ひかるside


それからというもの

“藤吉さんはどこから来たの?”

“手話もう1回見せて!”

などなど


ものすごい数の紙をもらって困惑している夏鈴を

何とか連れ出し、あのうるさい人の元へと行った。



「お!来たな転校生!」

「ちょっと松田。夏鈴耳聞こえないんだってば。」

「あ、ごめん!私松田里奈。」
「ひかるとは中学が一緒で仲良くなったの。」
「よろしくね。」

「夏鈴。この人うるさいけど悪い人じゃないから安心して。」

「ちょっとひかる、ひどい!
「てかひかる手話できたの?初耳なんですけど。」

「うん。夏鈴と話したくて覚えたんだ。」

「へぇ。ひかるがそんなに人に興味持つの珍しい。」
「ねぇねぇふたりはどこで知り合ったの?」
「いつ?どんな感じで?

「松田うるさい。夏鈴に何にも伝わってないから」

(ううん。大丈夫。松田さんよろしくね。)


強ばらせていた表情がすこし緩んできたのを見て安心した。








夏鈴side



帰り道。

ひかると帰りながら今日1日を振り返ってみる。

なんだか暖かい雰囲気の教室。

話しかけてくれる人もみんな
耳が聞こえないことを理解してくれている。

暖かい人たちだなぁ。

ここなら前よりたのしい日常がおくれるかも。

転校してきてよかった。

ひかるに感謝しなきゃ。



(ひかる。)

「…」

(ひかる?おーい。)

「…ん?あ、ごめん。」

(どうした?なんかあった?)

「ううん。大丈夫。」
「今日楽しかったなぁって思ってたの。」
「夏鈴がとなりにいてくれるとやっぱり違う。」
「ありがとう。」

(こちらこそ。ありがとう。)
(ひかるを信じてみてよかった。)
(でもなにかあったらちゃんと言うんだよ。
(約束。)

「うん。約束。」



その後会話はなく夕日が差し込む帰路をふたりで歩いた。


(じゃあ。また明日。)

「じゃあね。また明日。」