ライオン ハダカラ ボディソープ 保湿+サラサラ仕上がりタイプの解析2 処方解析編 | 化粧品犬が化粧品開発を模索するブログ

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化粧品犬です。

 

2017/03/29に発売された、ライオン の新製品であるハダカラ ボディソープ保湿+サラサラ仕上がりタイプの解析をやっています。

今回は第2回目で処方解析編です。

前編となる製品概要編はこちら。

 

ハダカラ ボディソープ自体は2016/9/28発売の製品なので、1年たないうちのライン追加という事になりますね。

この最初のハダカラの解析エントリーはこちらです。

ライオン ハダカラ ボディソープ フローラルブーケの香りの解析1 製品概要編2016.11.13

ライオン ハダカラ ボディソープ フローラルブーケの香りの解析2 処方解析編2016.11.15

 

上記エントリーでも散々書きましたが、

このシリーズは、そもそもの製品コンセプトである、

「カチオン化ポリマーと防腐剤と乳化剤を、あえて肌に残して保湿する」

と言うところが、もう、おかしいです

確かに防腐剤は水に溶けにくい親油性のものが多いのですが、その防腐剤で保湿するという発想が変です。

防腐剤はどんなに安全性が高い物であっても、多かれ少なかれ刺激はある成分です。

それで保湿するなんて・・・頭がイカレている発想です。

こんな事言いだしたのはライオンだけですよ。

本製品に使われているカチオン化ポリマーや防腐剤のフェノキシエタノールは、ライオンが原料として販売しているからかな・・・と化粧品犬は疑っています。

(カチオン化ポリマーをボディーソープに入れるのは、結構やっているメーカーもありますが)

 

案の定、最初に出たハダカラ ボディソープ フローラルブーケの香りは、どうも刺激のある製品でした。

これも過去のエントリーで色々書きましたが。

 

で、今回の製品。

製品コンセプトは、保湿+サラサラ仕上がりタイプと言う性格が付与されているものの、基本的に変わってないですね。

おそるおそる使ってみると・・・あれ、痛くない・・・

今回の製品では、意外に(?)刺激感は改善されていたのです。

ライオンさんの耳にも、「痛い」「痒い」という情報は届いていたのでしょう。

しかし、こんなに短期間で改善できるなら最初から対応しておけ「ばいいのに

 

あと残る問題としては、旧製品というか、今回発売した以外のハダカラボディソープは、痛い処方のまま改良されていないという事です。

もしかしたら、今回の製品と同時に直したかなと思いましたが、直っていませんでした(2017.4.25確認)。

問題点と修正方法も分かっているはずなのに放置な訳で・・在庫とか色々あるのでしょうが、ライオンさんは、今一つ信用できないと言わざるを得ません。

 

さて、保湿+サラサラ仕上がりタイプと言う性格が付与されて、安全性が改善された今回の製品の解析に入ります。

 

いつもの様に、裏面の処方を整理してみます。

今回は安全性が改善されていない、ハダカラ ボディソープ フローラルブーケの香りと比較していきます。

 

いつものように原料の機能毎にパート分けし、パート内の表記順番は裏面のまま変えずに記入しています。また共通の成分についてはできる限り近づけて書いていますが、場合によって近くに書けない場合もあります。

 

 

こんな感じになりました。

 

2品とも、良く似ていますね。

ちょっとした違いで、痛いかどうか決まるわけです。

また今回新たに配合された、「サラサラリキッド」の正体も解明していきます。

まあ、一目瞭然ですが(^_^;)

 

 

では洗浄剤のパートから見ていきましょう。

洗浄剤は、2品とも同じです。

脂肪酸(ミリスチン酸、ラウリン酸、パルミチン酸)に、両性洗浄剤のラウリルベタイン)と言う、典型的なボディソープの構成です。脂肪酸だけだと析出しやすくなるので、両性洗浄剤で割っています。

刺激の低いミリスチン酸が、刺激の高いラウリン酸より多く配合されてている点が、この製品の良心ですね。

ラウリン酸は刺激が高いのですが、泡立ちを良くする為に仕方なく配合されている製品が多いです。

ラウリルベタインも両性洗浄剤の中では、泡立ちは良いが比較的刺激が強いほうなので、やや気になるところです。

 

次はコンディショニング剤、オイル類のパートです。

ここも2品とも同じです。

石油系オイルのためか全く宣伝はされてないのですが、油脂としてミネラルオイルが配合されています。

ミネラルオイルは鉱物油なので、個人的にはあまり好きでは無いのですが、価格が安い原料なので、低価格製品では我慢しなければならないポイントですね。フェノキシエタノールよりよっぽど肌に残りやすいと思うのですが、ミネラルオイルはライオンが販売している原料では無いせいか(^_^;)、コンセプトのところで言及されていません。

次のポリクオタニウム-6、ポリクオタニウム-7はコンセプトでも肌に残しました!って言ってる原料です。

これは、ライオン自身が外販している原料でもあります。だからこういう宣伝になったのでしょう。

実際これらは、ヘアシャンプーやボディソープや洗顔などに広く使われている原料でもあります(何社か同一成分を販売していますが)。

 

次は粉体のパート。

ここは、サラサラ仕上がりタイプのみ、ポリスチレンが配合されています。

ポリスチレンは、プラスチック製の微粒子でたまに日焼け止めに「さらさらパウダー」などと称して配合されているものです。

名前の通りサラサラします。

製品説明には全く書いていないのですが、このポリスチレンが、サラサラ仕上がりタイプの演出の一つでしょう。

 

 

次は防腐剤のパート。

ここは、2品で違いますね。

痛いか痛くないかを、分けるポイントになっています。

と言って難しいことでは無く、今回のサラサラ仕上がりタイプでは、フェノキシエタノールの一部を安息香酸Naに置き換えているのです。

フェノキシエタノールは防腐剤にしては低刺激のほうではありますが、それなりに刺激があります。防腐剤はみんな刺激があるのです。

これを防腐力落とさない範囲で安息香酸Naに置き換えたのでしょう。

それだけ?と不思議に思われる方もいるかもしれませんが、刺激には「しきい値」というものがあるので、ある程度より少ないと、急に痛みを感じなくなることが多いのです。

フェノキシエタノールの一部を安息香酸Naに置き換えることで、たとえ防腐剤の総量は変わっていなくても、刺激を低減させる改良は充分可能なわけです。

(防腐剤総量も、減ったかもしれませんが)

むしろ、最初からやって置くべき検討だったと言わざるをえません。

 

次は保湿剤のパート。

ここも、2品で1カ所だけ違いますね。

それはサラサラ仕上がりタイプにのみ、PEG-12ジメチコンが配合されている点です。

このPEG-12ジメチコンが製品説明にある「サラサラリキッド」だと思います。

PEG-12ジメチコンは、シリコンに親水性の基を持たせた、シリコン系の乳化剤でサンケア製品に使われたり、シャンプーにサラサラ感を付与するために配合される事も多い原料です。

しかし、シリコン系の乳化剤を配合しておいて、シリコンである事を伏せながら「サラサラリキッド配合」って宣伝するなんて、普通の神経ではなかなか出来ません。残念ながらライオンさんは、何かが欠けている、と思います。

 

あと、いくつか気になる成分があるので上げておきます。

一つ目が増粘剤のアクリル酸アルキルコポリマーです。

ライオンさんはアクリル酸アルキルコポリマーを販売しているメーカーでもあるのですが、今回は中和塩や添加剤(防腐成分)等が微妙に売品と異なっています。でも内製品ぽいですね。

http://www.iwasedatabase.jp/presc_detail.php?id=PS01391&t=1479145217

社内で一貫製造と言うことで特殊な仕様になっているのかもしれません。

 

二つ目が、カチオン化ポリマーとフェノキシエタノールを肌に残すキー成分の一つとして宣伝されているイソステアリン酸PEG-3グリセリルですね。油と親和性の高い乳化剤なので水溶性は低く、ぬるぬるしやすい成分です。この性質も利用しているのかな。

 

三つ目がエタノールアミンですね。

おそらく、脂肪酸を水酸化Kだけで中和すると、析出しやすくなってしますので、水酸化Kとエタノールアミンを併用して中和してあるのだと思います。

エタノールアミンはよく安全性が取りざたされる成分なので、調べてみました。

詳しくは下記の原料毎のコメントパートで書きましたが、弱い皮膚感作あり、生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑いあり・・・ってやばいことが書いてあります。

しかし、中和剤は中和すると大きく安全性が変わるので、断言はしにくいのです。

その場合は、例えばラウリン酸を中和するのであれば、「ラウリン酸エタノールアミン塩」という成分の安全性を評価した上で、「ラウリン酸エタノールアミン塩」を配合するべきなのです。

たんにエタノールアミンを配合すると、エタノールアミンはダメだという結論しか出ません

またしても、ライオンさんの開発に疑問を感じる点です。

サラサラ仕上がりタイプでも、ここは全く変わっていませんでした。

これを直すには、もっと声を集めないと駄目なんでしょう。

 

 

全体的に見ると、刺激が改善されたのは良いけど、恥ずかしげも無く「サラサラリキッド配合」とか、既存製品は改善せず放置とか、直す気が無さそうなエタノールアミン配合問題とか、まだまだな点も多いです。

しかし今回素早く改善したように、技術力はあるメーカーだと思います。

なので、もう少し、ユーザーの方を向いていただけるように、お願いしたいですね。

 

 

あとは、パート毎の成分についてコメントを書いていきます。

 

洗浄剤

・ミリスチン酸:ココナツオイルやパーム核油等から得られる脂肪酸の一種で、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムで中和されることで、ミリスチン酸Naやミリスチン酸Kとなる。中和した場合、泡立ちは脂肪酸の中では良い方でありコクのある泡が得られるが、泡立ちの速さや泡量自体はラウリン酸よりは劣る。しかしラウリン酸のような強い肌刺激性は無い。またラウリン鎖ノン較べて析出しやすいため、汎用性は低く、用途は洗浄剤に限定されやすい。

・ラウリン酸:ココナツオイルやパーム核油等から得られる脂肪酸の一種で、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムで中和されることで、泡立ちが良いラウリン酸Naやラウリン酸Kとなる(ただし、やや刺激がある)。この製品のようにシャンプー全体のpHが弱酸性の場合には、完全には中和されず、ある程度「油」としての機能をもち、エモリエント効果や泡立ちにコクを持たせる効果を発揮する事が多い。このような使われ方を過脂剤とも言う。

・パルミチン酸:ココナツオイルやパーム核油等から得られる脂肪酸の一種で、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムで中和されることでパルミチン酸酸Naやパルミチン酸Kとなる。中和した場合、泡は立つが泡立ちはミリスチン酸やラウリン酸に較べてかなり低く、コクのある泡となる。刺激性は低い。

・ラウリルベタイン:ヘアシャンプーによく使われるコカミドプロピルベタインを単純化したような構造の洗浄剤。コカミドプロピルベタインに比べて、刺激性は若干高いが、泡立ちは若干良好。

 

コンディショニング剤、オイル類

・ミネラルオイル:石油を精製した作られた、比較的低粘度の油。感触は重めで、ややべったりしている。安定性が高く(酸化されにくい)、様々な油と親和性が高いため、クレンジング製品からメイクに至るまで、化粧品に広く使われている。また値段も安いため、特に低価格な製品ではよく使われる。かつて精製度が低かった頃は顔にシミ作るなど様々な問題を起こしたことが有り、今でも敬遠する人も多い。現在では精製度が上がりほぼ問題ないと思われるが、精製度などは化粧品の裏面表示からは判断できないので、メーカーを信用するとか、しないとかいうレベルの話になる。

・ポリクオタニウム-6:ポリクオタニウム-7の原型となるカチオン化ポリマーで、このポリマーのカチオン部分を、無荷電ポリマーで適度に間引いたものがポリクオタニウム-7となる。そのためポリクオタニウム-7yよりカチオン性が高く吸着力にも優れるが、カチオン性が強すぎるために他成分と結合して沈殿を生じやすいという欠点もある。

・ポリクオタニウム-7:シャンプーによく使われている、カチオン化ポリマーと言われる成分の一種。特に、毛髪上に柔らかい皮膜を作る事と、シャンプーの刺激を弱める事、それにシャンプーの泡立ちを高めるという特徴がある。ボディソープや洗顔料に使われる事も多い。

 

粉体

・ポリスチレン:プラスチック製の微粒子で、透明感が高く分散性に優れている。

 

防腐剤

・フェノキシエタノール:比較的低刺激な防腐剤。ナチュラル系の化粧品に使用される事も多い。

当ブログでは、安全性については以下のエントリーで詳しく書いてます。

プロピルパラベンの安全性についての文献を紹介

・安息香酸Na:広く使われている、比較的低刺激な防腐剤。食品にも使われる。

 

保湿剤、香料類等

・水:精製水のこと。化粧品では通常、イオン交換水が用いられている事が多い。

・PG;多価アルコールとも呼ばれる、代表的な保湿成分。グリセリンと似た性質であるが、ややさっぱり感がある。油を可溶化する力が強く、皮膚への浸透性や刺激性を疑う声もある。国内では、昔の薬事法で表示指定成分として扱われていたこともあり、むしろ海外で使用されていることが多い(ただし、国内で食品添加物として許可されている成分でもある)。弱い抗菌性も有している。

・水酸化K:pH調整剤。製剤中でミリスチン酸やラウリン酸を中和して、ミリスチン酸Kやラウリン酸Kにしていると思われる。

・アクリル酸アルキルコポリマー;アクリル酸基を持つ増粘剤。主にボディソープのようなアルカリ性の製品で効果を発揮する。

・PEG-12ジメチコン:シリコン構造を持つ典型的な乳化剤。シリコン油と馴染みは良いため、シリコン油の多い製剤で多用される。サンケア製品に使われる事が多いが、親水性が高いため、シャンプーにサラサラ感を付与するために配合される事も多い。

・エタノールアミン;pH調整剤で、水酸化Naなどのアルカリ剤の代替として用いられる。化粧品に使われる事は少なく、主にカラーやパーマに用いられる事が多い。

安全性については、アルカリ剤のため判断は難しい面がある。例えば中和前の水酸化Naは刺激物だったりする事から、皮膚刺激性や目刺激性でこの元老を判断しにくい。しかし、厚生労働省の安全性資料

エタノールアミン(2-アミノエタノール)のSDS

では、限りなくグレーである。特に生殖細胞変異原性(遺伝子に対する毒性)が無いのは良いが、アレルギー性については、弱い皮膚感作があり、生殖毒性でも生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑いあり、では化粧品原料として使用禁止に指定されてはいないが、自主的に使用を控えるべき成分であると考える。

・セテス-20:親水性の乳化剤。分散効果に優れ広く使われる。

・イソステアリン酸PEG-3グリセリル;油の可溶化力に優れた、親油性の乳化剤。クレンジングオイルなどに使われる事が多い。

・EDTA:キレート剤。製剤のpHを維持し、酸化や着色を防ぐなどの効果がある。

・黄4:黄色4号とも呼ばれ色素で、食品添加物でもある(別名タートラジン)。タール色素の一つで、アレルギーや喘息の原因であるとされることとあるが、明確なデータは無い。安全成否ついては、食品での使用の可否が議論の中心で、化粧品での使用はあまり議論されることはないが、使う必要が無いならば、あえて使わない方が良い成分だ・・・と化粧品犬は考えます。