工藤会トップの死刑判決が破棄され、無期懲役が新たに宣告された。これについてマスコミやヤフコメなどで「軽すぎる」といった批判や第一審判決後の被告人らによる恫喝が裁判に影響を与えたとの指摘も出ている。

 

本件で死刑が無期懲役になったのは、起訴された犯罪の一部が無罪となったことが原因なので、同じ犯罪について刑罰の評価を変えたという訳ではない。このあたりが混乱している。

 

それはさておき、無期懲役は「軽い」という声が多いのには驚いた。

実は、これには理由がある。今回も関西の某知事(弁護士)が完全に誤解していた。

 

以下は、法務省の統計などをベースに無期懲役の現在を整理した。

 

まず、終身刑には、絶対的終身刑と相対的終身刑がある。後者は「仮釈放」制度がある点で異なり、わが国の無期刑にあたる。

 

そこで仮釈放となるには、刑法により①入獄後10年経過、②改悛の情があることが必要で、地方更生保護委員会で審査して決定する。何か簡単に仮釈放になりそうだが、実は法務省の規則で詳細が決められている。

・原則として審査開始は入獄後30年経過後(さらに審査に1年要する)

・改悛の情には、後悔・更生意欲、再犯の恐れなし、被害者感情を含め社会感情が是認することなど。

・もし、これで審査落ちすると、次は10年後となる。

 

(無期懲役の統計)

・令和4年末 無期刑の収容者1,688人(全体の収容者41,541人)

・第1審の年間の無期懲役判決人数(H25-R4の平均)19人 *死刑3人

・無期懲役囚の仮釈放審理数(5年平均)44人うち許可11人 

 

要するに、無期懲役囚は、最短31年は獄中にいる。25%が31年、残りは40年以上でそのまま死ぬ人も多くなろう。テレビでドキュメント番組をみたが、高齢化が顕著であり、受刑者が介護を行っている。ただ無期懲役囚は「仮釈放」だけが希望で、1日でもいいから娑婆の空気を吸って死にたいといっていた。

 

工藤会トップは71歳である。上告するとのことなので、最高裁が上告棄却して無期懲役で確定したとしよう。72歳で入獄。優秀な模範囚で出られたとしても103歳!

そもそも仮釈放の要件からしても、まず絶対に仮釈放はないであろう。

 

山口組が分裂して以降、わが国で最も危険な団体のトップが、みなと一緒の粗末な生活して労役について、どんどん老いていくだけ。たぶん、誰も面会にも来ない。暴力団関係者はだめだし。仮釈放は絶望的。

 

これはこれでかなり残酷ではある。

結局、弁護団は完全無罪を狙ったのだろうか。

ヤクザの大親分にとって、死刑と死ぬまで懲役とどっちが美学にあうのだろうか。