化粧品犬です。
また間を空けて済みません。
日焼け止めの処方作成と試作を頼まれて、それに追われていました(^_^;)
試作の量が多くて、結局一人で16バッチ試作するはめになり(しかもチューブ詰め400本)、半月ほどかけて、ほとんど修行僧のようににやっていました(^_^;)
いろいろ面白いデータも取れたのですが、それは後でやるとして。
とりあえず、気を取り直しまして、紫外線吸収剤メトキシケイ皮酸エチルヘキシル の安全性について書きます。
今回は、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル の安全性を掘り下げてみる企画の2回目。
眼刺激性を取りあげてきます。
前回の皮膚刺激性でも書きましたが、いつも頼りになるサイト、化粧品成分オンラインのデータを見てみましょう。
メトキシケイヒ酸エチルヘキシルとは…成分効果と毒性を解説(化粧品成分オンライン)
https://cosmetic-ingredients.org/uv-protect/メトキシケイヒ酸エチルヘキシルの効果と毒性/
1.皮膚刺激性は、draize法に基づく皮膚刺激性(ドレイズ試験)の結果、刺激なし。
2.眼刺激性は、draize法に基づく眼刺激性(ドレイズ試験)の結果、刺激なし。
3.皮膚感作性(アレルギー性)については、Maximization法皮膚感作性試験(マキシマイゼーション試験)の結果、皮膚感作性はなし
となっています。
1の皮膚刺激については前エントリで取りあげたので、今回は眼刺激について深く取りあげます。
draize法に基づく眼刺激性試験というのは、動物を使った実験です。
具体的にはウサギの目に、サンプルを点眼するのです。
これだけでもなかなか残酷なのですが、試験後のウサギは、やはり殺処分なので二重の意味でかわいそうな感じです。
しかし目の構造は皮膚より複雑なため、得られる情報は多く、目の構造ごとに、どこがそのサンプルに侵されやすいかという所まで評価できます。
ウサギさんにはかわいそうですが、この試験をを人間の眼でやるのは、皮膚の試験以上に、不可能です。人間の目は2個しか無いし替えも無いし。人権的にも全く無理。
これも皮膚のドレイズ試験と同様に、ウサギさんの犠牲によって、人類の幸福に大きく寄与してくれた試験、だと思います。
具体的には点眼後、角膜が侵されていると80点、虹彩が侵されていると10点、結膜は20点という具合にスコア化されていき、最後に合計されます。だいたい24、48、72時間後に観察していき、」平均を取ります
判断基準は多少変わる事はあるのですが大体下記の通りです。
非刺激性: 0点-0.9点
弱い刺激性:1点-25点
中程度の刺激性:26点-56点
強い刺激性:57点-84点
非常に強い刺激性:85点-110点
皮膚のn場合は、2点で強い刺激物だったのですが、眼刺激試験の場合は、強い刺激性は57点-84点であり、上限が高くなっているのが特徴です。つまり皮膚の試験よりかなり敏感な試験になっています。
皮膚の時と同様に、油や乳化剤などのスキンケア素材やスキンケア化粧品を評価するときは、原液のまま使用され、洗浄剤原料や洗い流す化粧品の時は5%程度に薄める事が多いようです。
これは、洗浄剤原料や洗い流す化粧品は、原液のままでは刺激が強すぎるので、結果が分かりにくくなることを避けるためと、動物に無用の苦痛を与えないようにするためです。
さてこのドレイズ試験のスコアですが、主に企業で行われていることもあり、なかなか一般の眼には触れにくいです。
しかしその一部は、ネット上にアップされている文献で、確かめる事が出来ます。
例えば以下の文献です。
マイルド系洗浄剤におけるアシルグルタミン酸塩の刺激緩和効果
J. Soc. Cosmet. Chem. Jpn.27(3) 498-415 (1993)
金成美奈, 川崎由明, 坂本一民 味の素株式会社 中央研究所
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sccj1979/27/3/27_3_498/_pdf
この論文はシャンプーに良く使われているアミノ酸系洗浄剤であるアシルグルタミン酸を使った文献です。
特に各種の洗浄剤のドレイズ試験の結果と、その代替試験法(動物の代わりに細胞使った試験)との相加を評価している論文なのですが、当然のことながら、ドレイズ試験の結果が出てきます。
(ただし24時間後のスコアのみ。48、72時間後のスコアは出てきません)
ドレイズ試験結果はグラフになっているのですが、そこからドレイズスコアを読み取るとが出来ます。
Fig9(Fig12)がドレイズ眼刺激試験の結果で、Fig8(Fig13)が皮膚刺激の物ですね。
グラフからアミノ酸系のラウロイルグルタミン酸Naについては、
・ラウロイルグルタミン酸Na(グラフ中LS-11)の眼刺激スコア=約2.5。皮膚刺激スコア=約1.25。
同グラフ中でシャンプーによく使われるラウレス硫酸Naについても分かります。
・ラウレス硫酸Na(グラフ中でSLES)の眼刺激スコア=約17.5、皮膚刺激スコア=約3.5で。
スコアにかなり差がありますね。
ラウロイルグルタミン酸Naは、ラウレス硫酸Naよりも、かなり低刺激である事が分かります。
ただこれはラウロイルグルタミン酸Naが低刺激すぎるだけで、ラウレス硫酸Naが他のシャンプー原料に較べ著しく劣っているわけではありません。
このグラフからは、資生堂さんが得意としるAMT(アシルメチルタウリン塩)や、花王さんが昔使っていたMAP(モノアルキルリン酸塩)、ダブ石けんに使われているラウロイルイセチオン酸などのデータも掲載されています。
興味のある方は比較するのも良いでしょう。
面白い事が多いわりに、隠されがちなドレイズ試験のデータですが。
今回で一旦終わりです。
メトキシケイ皮酸エチルヘキシル の安全性についての話は続きます。