立ち寄った図書館に書棚にあったので借りて読んだもの。

 

私は約30年前に私大法学部を卒業したが、

その時でさえ、宮澤俊儀は過去の人であったから、

この本に興味を持つ人はどういう人なのだろう。

 

この本、ビジネス社から1400円で出ていて、

著者は国史を専攻していた人だから、

現在の憲法の制定経緯に興味があるのだろうな、

と直観が働く。

 

WIKIなど読むと、著者は、現行憲法無効論らしいので

宮澤俊儀の八月革命説をやっつけたいのだろうとわかった。

ただ、この本では直接、無効論は出てこない。

 

私は、細かい解釈論より、憲法の学説史は割と好きなので、

結構おもしろかった。

穂積八束→上杉慎吉のあとが清水澄という人だという教授だとは

知らなかった。なお著者は上杉がおかしな人であったと記述しているが、

せっかくなら、北一輝から「天皇則ち国家なり」なら「天皇が外遊すると

国も外遊するのか」といじられたエピソードを上げればいいのに。

 

八月革命説を批判できれば日本国憲法無効論だけでなく、現行憲法

を立憲君主制として解釈する方向性もあるのではないかとふと思う。

天皇の国事行為は内閣の助言と承認によるが、抽象的・儀礼的でも

天皇に権限がないと助言も承認もできないように思えるし、天皇の地位

が国民の総意に基づくといっても選挙による訳でもなく歴史的存在だ

という点や外交儀礼など勘案すれば、そんなに違和感があるのだろうか。

 

あと、全体の構成が繰り返しが多いので、後半は飽きてしまった。

むしろ、東条英機の首相と参謀総長の兼務の違憲問題など丁寧に

説明して欲しかった。