資生堂アネッサ パーフェクトUV スキンケアジェルの解析 概要編 | 化粧品犬が化粧品開発を模索するブログ

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パームアミノ・ラボ合同会社 imori@palmamino-labo.jp

化粧品犬です。

 

長く休んでしまって済みません。

夏休みを満喫していました・・・でなく、忙しくて手が回りませんでした(^_^;)

 

まだ忙しいのですが、あまり休むのもアレなので、頑張って更新してみます。

 

今回は資生堂の2018年度の新製品である、アネッサ パーフェクトUV スキンケアジェルです。

2018/2/21発売の製品ですね。

 

いわゆる金のアネッサというと資生堂の日焼け止め「ミルク」を指すのですが、本製品は簡単に言えばそのジェル版です

 

ただ、金のアネッサはW/O製剤と言って油の中に水滴が浮いた構造なのに対し、この製品はO/W製剤と言って水の中に油滴が浮いている構造なので、どちらかというとビオレの美容液やジェルと同じような構造です。

なので、金のアネッサのような超絶ウォータープルーフ性は期待できません。

その代わり金のアネッサより量が多く値段が安い。おまけに使用感も良い(好みにもよりますが)

 

O/W製剤は水が多くなるので、コストが安くなるのです。

といっても本製品は、ビオレUV美容液ほどは安くはありませんが(^_^;)

そしてビオレUV美容液と同様に、O/W製剤は、軽くて伸びも良い処方が作りやすいので、使用感も良くしやすいのです。

 

また、金のアネッサは店頭でよく売り切れているので、同じアネッサブランドと言うことで、ついこの製品を買ってしまう(^_^;)

資生堂さんは本当に商売がうまい(^_^;)

そんな製品です。

 

ただ一点だけ、この製品には、どうにもお勧めしかねる原料が配合されています。

今回はそんなことを書いていくエントリーになります。

 

その点に目をつむれるなら、買って損の無い製品です。特に、金のアネッサ程効果が高くなくて良いけど、ビオレでは心許ないという方には、使用感も良いし、」なかなかお勧めですね。

 

ではもう少し深く見て行きましょう。

 

外観

こんな感じです。

 

金のアネッサに似に手デザインラインですが、こちらは高級感のあるチューブです。

値段は2000円/90gぐらいなので、金のアネッサより500円ぐらい安く、それいでいて量は2倍近い。

 

使って見るとウォータープルーフ性は金のアネッサには及ばないぐらい(使用実感で)ですが、アクアブースター技術搭載です。

ただし今年より金のアネッサに搭載された最新の「アクアブースターEX」ではなく、ただのアクアブースターで、これは一昨年の金のアネッサがら使われているものです。

このちょっと古いアクアブースター技術は、実は去年販売された旧製品のジェルから継続して使われています。

 

概要

このアネッサのジェルは、完全な新製品では無く、旧製品の位置付けを少しだけ変えた上での、リニューアルです。

 

旧製品は2017年に発売されており、その名称は「パーフェクトフェイシャルUVアクアブースター」で、顔用を強調した製品だったのですが、金のアネッサに合わせて「フェイシャル」と言う言葉が取れて、単なるスキンケアジェルになったようです。

 

しかし2018年度より銀のアナッサが商品ラインから消えたため、この製品の重要度が増したらしく、ちゃんとニュースリリースにも取りあげられています。

ニュースリリース

 

関連する部分を抜粋しコメントを入れていきます。

 

(1)アクアブースター(EX)技術

 

今回取りあげているジェルではExのない、従来通りのアクアブースター技術が採用されています。

アクアブースター技術は何度も書いてますが、水道水や海のCaイオンと、製品に配合されているステアリン酸+アクアインプール(PEG/PPG-14/7ジメチルエーテルのこと)が反応して、水がかかると膜が強くなる・・と言う技術です。

 

(2)50%スキンケア成分配合で、未来の美肌を守る「ビューティーサンケア」

(〜前略)日焼け止め効果の高いものは、肌への負担があると考えている方が多いことが分かりました。アネッサの日焼け止めには軽やかな使い心地で美容成分(アセチルヒアルロン酸※2、マリンコラーゲン、アロエエキス、バラ果実エキス・DG、緑茶エキス・桜葉エキス、トルメンチラ・ジグリセリン)を厳選配合し、うるおいを与え、乾燥ダメージもケアします。今はもちろん未来の美肌を守ります。

 

ここは、同時発売された金のアネッサ(2018)と共通です。

旧製品にも美容成分は結構配合されていたので、その入れ替えに過ぎない感が出てしまうのも同様ですね(^_^;)

 

 

(3)新乳化「コアコロナ」技術 

さまざまな種類の油と水を自由な配合比率で自在に混ぜることができる全く新しい乳化技術「コアコロナ乳化」を開発。両立が困難だった「みずみずしい塗り心地でありながら水に強いサンスクリーン」が実現できました。

 

問題は、この項目です。

リリースの文章を呼んでものよくわからないのですが、資生堂のHPの中に説明ページが設けられています。

 

油分・水分を自在に混ぜる新乳化技術「コアコロナ乳化」を開発

「界面活性剤を使うことなく、さまざまな種類の油と水を自由な配合比率で自在に混ぜることができる全く新しい乳化技術「コアコロナ乳化」を開発しました(図)。(中略)油になじみやすい骨格(コア)部分と水になじみやすい周辺(コロナ)部分をあわせ持つ「コアコロナ粒子」というポリマー微粒子を設計、開発しました。これは従来の界面活性剤に比べ100倍以上となる直径をもつ粒子状の物質です。コアコロナ粒子は、さまざまな種類の油と水を自由な配合比率で自在に乳化することができ、従来の界面活性剤をはるかに超える高い乳化性能を持っています。」

 

また特許も出されています。

コロナ-コア型ミクロゲル乳化剤及び水中油型乳化組成物

 

これは、コアコロナ型の微粒子で、乳化剤のの代わりをさせるという技術です。

なかなか面白い試みなのですが、意地悪な言い方をすれば、技術的には面白いものの、既存の乳化剤の代替なので、出来上がる日焼け止めが劇的に変わるわけでは無いとも言えます。

 

またF具体的にどの成分がコアコロナ型の微粒子なのかというと、それが分かるようには、書いてありません。

そこで、上記の特許を読むと、アクリル酸系のポリマーを核に、そこから親水系のポリマーがもじゃもじゃ生えたような構造らしい。

それらしものを裏面表示から探してみると、確かにそれに相当するものがある。

「(アクリレーツ/メタクリル酸メトキシPEG-90)クロスポリマー」

と言う成分です。アクリル酸系のポリマーを核に、PEG(ポリエチレングリコール)のひげが生えているイメージです。

しかしですね、、、実はこの成分、2017年に発売された、旧製品から配合されてます(^_^;)

これはあれです。

資生堂さんお得意の、「従来からあった技術を、後になってセールスポイントとしてアピールする」といいう手法ですね(^_^;)

アクアブースター技術もこのやり方だったのですが、味をしめてしまったのかな(^_^;)

技術自体は否定はしないのですが、売り方がちょっとあざといなあ。

 

ここまでが、製品概要として押さえるところです。

 

重要な問題はここからです。

化粧品犬がこの製品はお勧めでき無い、と思う点について書きます。

 

以前に日焼け止めについて、こんなエントリーを書いたことがあります。

ニベア花王 サンプロテクトウォータージェル SPF50の解析

「紫外線吸収剤は肌に悪い」という話の原因となった古い紫外線吸収剤は、すでに使用されなくなっていると言うことです。

古い紫外線吸収剤とは、例えば、

・パラジメチルアミノ安息香酸2エチルヘキシル  (UVB吸収剤)

・オキシベンゾン  (UVB吸収剤)

・サリチル酸2エチルヘキシル  (UVB吸収剤)

・4-tert-ブチル-4-メトキシ-ベンゾイルメタン  (UVA吸収剤)

とかですね。いずれも最近は配合されることが減っています。

 

 

というわけで、過去に肌トラブルの原因となった古い紫外線吸収剤の例を4種挙げたのですが。

今回のアネッサのジェルは、このうちのオキシベンゾンが、何故か今になって使用されているのです。

(正確には、医薬部外品の表示名がオキシベンゾン、化粧品の表示名はオキシベンゾン-3です)

 

じつは、別に避けていたわけではないのですが、オキシベンゾンが配合された製品を取りあげるのは、ブログを作ってから初めてです。

正直実際に配合されてるのは見た事が無く、目を疑いました。

 

旧製品では使われてません(^_^;)なぜ、いまになって?

本当に理解できないし、とても残念です。

 

資生堂さんは消費者をなめすぎだ、というのは分かりましたが。

またなんとなく製品レビューにも表れてて、@cosmeのレビューに「肌に合わなくて痒くなった」という怖い意見も散見されます。

評判はすごく良いんですがね・・・。

@cosme アネッサ パーフェクトUV スキンケアジェル

 

 

 

オキシベンゾンってそんなの悪いの?

と思われる方向けに、いくつか例を挙げていきます。

 

まずこれ。厚労省が出しているSDS(安全性データシート)です。

安全データシート(2‐ヒドロキシ‐4‐メトキシフェニル)(フェニル)メタノン

 

これを見ると、毒性としては、急性毒性、眼刺激、皮膚刺激とも高い物ではない(皮膚刺激はややあるというデータもあるが、顕著に高くはない)。

問題は皮膚感作性(アレルギー性のこと)の項目です。以下の記載があります。

 

本物質は日焼け止め剤として使用され、アレルギー反応が報告され(Contact Dermatitis (4th, 2006))、Contact Dermatitis (Frosch) (4th, 2006)に感作性物質として掲載されている。なお、ヒトの事例として、日光による湿疹様発疹の再発に悩まされていた42歳女性が、光パッチテストにより本物質に対する光感作性を有することが明らかにされた(NTP TOX21 (1992)、HSDB (2007))こと、また、光感作性の病歴のある62歳男性が本物質を含む遮光剤使用後、接触性皮膚炎を発症し、パッチテストで陽性反応を示した(HSDB (2007))。(GHS分類:区分1)

 

アレルギー反応が報告されていますね。それだけでもアウトなのですが、さらに光に当たるとアレルギー反応を引き起こす、光感作性も報告されている(^_^;)

 

紫外線吸収剤として致命的です(^_^;)

 

あと、生殖細胞変異原性については、日本では試験管で行えるAmes試験をやり、それがクリアできない場合は動物を使った小核試験を行いなさい、という指導なので、これはOKです。

 

生殖毒性は、化粧品や医薬部外品では指導はないのですが、書いてある動物実験の結果と説明として書いてある以下の文章が気持ち悪い(^_^;)

いかに引用します。

本物質は全身毒性を引き起こすが受胎および生殖への影響は軽微(minimal)である(NTP RACB88076 (1990))

生殖毒性は軽微でも問題だし、全身毒性を引き起こす

 

このSDSからは、アウトな成分としか思えません

 

そのほか、この成分はダメだと言う報文は多いんですよ。

環境ホルモンよ言う疑いももありますが、環境ホルモンの定義も曖昧なのでその辺は省きます。

それらをまとめたサイトも結構多い。

 

良いまとめをしてくれているサイトとして、以下を紹介しておきます。

オキシベンゾン-3とは…成分効果と毒性を解説

 

また、ちょっとヒステリックなのですが、ハワイではサンゴに害があると言うことで、2021年から使用こいんしになるようです(^_^;)

 

ハワイ、日焼け止め禁止 サンゴ礁保護で2021年から

 

ただこれ、オキシベンゾンと一緒に  オクチノキサート(汎用されている紫外線吸収剤のメトキシケイヒ酸エチルヘキシルのこと)まで規制しようとしているんですよね。それは無理だろ(^_^;)

 

そもそもメトキシケイヒ酸エチルヘキシルは顕著な毒性はない。

メトキシケイヒ酸エチルヘキシルの毒性については、今回のテーマではないので省きますが、興味のある方は、化粧品成分オンラインを見て頂くと良いかと。

頼りになるサイトです。

 

化粧品成分オンライン-メトキシケイヒ酸エチルヘキシルとは…成分効果と毒性を解説

 

 

@cosme評価

評価はとても高いです。

以下の通り。

クチコミ 201件、注目人数 504人。評価点は5.9点で、日焼け止め(ボディ用)ランキング5位。

でもオキシベンゾンが入っているから私は買いません(^_^;)

 

CM

ジェル単独の物は無いですね。

金のアネッサのCMの最後にちょろっと出てきます。

https://www.youtube.com/watch?v=qG7LYNJ4ERM

 

使用感など

日中つけていると、金のアネッサは夕方でも肌に残って、落ちきっていないけど、このジェルは結構落ちてしまっているのを体感するので、ウォータープルーフ性とかは、やや劣るのだなと思います。

でも使用感は良いし、安いから良いかなーと思っていたのですが、、

なんとオキシベンゾン配合とはね!

意外で、残念です。

来年にはこの成分は、ぜひ外して欲しい。

 

次回は、成分を解説していく処方解析編です。