NHK 5/11放映のETV特集「汚名 沖縄密約事件 ある家族の50年」を見た。
やっぱりNHKって頓珍漢なのではないかと感じた。
まず、この事件の概要を示しておく(外務省秘密漏洩事件、西山記者事件とも)
1971年、毎日新聞政治部の西山記者が、沖縄返還交渉にあたって政府が米国に対して400万ドルの財政負担をする密約があるとスクープした。この情報を社会党に流して、国会で佐藤政権を揺さぶった。国民も他のマスコミも大絶賛した。
ところが、この取材にあたって、外務省女性事務官(既婚者)と「情を通じて」違法に国家機密を入手したことが暴露されてから、国民も他マスコミも「ドン引き」。
国家公務員法違反で、西山記者は懲役4か月(執行猶予付)、女性事務官は懲役6か月(執行猶予付)で確定。
被告人側の主張は、要するに、国民の知る権利を全うするためには、この程度の違法は許容されるのだ、というもの。地裁は西山を無罪としたが、最高裁は有罪とした。
最高裁は「当初から秘密文書を入手するための手段として利用する意図で女性の公務員と肉体関係を持ち、同女が右関係のため被告人の依頼を拒み難い心理状態に陥つたことに乗じて秘密文書を持ち出させたなど取材対象者の人格を著しく蹂躪した本件取材行為は、正当な取材活動の範囲を逸脱するものである」
なお、2005年になり、米国公文書公開により、この密約が裏付けられ、西山本人と関係者が「ほらみろ正しかった」と騒ぎ訴訟提起するが、そもそも国家公務員法違反の認定で、そこは論点になっていない。
さて、今回のETV特集は、西山記者の妻の日記が出てきたことが目新しい。この事件の著書のある澤地久恵がコメントしているが、思い込みがありすぎる。
西山記者は、裁判開始後、保釈され、妻と子2名を残して実家の北九州に転居。東京地裁で無罪判決後に毎日新聞を退職し北九州の企業に就職。しかし、ギャンブルと酒におぼれる。本人曰く、記者でスクープするときのアドレナリンの出方は、ギャンブルでしか代替できない、とか、死ねと思うくらい甘い。妻の日記によれば、離婚を考える→自殺を考える→子供を育てるのが優先→子供が巣立つ→なぜか北九州で西山と同居。澤地は「夫のことを信頼していたから」と推測するが、日記には「一日でも長く西山より長く生きなければ、自分の人生の選択を誤ったことになる」としている。完全に怒り心頭なのだと思う。
2005年に、米国資料が出てきてから、急に表舞台で怪気炎を上げだす西山。見てて痛々しい。本当にひどい。まず、家族にちゃんと謝罪したか。長男は一度も説明すらしてもらえなかったという。
この事件で、毎日新聞は、女性事務官に訴えられ、結局、1000万円を支払った。毎日新聞は当時500万部(現在162万部)を売り上げ三大紙であったが、読売と朝日に奪われて1割減少し、新本社ビルの負担もあり債務超過に転落。
私は、西山記者の動画を初めてみたが、生理的に無理だと思った。
そもそも、西山記者は、マスコミの風上にもおけないことをした。
①取材源の秘匿
②新聞発表前に社会党にリークした
③酒とギャンブルに逃げる暇があるなら、ほかにやることがあるだろう
現代であれば、こうした事件が起きる前に、「パワハラ」「セクハラ」で懲戒免職になっていると思う。そもそも、沖縄返還交渉は、沖縄自体も求めていたことであり、正直、大した金じゃないだろう。私は、沖縄返還は間違っていたと思うけれども。