この著者は自衛隊合憲論者として安倍政権から名前があがった人である。

正直、憲法学会の主流派ではないと思う。

 

といった訳で、図書館で借りて読んでみたが、

なんと、私的には、かなり納得感のある内容であった(買う価値あり)

 

・国家と政府を分けて論じるべしとの主張(そうそう)。三要素説や社会契約説だけでなく国家有機体説的な理解は必要だとの指摘は大事。大学の講義では前国家的権利が強調されていて、論文を書くときは簡単なのだが、実際は国家が救済してくることが失念されているというにはつくづく感じるところ。

・天皇は君主で元首との論。シンパシーあり。ただ女性天皇論あたりは憲法論というより政治論や歴史文化論じゃないかと思うので注意が必要。

・自衛隊合憲論。著者は伊藤正巳の政治的規範性を取るが、佐々木惣一の合憲論で

なんでダメなのとは思う。ちなみに私は学生時代、伊藤正巳の教科書使ってた。ちなみに

自衛隊の防衛出動や海上警備行動などと通常の軍隊の行動との差異もわかりやすい。

・外国人の参政権についての禁止説。全く同感。

・政教分離。一般的な教科書で米国は完全分離と記載があって日本は不徹底だ的な記載が多いが、一方で大統領の宣誓式で聖書を使うことに疑問を感じていたが、すっきりわかった。

公明党への突っ込みはなかなかおもしろい。

 

宮澤・芦部憲法学の流れがいまだに憲法学の枠組みを決めていることを改めて気づかせてくれる新書本。出てくる少数説に、佐々木惣一、伊藤正巳、小嶋和司とか懐かしい。望むべきは財政論との関係でも現実的な憲法解釈はないものかと思った。