難関大学に合格した息子が寮生活することになり、送り出した直後、母親が急に動けなくなったケースがある。
いわゆる空巣症候群。
家事も手につかず、「何をすればいいのかわからない」と言う状態になったという。
受験期の家庭は、どうしても子どもの受験中心になる。
スケジュール管理、食事、体調管理…。
日常生活の軸が全部受験に寄っていく。
親の役割は、「子どもを合格させる人」になる。
ただ、やることが明確なので、楽な面もある。
日々忙しいが、ある意味で充実もしている。
それが終わったときに何が残るか。
子どもは次のステージに進み、親の手から離れていく。
そのとき、親の側にぽっかり空白ができることは不思議ではない。
受験に深く関わってきた家庭ほど、その反動は大きい。
毎日のように勉強の話をして、テストの結果に一喜一憂していた日々が、終わった瞬間に急に静かになる。
やることがなくなる、というより、「関わり方」がわからなくなる感じに近い。
何か対策があるのか。
「親も自分の時間を持つ」とか「夫婦で役割分担する」というのも、たしかにその通りかもしれない。
ただ、実際にそれをやるのはなかなか難しい。
受験の渦中にいるときは、どうしても目の前のことが優先される。
少しずつ距離を取る準備をしておく、くらいしかやりようがないのかもしれない。
受験は一つのゴールであると同時に区切りでもある。
子どもだけでなく、親にとっても同じだ。
そのあと何が起きるかは、あまり語られない。
気づくと静かな時間だけが残っている。