリと肩を落とした私はしばらく茫然としていました。生まれて初めて触れるバイオリンの喜び、その興奮冷めやらぬうちに不用意にも自らの手で破壊してしまったわけですから無理もありません。「はぁ・・・いったいどうすればいいんだ・・・」とグルグルと頭の中が混乱していました。善後策を練るべくまずは落ち着いて片づけるしかないのか、あてどなくゴソゴソとバイオリンケースの中をあさってみたりしていました。


 するとケースの中にお菓子のキャラメルのような半透明黄金色の小さな物体が転がっているのを見つけました。拾い上げると表面がペタペタと指に張り付く粘着性を持っている。

私:「ん? ・・・ひょっとして、これを弓に塗る???」

 思い付きでやってみようとするところは少々考えものですが、直感に導かれるようにゴシゴシとバイオリンの弓に塗ってみることにしました。塗りたぐった弓を弦に当てると果たして音が出るのか、えーい、ままよ!


サッと弓を構え、弦の上でスライドさせる。


「ギギィ~~!」(バイオリンの音)


私:「オォーっっ!!! ホントに音が鳴った!!! すごい!」

私:「そうか! この粘着性を利用して弦を振動させているわけかっ!」


 本当に感激しました。キャラメルと思わしき物体は後ほど松ヤニの塊であることが判明するのですが、それがこんな効力を発揮するとは思いもしなかった。その意外性がかえって感動を倍増させていました。自分でバイオリンの音を作り出す、ただそれだけで衝撃でした。自分の手で音を鳴らすまではなんとなくバーチャルな存在だったバイオリン、それがリアルな存在であることを実感した瞬間でもあります。当時の自分にとってこの感覚の違いは本当に鮮やかでした。


 後日、ぶっちぎってしまった弦を真新しい弦に交換しバイオリンの練習を本格始動。よちよち歩きの素人ですから、分かりやすいメロディの曲を好んでひたすら練習を繰り返していました。選んだ代表的な曲目は、「ふるさと」、「荒城の月」、「蛍の光」、「君をのせて(天空の城ラピュタ)」、「賛美の歌212番(旧版)」などで、これらはメロディが分かりやすいばかりでなくスピードも緩やか、初心者の私にとってはとても入りやすかったのです。


 音階・調など小難しい音楽理論は無視、音程は自分の感覚だけが頼り、弾きやすい指を優先して使うというメチャクチャな練習方式でした。練習方式と呼ぶのも本当におこがましいのですが、こんなでたらめな方法でもしぶとく続けているうちに独立した音が次第に連続し始め、かろうじて曲らしく聞こえるようになってくる。曲らしくなってくると練習のし甲斐があり、ますます練習するという好循環。そうやって自分が楽しくなってくると、心の充足を他の人たちに分かちたいと思うようになっていきました。自分の腕前を自慢げに披露したいというのではなく、珍しい楽器を通じて気の合う仲間と楽しい時間を共有したい、そんな素直な感情でした。


(続く)