初変身の尊さ、あるいは、『HUGっと!プリキュア』を語るジェンダー論の目線。 | ますたーの研究室

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英詩を研究していた大学院生でしたが、社会人になりました。文学・哲学・思想をバックグラウンドに、ポップカルチャーや文学作品などを自由に批評・研究するブログです。

『はぐプリ』どんどん面白くなってきている

2018年6月17日、第20話「キュアマシェリとキュアアムール!フレフレ!愛のプリキュア!」が放送され、ついにえみるとルールーが初変身を遂げました。
 

『HUGっと!プリキュア』第20話。(C)ABC-A・東映アニメーション

 

二人変身バンク、「尊い」以外の語彙を失いました。

 

当方、プリキュアクラスタになってから6年目になりますが、マシェリ&アムールの変身バンクは最高傑作に推したいほど印象的かつ大好きな変身バンクになりました。相変わらず板岡さんの仕事は素晴らしすぎます。

 

 

それにつけても思うのは、プリキュアはこの第2クールが本当に面白いということです。

 

敵側からの光堕ちはあるのか。追加戦士は来るのか。どんな変身が見られるのか。

 

夏にかけて一つの盛り上がりを見せるこの時期の展開は、まさに一年間かけてプリキュアを追いかける醍醐味でしょう。思えば昨年のこの時期もシエルの物語にだいぶ夢中になっていました。

 

私は『Go!プリ』クラスタのため、トワイライト編の素晴らしさは言わずもがなですが、やはり敵側から光堕ちして追加戦士になる展開はプリキュアが創り出した様式美だと言えるでしょう。今作はそれに加え、2人同時追加という初の試みを行い、見事成功させることができました。プリキュア15周年に新たな歴史を加えた今作の第20話は、のちのプリキュア史を語る時に外せない話数になることでしょう。

 

いやあ、まじでえみルー尊いんだよなあ……。

テレビCM問題について

さて、先日アップした「『HUGっと!プリキュア』は、2018年のジェンダー論の教科書。」の最後に、私は「『男の子は仮面ライダービルド、女の子はHUGっと!プリキュア』と無自覚に言ってしまっている某CM(具体的には言及しません)、『はぐプリ』の直後に流れることもあり、見るたびにげんなりするので何とかしてほしいと思うのは、私だけでしょうか。」と書きました。
 
その後、「白樺リゾート池の平ホテル&リゾーツ」は公式twitterで、「この度、弊社キャラクタールームのテレビCMにつきまして 不適切な表現があったとのご意見を頂戴しました。 お客様にはご不快な思いをおかけしていましたこと、 大変申し訳ございませんでした。深くお詫び申し上げます。」との謝罪を掲載しました。
 
 
<参考>「女の子はプリキュア 男の子は仮面ライダー」の表現が物議 白樺リゾート池の平ホテルのCM取り下げに賛否両論」(http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1806/14/news083.html
 
 
この問題について、私の考えを軽く述べておきたいと思います。
 
まず指摘しておくべきは、「ジェンダーに配慮するのはコンプライアンス的に当然のことではないのか」ということです。
 
ポリティカル・コレクトネス(PC表現)という考えがかなり世間的に浸透してきたこともあり、仮に何か広告で「看護師」の代わりに「看護婦」、「保育士」の代わりに「保母」という言葉を使ってしまっただけで、視聴者から意義申し立てが飛んでくるのは当然のことだと思います。
 
 
今回の「男の子は仮面ライダービルド、女の子はHUGっと!プリキュア」もこれと同様のことで、性別によって一方的に部屋の選択にバイアスをかけているとも捉えかねないCMを製作し、放送してしまったことは、迂闊だったとしか言いようがないと考えます。
 
 
それにしても、一見何気ない発言にその人のジェンダー観がぽろっと表れてしまうというのは恐ろしいことです。
例えば公の場の英語のスピーチにおいて、ビジネスマン(Business man)の代わりにビジネスパーソン(Business person)を使う、「人類」を表す単語に "mankind" ではなく "humankind" を使うというのはPCからしてみれば当然するべき良識的な配慮なわけです。もしここへの配慮が足りなかったならば、「ああ、あなたはそういうジェンダー観をお持ちなのですね」と推定されても何も文句は言えないでしょう。
 
 
例えば英語のような、三人称の主語を "he" か "she" で明示しなければならない言語の文化においては、このようなジェンダーフリーに関する認識も早く浸透していったと思いますが、現状の日本を鑑みるに、このような考え方はまだまだ一般的とは言えないのだなあと思います。
 
 
「池の平ホテル」のキャラクタールーム、別に性別とか関係なく、泊まりたい方に泊まればいいじゃん、と思いませんか。
 
ちなみに僕はどっちの部屋も泊まりたいです。
 

『はぐプリ』を語ることはジェンダー論を語ること

率直な感想として、『はぐプリ』を論じるのは非常に難しいと感じています。
 
『はぐプリ』は良くも悪くもかなり攻めています。果敢に社会問題に取り組もうとしている意気込みを感じます。
 
特にジェンダーに関する表象はデリケートに扱わなければならないと認識しており、最近の私の思考は常に「ジェンダー論」を中心に回っています。この頃はジェンダー論の入門書を集中的に読み漁っています。
 
『はぐプリ』を正面から批評するうえで、ジェンダーフリー、およびジェンダー観のことは避けては通れません。
 
果たして、『スイート♪プリキュア』(2011)が達成した「女の子は誰でもプリキュアになれる」時代からさらに進み、今年から「性別に関わらず誰でもプリキュアになれる」時代になるのでしょうか。
 
 
これからも心して『はぐプリ』を見届けていこうと思います。
 
まあ今秋から『スーパースターズ!』の舞台となった場所に行ってしまい、しばらくリアタイで見られなくなってしまうのですが……。