あ~、久しぶりに読み返したらやっぱりこわかったよ。

どうしてくれるんだよ。

お盆なので、霊も帰ってきやすいのに(?)、なんか出てきたらどうすんだよ。

 

 

今回の本は、角川ホラー文庫から装いも新たに発売されたもので、

内容は70年代から90年代にかけての、

実録怪談エッセイまんがです。

 

実は収録作品5本のうち、3本まではほかの単行本で

すでに持っていました。

でも残りの2本「ゆうれいタクシー」と「タイムスリップ」は

知らなくて、そのためにわざわざ買っちゃいましたよ。

 

一番最初の「ゆうれい談」は、なんと1973年に描かれた作品。

ご、50年前ですよ。

当時としては、こういうエッセイまんがでもあり、

怪談でもあるまんがというのは珍しかったでしょうね。

 

で、この「ゆうれい談」だけでなく、ほかの作品も実話なのですが、

何が恐いって、オチがないのが恐い。

 

山岸先生が遭遇してしまった手ぬぐいを顔にまいた幽霊も、

何がしたくて出てきたのか、最後まで一切わからない。

 

「タイムスリップ」では、幽霊ではないけれど、

タクシーで行った山で、同じ場所を何度も通ってしまい、

目的地につかない。

最終的にはもちろんちゃんとたどり着くけれど、

あの現象は何だったのか、まったくわからないまま。

 

これがフィクションだったら、最後に理由がわかるけれど、

現実では何もわからないまま、うやむや状態で終わってしまう。

 

この、「わからないまま」の状態こそが、

実は一番恐ろしいのだろうなあ。

 

このことは、ホラーだけではなく、他のいろいろなこと

例えば人間関係とかでも言えますよね。

身近な(ときにはあまり身近でない人でも)人の気持ちがわからなくて、

どうしてあの人はあんな行動をとるのだろう、

なんだか気味が悪い…とか。

 

いやあ、幽霊とかではなくても、

日常に恐ろしい話は潜んでいるなあ。

 

で、もうひとつ、印象に残ったエピソードがありました。

「蓮の糸」(1993年)で、

山岸先生が寝ているとき、ある亡くなったまんが家さんの

幽霊というか魂が現れる、というお話なのですが…。

 

このときはなぜ突然でてきたのか、理由はあとでわかります。

それよりも気になったことがありまして。

 

その亡くなったまんが家さんと最も親しかったという

あるまんが家さんが

「どうしてうちに来てくれないのよ」

と嘆いたらしいのですが、それに対し山岸先生は

「きっとみんなのところへ行ったんだと思うんです

たまたまハッキリ彼女に気づいたのがわたしだったんですね」と。

 

これを読んで、似たようなことを思い出しました。

それは同じく山岸先生の「レベレーション」6巻(2020年)

にある、先生と海野つなみ先生(逃げ恥の作者さん)との対談。

 

「レベレーション」はあの有名なジャンヌ・ダルクのお話なのですが、

海野先生は

「もしかしたら何人かにレベレーション(啓示)があって、みんなダメになって、

ジャンヌだけがうまくいったのかも」と述べています。

 

山岸先生もそれに賛成していて、

ジャンヌ以外にも、神の声を聞いた人がいたかもしれない

ということだと思うのですが、

おそらくほかの人たちはジャンヌのように

実際に戦場に行くことはなく、現実的な人生を送ったのであろう…。

ということなのかな。

 

私たちの現実の生活と、不思議な現象というのは

すごく距離があるように感じるけれど、

実はそう遠くはない。

 

ふとしたときに、不思議なものをキャッチしてしまうこともあるのだろう。

それはきっと、たまたま波長があった、とかいう程度のものなのかも。

 

そして、たまたまキャッチした人の多くは、

そんなことは時間の経過とともに忘れ、現実を生きる。

 

だけど、中にはジャンヌ・ダルクや、

あるいは山岸先生のように、その体験が人生を大きく動かすことになる人もいる。

 

う~ん…。

山岸先生の作品を読むと、

「先生はふつうに生きられないことに悩んでいるのかなあ」

と思うことがある。

私は、基本的には作品から作家の内面を追求しないのですが、

山岸先生だけはなんだかそう感じるので。

 

まあ確かに、いろいろ不思議な体験をして、

それを冷静に分析し、作品として発表する才能もある。

 

ある意味、「視えすぎる人」なのかもしれません。

霊的なことだけでなく、ご自身のことも、まわりの現実も。

 

それはやっぱり大変なんだろうなあ。

 

でも、こうやって山岸先生の作品を読み、

誰に頼まれたわけでもないのに感想を綴る人間もいるのです。

 

赤の他人にそうさせるって、すごいことだと思いますよ。

 

てなわけで(?)先生、これからも

ご自分のペースでいいので、描き続けてくださいませ。

と、最後はふつうのファンレターになってしまいました。