メトキシケイ皮酸エチルヘキシル の安全性 番外編 光分解について | 化粧品犬が化粧品開発を模索するブログ

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化粧品犬です。

 

最も良く使われている紫外線吸収剤である、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル の安全性について書いてきました。

 

あと感作性について書けば終わりなのですが、、正直、飽きてきました(^_^;)

しかし、まだ面白いところを書いてない。

そこで最後に書こうと思っていた、その「面白いところ」をかいて、この話は一度終わりにします。

 

ちょっとハードル上げたかな(^_^;)

まあ、、、進めます。

 

 

メトキシケイ皮酸エチルヘキシルは光分解するので、安全性を調べるならば、分解した後の分解物についての調査も必要な気がします。

しかし調べてみると、最近の日焼け止め製品では、処方技術によって分解が抑制できるというデータが多いのです。

処方の妙、というヤツですね。

まあメーカーのBASF社が出しているデータなのですが(^_^;)

 

「紫外線吸収剤は分解する、だから塗り直さねばならない」ということはよく知られているのですが、分解しないとか、分解を抑制するとかって言うデータは、一般の人にはあまり知られていませんよね。

 

そこでこの番外編では、そのいくつかのデータを取りあげてきたいと思います。

 

 

「紫外線吸収剤は分解するだから塗り直さねばならない」ということは一昔前はよく言われていました

まず、それを裏付けるデータをみてみましょう。

次に挙げるのは、UVB吸収剤であるメトキシケイ皮酸エチルヘキシルに、以前はよく使われていたUVA吸収剤である、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタンを組み合わせた日焼け止めの場合です。

この場合、UVB吸収剤である領域と、UVA領域に、2つの吸収の山ができて、ふたこぶラクダのようになります。

最初はいい感じなのですが、しかし光照射していくと大変なことになってしまうのです。

以下にグラフを示します。

これは、サンテスターという機械で60分、120分と光照射をい行い、吸収剤が吸収する力(Abs)がどのくらい落ちるのか、測定した物です。

 

出典

http://www.cosfa.co.jp/products/pdf/uvinul_apg.pdf

 

メトキシケイヒ酸エチルヘキシル由来のUVB領域の吸収が、照射時間によって大きく低下しています。

またもっと酷いのが、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン由来のUVA領域の山で、60分の照射でも、かなりゼロに近くなり、120分ではほぼ吸収がなくなっています

これは塗り直さなければなりませんね(^_^;)

このUVA吸収剤のt-ブチルメトキシジベンゾイルメタンは、]光分解する上に光に当たるとアレルギー性が出る(光感作性)があるので有名なのですが、昔はこれしかUVA吸収剤は無かったんです。でしかた無くこれを使っており、塗り直しが常識でした。

 

しかし最近では、新しいUVA吸収剤が出ていて、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタンを使う必要は無くなっています。

(残念ながら今でも使っておる会社はあるのですが)

 

例えば、新しいUVA吸収剤である、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルは、光で分解されません

しかも、これとメトキシケイヒ酸エチルヘキシルを併用することで、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルの分解を抑える効果もあるのです。

これを示したのが、次のグラフです。

 

出典

http://www.cosfa.co.jp/products/pdf/uvinul_apg.pdf

 

メトキシケイヒ酸エチルヘキシルに由来する、UVB領域の吸収の山の低下が、さっきのグラフより少なくなっていますね。

低下はしているのですが、120分の光照射でも半分ぐらいは維持出来ています。

UVA吸収剤であるジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルによって、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルの分解が抑制されるのは不思議な感じもしますが、分解させてしまう光エネルギのー部を引き受けて、消去しているのでしょう。

 

UVA吸収剤であるジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル由来のUVA領域の吸収は、その山は光照射120分でもほとんどその吸収を維持しています。スゴいですね。

 

 

メトキシケイヒ酸エチルヘキシルと併用することでその分解を抑える効果は効果は、最近の他の吸収剤でも認められています。

UVA・UVB両波吸収剤の、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンにも同様か効果があります。

ちょっと測定形式や、処方系は違うのですが、以下のようになっています。

 

出典

http://www.cosfa.co.jp/products/pdf/tinosorb_s.pdf

 

 

このグラフは、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル配合の日焼け止めにUV照射すると42%分解してしまう処方が、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを併用することで、19%の分解に抑えられるというものです。

これもなかなかですね。

 

今回はメトキシケイヒ酸エチルヘキシルに併用する、新しい紫外線吸収剤として、2種類を例に挙げましたが、当然ながらこの2種類を同時にに併用して、3種の吸収剤を同時に使うことが出来ます。

すると、分解抑制効果の相乗効果も期待出来ますね。

 

実はこの3種の併用系は、最近の日焼け止めの基本配合となっているのです。

まあ、出来てないメーカーもありますが、」出来ているところの方が多いです。

例えば資生堂のアネッサは、この三種の基本を使い、更にオクトクリレンというUVB吸収剤と酸化亜鉛、更に少量の酸化チタンを加えています。これはメトキシケイヒ酸エチルヘキシルも分解しづらいでしょう(^_^;)

 

といって、塗り直しが不要かというと、そうでも無いですね。

紫外線に分解による塗り直しはかなり抑えられますが、擦れとか汗によって吸収剤入りの被膜が取れてしまうという事態は考えられます。今後は被膜をしっかり肌に残す効果が重視されてくるのでは無いか、と思います。

 

消費者にアピールはされていませんが、日焼け止めは着々と進歩しているのです。

 

というわけで、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルのはなしは一旦終了。

次は久しぶりにヘアケアでもやるかな(^_^;)