花王 ビオレUV(2019)の解析2概要編後半 | 化粧品犬が化粧品開発を模索するブログ

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大手会社の開発に勤務していましたが、好きな化粧品を好きなだけ追求するため円満退職。
ノラ犬となった化粧品犬が、面白いと思った情報を発信していくブログです。
化粧品コンサルタントとして仕事も受けています。
パームアミノ・ラボ合同会社 imori@palmamino-labo.jp

化粧品犬です。

 

8月下旬に酷い風邪を引いてから、体調がもどりません。

 

しかしこんな時に限って仕事も結構多く、なかなか辛い。

 

宣伝も兼ねて近況報告すると10/21にR&D支援センターさんというところでセミナーをやります。

 

スキンケア化粧品の処方設計基礎講座

https://www.rdsc.co.jp/seminar/191084

 

結構、値段が高いので、一般の人向きでは無く、化粧品をやっている企業向けセミナーなのですが。

興味ある方は受講してみてください。

と言っても、内容はこのブログとあまり変わらないかも(^_^;)

いまテキストを仕込み中です。値段分の物を用意しないとね。

 

しかしブログも途中だったので、これを先に仕上げようと言うことで、今日は頑張って更新(^_^)

 

花王 ビオレUV(2019)の解析2概要編後半になります。

関連エントリー

2019.8.28 花王 ビオレUV(2019)の解析1概要編前半を追加

2019.9.26 花王 ビオレUV(2019)の解析2概要編後半を追加

2019.11.15 花王 ビオレUV(2019)の解析3 アクアリッチウォータリーエッセンス(2019) 処方解析編を追加

2019.11.26花王 ビオレUV(2019)の解析4 アスリズム スキンプロテクトエッセンス(2019) 処方解析編を追加

2019.12.22花王 ビオレUV(2019)の解析5 アスリズム スキンプロテクトミルク(2019) 処方解析編を追加

 

この後編では、技術的な解説を掘り下げていきます。

 

まず、今回リニューアルされたアクアリッチシリーズ2種類(ジェルとエッセンス)、それに

新規追加されたアスリズムのうちの、プロテクトエッセンスに採用されている、「ミクロディフェンス手法」について解説します。

花王さんの広告では、「ミクロな塗りムラを防止する」と言っているやつです。

 

 

ニュースリリースま出てますので、それに沿って解説していきます。

 

ュースリリース

世界初 ミクロディフェンス処方 ビオレUV アクアリッチ」改良新発売

https://www.kao.com/jp/corporate/news/2018/20181219-001/

 

 

花王が2016年に、日やけ止めを使用している女性を調査したところ、「日やけ止めを塗っていたのに、日にやけたことがある」と回答した方は、9割以上という結果になりました。

その原因は、塗布時の使用量不足や塗りムラ。活動中の汗や水、擦れなどで日やけ止めが取れてしまうことなどが原因と考えられていました。さらに、最近の花王の解析技術研究*3 により、ウォーターベースの日やけ止め(当社従来品)を塗った肌の表面を独自の紫外線顕微鏡で観察すると、UV防御剤が肌に不均一に分散したムラづきの状態が生じることが認められ、塗布後にミクロレベルの隙間が発生している場合があることがわかりました。

特に、みずみずしい使用感が特長である当社のウォーターベースの日やけ止めでは、UV防御剤を含む油相部分は揮発しませんが、水相部分の多くは揮発すると、そこが隙間になりやすい傾向があります。また、水相部分に水溶性のUV防御剤をそのまま使用したとしても、そもそも水に溶けやすいという性質から、汗や水で落ちやすく紫外線防御効果を発揮しにくい場合があるという課題がありました。

 

ちょっと長い引用でしたが(^_^;)

 

上記を読むと、ミクロな塗りムラとは、目で見てわかるような塗りムラではなく、目ではわからないよう紫外線防御層の「微細な隙間」のようなものであることがわかります。

 

化粧品犬オリジナルの図で(^_^;)、説明すると、次のような感じ。

 

従来の、水ベースの日焼け止め(日焼け止めジェル、日焼け止めエッセンス)の場合、塗布後乾燥すると以下のようになります。

 

 

 

水ベースの日焼け止めの場合、水が蒸発すると、紫外線吸収剤の間に間隔が空いてしまい、これが光を通す隙間になってしまう。

これが問題だと花王さんは言うんですね。

 

これに対する、花王さんの対策は以下です。

 

 

そこで、水にも油にも親和性のある両親媒性成分で油溶性のUV防御剤を包みこんだ、サブミクロンサイズのカプセルを自社独自製法により開発いたしました。このカプセルを水相部分に分散させると、水相が揮発しても、UV防御剤を内包したカプセルは汗や水にも落ちにくいため、肌に留まることができます。花王独自のミクロディフェンス処方により、塗布後に水相が揮発することで生じていたミクロレベルの隙間の発生を防ぎます。

これにより、高い紫外線防御効果がありながら、水のように軽い使い心地を両立。塗り直しても重ねても、軽くてみずみずしい使用感はそのままに、一枚の皮膚のように薄く均一に塗布しやすいので、ミクロレベルの隙間まで塗りムラを防ぐことができ、毎日の快適な紫外線対策を可能にしました。

 

文章だとなかなかイメージつかみにくいですよね。

そこでまた、化粧品犬オリジナルイラスト(^_^;) で、解説。

 

花花王さんの対策はこうです。別途作っておいた、紫外線吸収剤含有する微細なカプセルを使うと言うものです。

 

花王の対策(= ミクロディフェンス処方)

 

乾燥後は肌の上にできる紫外線吸収剤の隙間を、この紫外線吸収剤含有カプセルが埋めると。

図で書くとうまいことやってるように思いますが、実際に図のようにコントロールするのは、非常に難しいと思います。相当手間をかけて開発したのでしょう。

 

またこの技術がアスリズムのプロテクトミルクに使われていない理由もわかります。

 

日焼け止めミルクはw/o乳化という、油ベースのものなので、同じように図解すると以下のようになります。、

 

 

つまり、油ベースでは、乾燥後に紫外線吸収材の間に隙間できない。

なので紫外線吸収剤含有カプセルは出る幕がないと言うわけです。

 

つまりこれは花王さんの主力商品である、水ベースの日焼け止め(エッセンス)の救済措置なんでしょう。

エッセンスが主力商品でない会社(例えば資生堂)はやる必要がない。

また想像ですが、エッセンスのよりも水分の多いジェルは「隙間」が多くなるので、この技術を強調する事は、ジェルに対する死刑宣告でもあるのだはにかと思います。

 

そのために上位シリーズであるアスリズムではジェルが省かれ、エッセンスとミルクの組み合わせになったんでしょう。

 

また紫外線吸収剤含有カプセルが何でできているか気になるところですが、これについては別のリリースが出ています。

 

ニュースリリース

紫外線防御剤内包カプセルを配合した世界初*1 の日やけ止め処方を開https://www.kao.com/jp/corporate/news/2018/20181029-001/

 

UV防御剤内包カプセルを配合した花王独自のミクロディフェンス処方を採用。ウォーターベースの日やけ止め処方において、水相で生じるミクロレベルの隙間の発生を防ぎます。まるで一枚の皮膚のように全身を覆う、薄く均一なUVブロック膜が、みずみずしい肌感触のよさはそのままに、無防備な素肌を負担感なく紫外線から守ることを実現しました。

1

**1 独自製法により、ベヘン酸グリセリル、ジステアリン酸ソルビタンを含む両親媒性成分(水にも油にもなじむ性質)からなる“UV防御剤内包カプセル”を配合した日やけ止め処方(先行技術調査及びMintel Japan社データベース内2018年7月当社調べ)。

 

 

と言うわけで、ベヘン酸グリセリル、ジステアリン酸ソルビタンと言う2種類の固形のノニオンに、紫外線吸収剤を加えて微粒子したもののようです。固形のノニオンがベースなので、水相にも馴染みやすく、分散できる微粒子となるのでしょう。

 

 

次はアスリズムに搭載されている、「タフブーストtech」について解説します。

これもリリースが出ていますので、まずそれを見ていきましょう

 

 

ニュースリリース

高温多湿環境で落ちにくさ確認。過酷な環境にも耐える。ビオレUV アスリズム」誕生

https://www.kao.com/jp/corporate/news/2018/20181219-002/

 

 

「ビオレUV」シリーズにおいて、高温多湿環境での落ちにくさとUVカット効果が最高クラスの日やけ止めです。

* *1 高温多湿環境(40℃、湿度75%)

* *2 ビオレUVシリーズ内における、UVカット効果(SPF50+ PA++++)および、高温多湿環境での塗膜の落ちにくさ

日本の夏は、気候変動に伴って、日差しは強く、さらに高温多湿な環境になると予測されています。このような高温多湿の過酷な環境下、多くの方々が「紫外線から素肌を守りたい」「絶対に肌をやきたくない」「日やけを気にすることなく快適に過ごしたい」と思っています。しかし、炎天下の屋外で、働く、運動する、レジャーを楽しむといった際には、長時間、紫外線にさらされ続けます。

そこで花王は、独自のタフブーストTechで薄く均一なUVブロック膜の耐久性を高めることに成功。高温多湿の過酷な環境下で、汗をかいても落ちにくく、耐久性にもすぐれた塗膜をつくる日やけ止めを実現しました。それは、素肌の上にまとう、まるで一枚の皮膚のように均一なUVブロック膜、“耐久アウタースキン”です。

今回発売する日やけ止めは、ウォーターベースでみずみずしく、なめらかな肌感触に変わるモイストタッチの『ビオレUV アスリズム スキンプロテクトエッセンス』と、オイルベースなのにサラッとした使い心地でべたつかず、するするの肌感触に変わるシルクタッチの『ビオレUV アスリズム スキンプロテクトミルク』の2タイプです。どちらも顔・からだ用で、スーパーウォータープルーフ*3 ですが、せっけんで落とせます。紫外線防御機能は最高基準のSPF50+・PA++++です。「ビオレUV アスリズム」は「Active Sun Life」を応援してまいります。

 

 

リリースを読んでも、タフブーストtechがウォータープルーフ性を向上させるものだ、という事は書いてあるのですが、具体的にどんな成分でそれを成し遂げるかという事は書いてありません。

しかし、アクアリッチウォーターリーエッセンスと、アスリズムのプロテクトエッセンスの処方を見比べると、耐水性を損ないそうな、親水性の成分が注意深く処方から外されている。この処方の細かいチューナップにより、ウォータープルーフ性能を上げることがタフブーストtechの正体なのかなと思います。プロテクトミルクも、同様に、他の日焼け止めミルクに比べて、細かくチューンアップされています。

 

これについては後々、各製品の個別の解析で書く予定です。

 

 

lこれで概要編は終わり。

 

各製品の個別の懐石に移ります。