短編小説「桜田門の櫻」原作者 献残屋藤吉郎

 

 「桜田門の櫻」原作者 献残屋藤吉郎

極悪刑事「流川京十郎」の警視庁刑事物語、、

警視庁捜査一課に「鬼も黙る怖い刑事」と、恐れられている「流川京十郎」という鬼警部が居た。
彼はグループ捜査を嫌い、常に担当課長や上層部から睨まれていた。
何と云われようと単独捜査を行うのであったが、検挙率は警視庁切っての辣腕であり、ナンバーワンを誇っていた。
そんなことから嫌われてはいたが、文句は言えなかった。
事件が起きた時に「合同捜査会議」には出るが、話を聞くだけで、自分の意見は云わなかった。
警視庁内部ではやりずらい「鬼警部」であった。
そのために部下を持つこともなかったのである。
そんなある日、事件が起きた、、、警視庁捜査一課では普段なら扱わないのであるが、、大きな事件の捜査が無かったので、、現場に捜査員が数人出かけた。
流川京十郎も何となく現場に出かけて、現場検証に立ち会ったのである。
四谷の裏通りの十字路での引き逃げ事故であった。なんの不思議もない交通事故であり、若い女性が車に曳かれたという事故のようであった。
何を思ったか、、流川京十郎は付近の監視カメラを調べて覗いてみたら、、疑問点が出たのであった。
これは流川京十郎が持つ、刑事の勘であり、、監視カメラの中の動きに不自然さを感じたのであった。
これは単なる交通事故ではないぞ、、、巧みに工作された「殺しだ」と、、彼は動物的な本能で直観したのであった。
誰しもが交通事故で片付けてしまう事件として扱われて終わりである。
しかし、流川京十郎の勘は違っていた。今までにも人と違った見方から、度々事件を解決したのであった。
一度、疑問や疑惑を持ったら、、納得するまで究明していくのが彼の捜査方法であった。今
回は疑問を持ち。。そして、彼独自の捜査がはじまった、



2)疑惑を抱いた交通事故

ただ単に交通事故として扱われた、今回の轢逃げが不自然に思えたのであった。
そして、数少ない監視カメラを探して調べた。
やはり、、どう見ても可笑しいと思い、何度も何度も見たのであった。
引いた車の動きが可笑しく見得た、、歩く女性を目掛けて発信させたような気がしたのであった。それで、引き逃げされた女性を調べた。
普通に考えたら、その女性はその引かれた場所には絶対に来ない筈で有った。
その場所を歩いていることはないのであった。
そんな女性が世田谷区成城の街角で車にかれる筈がない、、、なんか不自然であり、謎が潜んでいるような、、鬼警部の勘には閃いたものがある。
そこで、引き逃げされた秘書課の女課長「大和田光代」について調べてみた。
彼女はやり手経理ウーマンだったので、、抜擢されて大東京銀行の代表取締役、大河内要之助の秘書課勤務となり、大河内要之助の無くてはならない秘書課長になったのであった。
そんな大東京銀行に脱税汚職の疑惑があり、、警視庁捜査二課と検察庁の捜査がはいっているのであった。
そんなことから、流川京十郎は今回の交通事故は偶然に起こったものではなく、故意に図られた交通事故だと勝手に判断したのであった。
そこで、大和田光代は世田谷成城の誰に会いに来たのか調べる必要があり、、関係者を調べてみた。銀行関係ではいないのであった、、流川警部が調べた限りでは、またまた、謎が残った。


3)大和田光代は誰を訪ねたか。。。

流川京十郎は疑問に思ったひとつである、、大和田光代の尋ね先を調べた、、まずは「大東京銀行」の中の役員で東京都世田谷区成城に住んでいるものはいないかを当たったが居なかった。
そして、昔仲間の警視庁の捜査力を利用して、、大東京銀行の株主を調べてもらった。
個人株主で資産家の大株主が一人いた、「太田黒清三」で、、世田谷区成城に住んでいた。
その太田黒清三の家が、今度の交通事故現場から近かったのである。
それだけの理由では今回の交通事故には繋がらなかったが、、流川京十郎警部には疑うのには十分であった。
そして、大和田光代は大東京銀行の頭取である「大河内要之助」の秘書で有り、何らかの連絡係りをしていても不思議ではなかった。
ましてや「脱税及び贈収賄容疑」で警視庁第二課及び検察庁の捜査が疑惑を持ち、捜査をして居るのであった。
そんな大東京銀行の疑惑の中での交通事故で有るので、流川京十郎警部は疑い興味をもったのであった。
一旦気にして、目を付けた事件には貪欲なまでに執拗であった。流川警部は突っ込んで調べることにしたのであった。
今までに目を付けて、捜査を始めたら、、必ず仕留めていたのである、、その捜査には違法的なことも有り、、強引な捜査なので「極悪刑事」の異名をとっていた。
警視庁捜査一課に顔を出した流川警部は、、「流川、、お前の今、捜査している事件は二課と検察庁が追っているので、、邪魔をするなよ、、」
と、、捜査一課長の江戸三郎に釘を刺された。
「分かっていますよ、、課長。。俺も二課と喧嘩するつもりはないから、、大丈夫だよ、、」
と、、返事をする流川警部であった。
「お前が、、分かったわ、、は危ないからな、、まずは分かっていないな、、しかし、、気をつけろよ、、」と、、云ってくれた。
単独捜査が好きな流川警部だから、、どうせやるだろうと思っていたのであった。
江戸課長は流川警部の性格を知っているので好きにやらせることにした。


4)流川京十郎警部、当たらずとも近付いた。

流川警部には何も言っても、走り出したら無駄であった、それを知っている江戸課長は好きにやらせていた、、捜査はどこかで一緒になっていくことを分かったいた。
今回の交通事故が不自然であることを、捜査一課も疑っていたのである。
警察も馬鹿ではない、、、それを表立って動いては「捜査二課」との問題が起きるのであった、、、今は流川警部に任せておけばいいのだと、、江戸課長は結果を待っていた。
「いいか、、、俺たちが動けば目立つ、、しかし、流川警部が一人で動けば、責任はあいつのせいになる、、、だから、やらせておけばいいのだ、、」と、、
江戸課長はほくそ笑んでいた。
そして、流川警部は信じてた、、、必ず、突き止めると、、、
彼の刑事としての勘、、捜査力を分かっていたのであった。
流川警部は一人で動き回っていた。そして、、大東京銀行の脱税疑惑も明らかになり、、取り引き先の「光友不動産株式会社」との贈収賄事件も訴訟にまで持ち込まれた。
しかし、大和田光代秘書課長の交通事故は未解決であった。
どうしても、流川警部は「殺人事件」に持ち込みたかったので、立証に必死であった。
今回の贈収賄に絡んで、世田谷区成城に住んでいる「太田黒清三」に目を付けていた。
彼は「光友不動産(株)」の顧問をしており、、政界財界に顔が利く、大物権力者、それも悪名高き、やり手だった。更に始末が悪いのは「組織暴力団暁会の会長」でもあった。その地位を利用して、大和田光代を抹殺するくらいは朝飯前だった。
流川警部は事件の流れを掴んだので、、証拠固めをしていた。
どうせやるなら、、流川警部は「殺人」を起こした実行犯よりも、、強引でもいいから「殺人教唆」で大物「太田黒清三」を吊り上げたかった。
流川警部は密かに思っていた、、、「今に見てろよ、、ふんぞり返っていられるのも、、娑婆に入れれるのもあと少しだからな、、、待ってろよ、、古狸、、」と、、闘志を燃やしていた。誰にも出来ないことをやるのが「俺」だって、教えてやるよ、、と、、


5)流川京十郎警部、、大いに怒る。


流川警部は政界財界の権力者であり、「組織暴力団」の会長でもある、、、「太田黒清三」の捜査を始めたら、、すぐに政治的な圧力がかかった、、横槍である。。
流川警部は警視庁刑事局本部長の「黒田清輝警視正」から呼び出されて。。「太田黒清三」に関する捜査を打ち切る様にと指示を受けた。
「なぜ、、贈賄の疑惑がある容疑者の捜査を打ち切るのですか、、、」と、、一言だけ文句を云った。どうせダメと分かっていたが、、流川警部は意地を見せたのであった。
「誰が止めるものか、、止められるものならやってみな、、首を掛けて、てめえ、、と心中をしてやるからな、、、糞くらえ、、」と、思いながら刑事局長の部屋から出て来た。
刑事対策課の江戸課長が待っていた。
「大丈夫かよ、、京十郎、、無理するなよ、、、やっぱりな横槍か、、まったく、やりずらいよな、、刑事をやってられなくなる時があるよな、、、でも、、頑張れや、、」
と、、励ましてくれたような、冷やかしてくれるような言葉が返ってきた。
流川警部は「ふざけやがって、、、誰が、お偉いさんの言うことなんぞ聞くものか、、今に見てろってんだ、、」と、、憤慨しながら警視庁を出た。
江戸課長は期待していた、、、あれだけ怒った京十郎は久しぶりだった。
あいつならやるぞ、、と思いながら、、他の捜査員には「京十郎には出来るだけ、協力をしてやれ、、」と、、声を掛けて置いた。
少々、やきもきした気分で、昼間からやっている飲み屋に流川警部は顔を出した、その店は、、
「パラダイス」といった、、「太田黒清三」の組織暴力団暁会の経営している店であり、、麻薬密売や売春の噂の多い飲み屋であり、、ごろつきの溜まり場でもあった。
そこには組、組織員も入れば、半端な極道もいる、、いわゆる流れ者や無法者が集まっていたので、、裏社会の情報が得られやすかったのである。
そこには義理人情の世界もなく、、全てが「金次第」の薄汚れた世界であった。
流川警部はチョクチョク顔を出していた。
悪人仲間からは「極悪デカ」と呼ばれていた。何でも手を出し、、情報を手に入れていたので、
非情な極悪人と思われた居た。
「旦那、、、久ぶりですね、、情報が回っていますよ、、、旦那には近づくな、、情報を流すなと、、、」と、、教えてくれたのは流川警部が情報屋として使っている、、「通称、鼠」であった。すばしこっくて、度胸もあり、知恵もあったので、、流川警部は面倒を見ていたのであった。
「旦那、、気を付けて下さいよ、、あんたの命を狙っている奴が居るからね、、それと、、あんたには賞金首が出たよ、、、いくらだと思います、、、1000万だからね、、此処へは来ないほうがいいよ、、、躍起になって狙うから、、何かあったら、俺の方から連絡するよ、、」
と、、云って「鼠」は消えた。
「そうか、道理でよそよそよしかったわけだ、、、ありがとうよ鼠、、オンに着るぜ」と、、云いながら、流川警部も警視庁に戻った。
これからは外出す時には「防弾チョッキ」をつけて、拳銃携帯で出掛けることにした。
そして、そこまで警戒していて、ガードを固めたのには、やはり、調べれられて不味いことがある証拠であったと確信した流川警部であった。
そして、彼は燃えた、、燃え上がったのである。


6)賞金首にされた流川京十郎警部、、、


流川警部は確信をしたのであった。あの「太田黒清三」が流川警部に危険を覚えて、政治力でも圧力をかけても迫ってくる、猪突猛進の鬼警部に危機を感じて、抹殺を計ったのであった。
命を的にされた流川警部は、そこまでやるなら、、とことん命がけで、追い詰めてやると覚悟を決めたのであった。
ここまで宣戦布告をされたので有るから、本人は穴倉からは出てこないだろう、罠を仕掛けておびき出さなければ、そう思いながら考えた。
東京芝浦に有る倉庫街の「パラダイス」に、網をはり、、罠を掛けてやろうと、、流川警部は芝浦桟橋に立ち並ぶ倉庫街に顔を出した。
すると、、情報屋の「鼠」がやって来て、、、「旦那、、気を付けてよ、、、奴らは本気で狙っているからね、、、今日あたりは狙う奴らが、うろうろしてるから、、本当に気を付けてな、、俺は何にも出来ないが、、勘弁してよ、、、あいつらに狙われたらたまったもんじゃないから、、命いくつあっても足りないのでね、、なんかわかったら、必ず知らせるよ、、、」と、、云って離れていった。
流川警部はいつでも撃てるように「拳銃」を確認した。今日は彼は拳銃を二丁持っていたのである。。
流川警部から情報屋「鼠」が離れた瞬間に一発の銃声が響いた。
彼のすぐ傍のカウンターの上に有ったビール瓶が割れた、、流川警部は拳銃を構えた。
そして、撃ってきた方角に銃弾を放った、、、一人の男が倒れた。
「おい、、、俺は警視庁の流川だと分かって、、撃っているんだろうな、、いいか、、俺は容赦なく撃ってきた奴を殺すぞ、、いいな、、」
と、、流川鬼警部は怒鳴った。
そして、、「死にたい奴は出てこい、、」と、、云いながら威嚇発砲をしたのだった。
今回の襲撃犯は逃げたが、、次がいつ襲ってくるか分からなかった。
銃弾を撃ち込まれた流川鬼警部は「パラダイス」の監理事務所に乗り込んだ。
頭に血が上っていた流川鬼警部は、いつもはやらないが、、事務省に入るなり、拳銃を数発撃ち込んで入って行った。
やくざと云えども、拳銃を撃ちこまれては動けなかった。。
「どうしたんですか、、流川の旦那、、今日は、、」と、、取り繕う間もなく、、、
「ふざけるなよ、、、太田、、手前が居ながら、俺に弾を撃ち込ませたな、、、返答によっては殺すぞ、、、」
「太田、、お前、、俺の賞金首の事は知ってるな、、、」と、、拳銃を向けられて聞かれた太田は、、「知ってますよ、、しかし、、俺たちは上からの命令でも、そんなことはしませんよ、、
本当ですから、、いつも旦那には助けてもらっていますので、、」と、、答えた。
「少しは義理を知っている積りですよ、、」と、、云うことに嘘はないと思えた。
賞金首は半端者が金欲しさにやっていることですよ.、、とも言っていた。
「流川の旦那、、俺たちやくざ者にも義はありすよ、、どんな命令でも聞く時代は終わってますよ。。無理な押し付けはヤクザの世界でも、跳ね返されますよ今は、、筋の通らない無理は駄目なのですから、、俺でさえも跳ね返しますから、、、」と、、今回の賞金首の話は組織内でも問題になってるんですから、、と、、うちわ話をしてくれた。。刑事で無かったら舎弟分に成りたいほどの男意気である鬼警部であった。


7)やくざに好かれた鬼警部

流川鬼警部は悪人には滅法強いが、、やくざにも好かれれる警察官であった。
彼はめちゃくちゃ強い男であったが、義に熱く、情にも優しい刑事であったので、陰ひなたに味方がいた。
組織のトップから指示があっても、背く不良ややくざが居たのであった。
それで、「パラダイス」の責任者である暁会の幹部の太田次郎が教えてくれた。
「旦那、、やくざの中にあんたを殺そうと思う奴は居ないヨ、、、今回の太田黒会長の指示を守っているのは若頭大枝恒夫ぐらいだから、、でもな、、気を付けてな、、」と、、
言ってくれたのであった。
「ありがとう、、、恩にきるよ、、、」と言ってパラダイスの事務所を出た時だった、、
一発の銃弾が飛んできた。流川警部に命中して、その場に倒れた、、、しかし、、防弾チョッキをつけていたので、鬼警部は助かった。
流川鬼警部を襲った狙撃犯が近づいてきた、、、流川鬼警部は寝ながら、、近付いた犯人を撃ち殺した。
そして、襲ってきた狙撃犯の脚を撃って、動けなくしたのであった、流川警部は射撃では一流だった。狙ったら外すことは無かった。
起き上がった流川警部は、脚を撃たれて動けなくなった狙撃犯を捕まえて、拷問に近い取り調べをした。そして,、吐かせたのであった。
流川鬼警部は録音を執った、、、若頭大枝恒夫の指示であることを認めた、鬼警部の拷問に耐えられなかったのである、、、鬼警部は自分を殺そうとした人間を許すわけがなく、その場で撃ち殺したのであった、極悪刑事と言われる所以である。
これで2度、3度と狙われた流川鬼警部は、、暁会本部のある赤坂の事務所に乗り込んだ。
そして、暁会事務所に入るなりに、数発の銃弾を撃ち込んで、、、
「若頭の大枝恒夫、、居たら出てこい、、、」と、、更に銃弾を撃ち込んだ。
その撃ち込まれた銃弾の奥の部屋から、、大枝若頭が出て来た、、、
「なんですか、、いきなり、、銃を撃ち込んだりして、、刑事だからって、そんな無茶をするなら許さなねぇーよ、、」と、、粋がって怒鳴って来た。
「バカやろう、、、ふざけるなよ、、、殺人教唆の現行犯で、お前を逮捕するよ、、分かったか、、」と、、更に数発を撃ち込んだ。
そして、傍にいたやくざ者に手錠を投げて、、大枝に嵌めろ、、、と命令を出した。
「こら、、お前だ、、:やらないなら、お前を撃ち殺すぞ、、」と、脅してやらせた。
そして、大枝若頭を引っ張り出して、連行していった。
警視庁殺人課での「殺人教唆容疑」での逮捕だった。
警視庁内部でも慌てた、、、警視庁内部の上層部からの通達で、「太田黒清三」には関わらないようにと指示が出ていたのであるから、、、
警視庁殺人課の江戸課長はすぐに上層部に呼びつけられた。
流川警部に伝達されたが、、「馬鹿野郎、、何が関わるなだよ、、俺が的に掛けられて撃たれたんだよ、、、俺を殺そうとした奴は正当防衛で殺した、、然し、それを指示した大枝若頭を逮捕して何が悪い、、こら、、出てこい、、内部の悪党ども、、」
と、、怒鳴り廻していた。
証拠があるのに、無視するのか、、徹底的にやってやるぞと、、、息巻いた流川鬼警部であった。
ここまで来たら、政治的な権力で納めることは不可能だった。
と、、怒鳴りながら、逮捕した大枝若頭を警視庁内の留置所に入れた。
その様子を見ていた江戸課長たちは、、、内心で「やれやれ」と応援したのであった。
ここまでくると刑事局長の一存では決められずに、、「警視総監」が出てきたのであった。
そして、法律の元にすべてを合法的に取り調べて、証拠固めをして起訴するより仕方がなかったのである。
全てが流川鬼警部の思うように進んだのであった。


8)流川鬼警部は強引に暴力団暁会の若頭を逮捕した。

警視庁内部では騒めきだしたのであった、、政治的圧力により、、「太田黒清三」には構うなと言い渡したのに、その足元を掬ったのであったから、、、
そんなお達しなど「くそくらえ、、、」という考えで動いた流川鬼警部だった。
常に、、「やれるものなら、、やってみな」の命がけの捜査であるから、、怖いものは無かったのである。
正しいものは正しい、、、何が悪いという度胸の元の行動であった。
警視庁上層部でもどうにもできない行動であり、政治的圧力も、警察内部の威圧でも聞かないのだった。
流川鬼警部は暁会若頭大枝を締め上げてやると、、思いながら作戦を練っていた。
さあ、、取り調べを始めようと、留置所から、若頭大枝を連れてくる指示を出したのであった。
すると、留置所内で若頭大枝恒夫が殺されたと言うのであった。
朝の洗面の時間に、別の房の容疑者が二人がかりで、大枝恒夫と喧嘩になり、、二人のやくざ者に絞殺されてしまったのである。
流川鬼警部からみたら計画的に殺されたと見えたのであったが、、喧嘩相手のやくざ者はあくまで、喧嘩の上のいざこざからと言いはったので、、それ以上の追及は出来なかった。
流川鬼警部は警視庁内部の手引きがあって、証拠隠滅のための「太田黒清三」の謀略だと思えたのであった。
これでまた、、逃げられたと思ったが、、「くそ、、今に見てろよ、、」と、、流川鬼警部は燃えた。
内心、やられたと思えたのであった、組織暴力からの攻めは出来なくなったから、次の手段を見つけるまでは、太田黒清三を泳がして置くしかなかった。
権力者であるためには「資金」が必要だったので、、その資金回収のルートを見つけてやると、流川鬼警部は捜査を始めた。
中途半端な資金では人は動かせない、、太田黒清三の場合は人格では人は附いてこない、、金と暴力の二刀流しかない筈だ。
その資金元を探して、息の根を止めてやるよりしか方法はないのだった。
前回の脱税疑惑の時の「大東京銀行」絡みの取引先の企業の中に資金元が有る筈だと狙いをつけて、情報屋たちからも情報を集めて、関係企業の捜査を始めたのであった。
情報屋「鼠」も動いてくれた。
そして、怪しい動きのある企業が浮かんできたのである。
流川鬼警部の刑事としての「勘」はずば抜けたものを持っていた。
そして、、町金融の「毒島金融株式会社」と、、「大橋スクラップ再生株式会社」に突き当たったのである。
毒島金融(株)は黒い噂の有るやくざ金融であった、闇金融であり、貸し出す先は組織やくざであり、その資金は「覚せい剤密輸」及び「銃密輸」などに巧妙に使われていた。
また、「大橋スクラップ再生(株)」は窃盗物でも盗品でも買い入れる噂の有る業者であり、その手口は巧妙であった。
警察関係も目を付けていたが、一向にボロを出さないで、盗品買をしていた。
今はやりの「太陽光発電の銅線買収」を安く買入れているが、窃盗犯には都合のいい、、業者であった。
それら三流の業者を利用して、荒稼ぎをして、資金を創って、陰の権力者面をしていたのであった。
今に潰してやるからと、流川鬼警部は闘志を燃やしていたのである。
「大橋スクラップ再生(株)」は隅田川の川筋にヤードを構えていたので、、踏査がてら見に行った、、、隅田川の春の桜堤は見事に咲いていた、、、遠山の金さんではないが、、見事に散らしてやるからな、、待っていろよ、、太田黒清三、、お前のドス黒い、黒の花弁を隅田川に散らしてやるから、、、と、、一人、ほくそ笑んだ、鬼警部であった。


9)太田黒清三の急所を見つけた「流川鬼警部」

流川鬼警部は、上層部の命令指示を無視して行った。そんな時に警視庁刑事部長「柳沢藤蔵」は、自民党幹事長「大内佐一郎」に呼びつけられた。
そして、政治的圧力による横槍が入れられた、、
「なぜ、、柳沢刑事部長、、流川京十郎を止められないのだ、、あんたの出世も此処までかな、、何とかしたまえ、、、」と、告げられた。
「申し訳ありません、、今回は警視総監勝象二郎が決済を出しましたので、なんとも出来ないのです、、誠に申し訳ありません。。」と、、謝った。
そして、、「分かった、、わしの方で何とかする、、あんたは引っ込んでいなさい、、」と、、帰された。
柳沢刑事部長は自分の出世を諦めたのだった、、出世の道を絶たれたような気がしたのだった。それならと、、覚悟を決めて、流川鬼警部の考えを応援する羽目になった。
警視庁に戻った、柳沢刑事部長は流川鬼警部は呼んで、、伝えた。
「流川警部、、今回の太田黒清三の件は、精一杯やりなさい、、いいかな、、中途半端ではやめるなよ、、どうせやるなら、、最後までな、、」と、、背中を押してくれた。
警視庁としては、政治的圧力に面と向かって立ち向かう、体制を整えて、立法に対して司法は毅然とする戦いを挑んだ。
そして、自民党幹事長「大内佐一郎」は政治力を掛けて、検察庁に圧力を向けたのだった。
検察庁としても、困って、、警視庁警視総監「勝象二郎」に助けを求めてきた。
しかし、、上層部の管理職だけでは対応できない状況になっていたので、、検察庁は申し入れを断られた。
これで、太田黒清三は窮地に陥ったのであった。
自民党としても、司法と正面切っての喧嘩は出来なかった。政治政党としても、自分たちの道が不味いとなったら、、たとえ、権力者であろうとも、見切らなければならなかった。
そして、、太田黒清三という権力者は、政治にも見放されたのであった。
いつまでも「金力」と「暴力」で、世の中を捻じ曲げて来た、悪人権力者が歩く道はなくなったのであった。
そんな状況を知った「太田黒清三」は消えたのである。
流川鬼警部は、隙を作ってしまって、、今回逮捕した、暁会若頭大枝の判決が出るまではと、、検挙を控えてしまったことであった。
この間に、太田黒清三は逃げたのであったが、、流川鬼警部は何処までも追いつめてやろうと決意したのであった。


10)太田黒清三は闇夜に消えた、、、

太田黒清三は、政治的なごり押しが出来なくなり、、司法を敵にしたのだから、逃げ道はひとつであった。
彼得意の暗黒の闇夜にしか生きる道は残されていなかった、、、他の世界の人間と違い、あくどく活きるすべは持っていたのである。
金と暴力は残っているのだから、、闇の世界では活けるのであった。
強い人種であった、、、太田黒清三は表舞台からは消えたが、彼には「裏舞台」があった、
やくざと言う社会の「寄生虫」は何処にでも、住めるようだった。
一旦、表舞台から消えると厄介であった.どんな人間にでも変身できるので、、
やりづらいのは「金」が有って「暴力」が有るから面倒なのであった。
世間体を気にせず、、何でも出来るので困ったものなのだ。
太田黒清三は裏舞台演出家になり、、世の中の都合の悪い人間を舞台から側の人間となり、、闇の暗殺者となるのであった、
誰に遠慮することなく、権力者が、政治的な力ではなく、暴力の支配者となって、金の力だけで依頼を受けて、邪魔者を抹殺していく「闇の暗殺者」となるのであるから、、ますます始末が悪く成ってしまった。
流川鬼警部は初めから逆らっていたのだから、なんとも思わなかったが、、今回、権力者であった太田黒清三に刃を向けた官僚たちは、毎日、おどおどしていた。
そして、一番先に逆らった、警視庁刑事部長の「柳沢圭吾」は毎日、脅されて、びくびくしていたが、、ある日、交通事故で死亡したのであった。
次は当時、太田黒清三の意に従わなかった、自民党の大内佐一郎幹事長は何とか太田黒清三に連絡をとって謝罪をしようとしたが、すでに手遅れだった。連絡が取れなかったので慌てた。
しかし、やくざの世界では裏切りは許されなかったのである。
そして、大内佐一郎幹事長は女と温泉旅行中に旅先の川で溺れて死んだのだった。
そんな話を聞くと恐ろしく成り、、誰でも死ぬことは怖く、暴力的な支配に屈伏してしまうのであった、、、そして、、今度は「闇の暗殺者」が怖く成り、恐ろしさのあまりに、言うことをきくこととなってしまったのである。
「闇の暗殺者」が裏の権力者となり、、社会の表舞台も裏舞台も支配してしまったのであった。
流川鬼警部は「闇の暗殺者」を追って、燃えたのである。


11)太田黒清三、闇に消える、そして陰の権力者に

太田黒清三は闇に消えてから、以前より強引な悪徳権力者になったようだった。消えた太田黒清三は誰彼はばかることなく、己の思うままに動き出したのであった。
流川鬼警部もやりづらくなった。進出鬼没であったために、予測がなかなか出来なくなったのである、、更に住所不定になってしまったので、、追跡調査が思うように出来なくなってしまった。
太田黒清三が会長を務めるやくざ組織「暁会」は若頭大枝が逮捕されているので、副若頭の斎藤龍二が会長太田黒清三の指示で動いていた。
しかし、その実態は分からなった。
現実に太田黒清三の意に従わなかった、警視庁の刑事部長は交通事故で、更に自民党幹事長の「大内佐一郎」も旅先で死亡していたのである。。そんなことから、以前より「太田黒清三」の権力は強くなった。
始末が悪いの彼が表舞台に出てこないことであった。
そして、「闇の権力者」となり、、政界にも経済界にも圧力をかけて、悪行を撞いる尽くしてることであった。
流川鬼警部は「クソ、、忌々しい野郎だ、、必ず、尻尾を掴んでやるからな。。待ってろよ、、」と言いながら、
闇の権力者になった「太田黒清三」を追い求めていた。
流川鬼警部は充てもなく、、無法者の溜まり場、、「パラダイス」を覗いてみた。
情報屋の「鼠」と久し振りにあった。
「おう、、鼠か、、久しぶりだな、、どこへ消えていたんだよ、、
お前の顔を見ないと寂しいな、、、、」と、云いながら流川鬼警部は鼠に近付いた。
「ご無沙汰してます、、、ああ、、そうだ、、旦那、この前ですが、有馬温泉で珍しい人に会いましたよ、、」と言いながらにやにやしていた。
「誰だと思います、、、旦那、、あんたが知りたい人ですよ、、あの太田黒清三ですからね、、俺もびっくりしましたよ、、」
「そうか、、お前のことだ、、調べたんだろうな。。」
と、、言うなり、、鼠は話してくれた。
いくら探しても消えていた「太田黒清三」が有馬温泉にいたのであった。
全ての情報を鼠から貰った、流川鬼警部は有馬温泉に飛んでいった。
用心深い奴だから、常に塒は変えているだろうが、念の為に出かけたのであった。


12)有馬温泉で、追い込む

流川鬼警部は情報屋「鼠」から聞いた有馬温泉の「太閤の湯温泉」を訪ねた。予約していた部屋に入り、とりあえずは温泉にと、、、今までの疲れを癒した。
有馬温泉は「鉄分を含んだ赤い湯」と「炭酸の白い湯というか透明な温泉」があった、一つの温泉で2種類の温泉を楽しむことが出来た。
その昔、豊臣秀吉がこよなく愛した有馬温泉には「太閤の湯」とか、太閤となずけたゆかりの物が多かった。そんな感傷に浸かりながら、流川京十郎は温泉に一人静かに温もりにしたっていた。
そんな時に数人の男達が入って来た、関東の人間らしかった。
そのうちの一人が,大きい声じゃあ、云えないがな、、「少々、親父にも頭に来るな、、最近の親父は我儘が過ぎないか、、兄弟、、」とか話していた。
その話を聞いていた流川警部は、、「こいつら、やくざ者か、、それに関東か」と、思いながら、もしかしたら、暁会のやつらかも知れないな、、と、、
聞き耳を立てていた。
警視庁切っての極道刑事、流川鬼警部が聞いているとも知らずに、話を続けたので、他の者ならいざ知らず、内容はほぼ理解できた。
やくざ者たちの話では「太田黒清三」はまだ、有馬温泉にいるようだった。それも近くに、、どうやら、この「太閤の湯」に逗留していたのだ。
流川鬼警部は内心憑いていると思った、、、まさかというところにいたのである、、ホテルでそれとなく聞いたら、離れの「特別室」にいた。
追い求め、やっと、探し当てた獲物だった。というよりは恋人に会うようにわくわくしたのであった。
夕食を済ませた流川鬼警部は背広姿に着替えて、、太田黒清三の離れに訪問したのである。
突然、尋ねられた「太田黒清三」も驚いたが、、さすが、大物と言われた権力者であった。
鬼警部が挨拶をしても、慌てなかった、、傍に控えたやくざ者たちがおろおろしていたのである。「太田黒会長、、今夜は私も私用で温泉に来ただけですから、、ご挨拶に来ただけです。
お元気なご様子でよかったですよ、、表舞台に出てこないから、心配してました。。」
と、、挨拶をして、流川鬼警部席を立とうしたら、、、
「まあ、、急ぎ旅じゃあなそうだ、、どうですか、、こうして会えたのですから、、一杯ぐらい、付き合いませんか」と、、盃を勧められた。
傍についていたやくざ者たちは落ち着かなかったのである、賞金首がいるのであるから、、
どうしたらいいか、分からなかつた。
そんなことには一向構わずに、二人は盃をかわしながら、談笑をしていた。
帰り際に、流川鬼警部は一言だけ呟いた、、「会長、、いずれはそのうちに、お邪魔しますので、、楽しみに待っていてください、、」と、、、
太田黒清三会長も「君もな、、精々首がいつまでも、繋がっているようにな、、今夜は楽しかった、、いい酒だった、、」と、、送り出してくれた。
二人の闘いは終焉に近付いているような気がする 、流川鬼警部だった。
有馬温泉の湯煙の街に、静かに男の炎は燃えた。


13)有馬温泉から帰った鬼警部は、、、

流川鬼警部は有馬温泉では、太田黒清三の確認をして、元気だったのでやる気を、ますます起こしたのであった。
流川鬼警部は姿形が見えなかったので、少し不安だったのである。
余りにも表舞台に出てこないから、、もしかしたら、死んだのではと疑ったくらいであった。
しかし、有馬温泉で悪人丸出しの男が厳然として、元気だったので安心感も出て、太田黒清三という「影の権力者」に燃えた。
太田黒清三の事だから、もう、有馬温泉からは姿を隠しただろう、、
そんなことを思いながら、一つの足掛かりになるだろう「パラダイス」を訪ねた。
監理事務所に太田次郎は相変わらずいたが、、「旦那、此処のパラダイスは経営者が変わったんですよ、、俺もついでに組を抜けましたんでね、、子分たちのことを考えてくれない会長なんかは糞くらえですよ、、愛想がついたんでね、、、」
そんな話を太田次郎はしてくれた。
「噂ですが、、大阪の方へ拠点を移したそうですよ、、もともと、太田黒会長は大阪が極道への出発なので、、、古巣へ戻ったみたいですね、、今のところ、俺の知っていることはそんなとこです、、
何かあったら連絡しますけど、、気をつけてよ、、あの会長はしつこいから、、、蝮みたいな男だからね、、、」
と、、教えてくれた。
「ありがとうよ、、」礼を述べてパラダイスを出た流川鬼警部である。
警視庁に戻った、鬼警部は調べた、太田黒清三の古巣のやくざ組織を、、今は「大阪天王寺一家」が名称を改めて「大阪天王寺興行株式会社」となって、太田黒清三の実弟が跡目を継いでいた。
成合は「金融業」を手広くやっていたのである。
流川鬼警部は「なるほどな、、」と、、合点がいった。
悪は悪人らしく、用意周到に権力者になるための準備をしていた。
「影の権力者」とか「影の暗殺者」とか言われても可笑しくない組織創りをしていたのであった。
流川鬼警部は特別捜犯の江戸課長に報告をして、事情を説明したうえで、承諾をもらったのである。

14)大阪での捜査

流川鬼警部は新幹線で大阪に向かった。長期出張なので安いビジネスホテルを探して宿泊をすることにしたのである。捜査目的の「大阪天王寺興行(株)」が大阪市天王寺駅近くにあったので、その周辺の「ホテル天王寺」に決めての捜査活動であった。
まずは警視庁で調べた住所から会社のある所在地を訪れた、、5階建ての立派なビルで、しかも本社ビルとなっていた。そこで法務局に行き、会社謄本と土地謄本を取ってみたのである。
流川鬼警部は感心した、土地も建物も「大阪天王寺興行(株)」の名義になっていた、相当、あくどい金儲けをしているようだった。
会社の代表取締役は太田黒清三の実弟「太田黒征四郎」が登記されていた、実務実権は太田黒清三であろうと想像がつく。
会社所在地の周辺での聞き込みをすると、、やはり、あくどい「金貸し」で、暴力団だった。
その後は大阪府警天王寺警察署を訪問した、流川鬼警部であった。
そして、暴力対策課「通称丸棒」の浜田警部補が応対してくれたので、流川鬼警部も警視庁特捜部の手帳を示したのである。
そこで「大阪天王寺興行株式会社」のことを聞いて、浜田警部補から現在の状況を教えてもらった
古くからの大阪の「天王寺一家」の流れを組む博徒であり、もともと、天王寺周辺を縄張りとしていたが、今は「金融業」を主体とした、企業やくざであると 、、
金融業と言っても早い話が「高金利の金貸し」で、誰にでも貸すが、その取り立ては厳しいとのことであった。
しかし、法律で定められた金利範囲なので、文句は言えなかったらしい。
その取り立てには情容赦がなかったので、その間に関してはトラブルは起きていたが、問題が大きくなると「顧問弁護士の田沼正二郎」という、悪名高き弁護士事務所が対処していたので始末が悪かったのであった。
あくどい金貸ではあるが、全てを合法的して居るので、警察としては手出しが出来なかったのである。
流川鬼警部は浜田警部補から話を聞き、大枠では理解できた。あの太田黒清三のことがやることだから想像は付いた。
そして、浜田警部補にお礼を述べて、今後の協力もお願いして引き上げた。
大阪での捜査活動も最初なので少し疲れたので、、好きな酒でも飲んでからホテルへ戻ろうと思い、、酒どころを探そうと、夜の赤提灯街を歩いてみた。
秋も深まり、夜風が少しだけ肌寒く感じるようになったので、程よい暖かさの酒が恋しくなってきたのだった。
赤提灯がぼんやりと綺麗に見えた、小ぎれいな縄暖簾を潜り、入って行ったカウンターだけの中に一人の美人ママらしき女(ひと)が一人いた。
流川鬼警部は何となく「いい店だ、、大坂にいる間はここで呑もう」と決めて、カウンターに座った。そして、熱燗での日本酒を頼んだのであった。


15)流川鬼警部の強硬捜査

ビジネスホテルで目が覚めた流川京十郎警部は、ホテルで朝食をすませて、、太田黒清三の事務所に出かけた。。。
こせこせ、捜査するより本人に、まずは会ってやれと言う、、捨て身の戦法を執ったのであった。
金融業をしている「大阪天王寺興行(株)」の看板の出ている事務所に入って行き、、「ごめんよ、、太田黒清三会長はいるかな、、警視庁の流川京十郎が来たと伝えて欲しいんだが、、、」と、、受付の女子社員に告げた。
「はい、、分かりましたけど、太田黒会長は見えてません、、」と、、云われた。
そして、「太田黒会長は約束をしないと、こちらに、来ることはありませんが、、何か約束はありましたか、、」と、、聞かれた。
ガードが固く、しっかり太田黒清三は守られていたのである。
やはり、大阪の場合も太田黒清三は隠れて、陰の支配者になっていた。何とか、太田黒清三を引きづり出さないと、、、
なんか旨い餌を巻かないと駄目だと考えた流川鬼警部であった。
そんな時に情報屋の「鼠」を思い出した。
そして、早速連絡を取った、、暫くすると、情報屋の「鼠」から電話が入ったのであった。
丁度、「鼠」は京都に来ていたので、その晩に会う約束をした。
昨日、行ったばかりの赤提灯の「曙」を教えて、待ち合わせをしたのである。赤提灯街の灯りが真っ赤に燃えているような飲み屋街であった。
鼠は7時丁度に来てくれた、、流川鬼警部はカウンターの隅に座って待っていた。
「悪いな、、京都に来てる、お前を呼び出したりしてな、しかし、お前が頼りなんだよ、、」と、、言いながら、酒を勧めた。
「いえ、、いいですよ、、旦那には世話に成ってますからね、、こんな時にしか役に立ちませんで、、」と言いながら、、鼠はビールしか飲まないことを告げて、冷たいビールに変えてもらった。
「いいお店ですね、、、酒好きな旦那にはぴったりですよ、、」と、、挨拶をしてから本題にはいった。
鼠は流川警部とだけが分かるような話し方をしたのであった。
「旦那が知りたいのはあの有馬温泉の人でしょう、、やはり、消えましたか、、、そうですか、、、」と、、鼠は大阪の仲間を使って、探すことを約束してくれた。
「旦那、東京では若頭があんなことになったので、副若頭が頭になって、狙っていますよ、、しつこくね、、会長の件は引き受けましたけど、、気を付けてくださいよ、、」と、、鼠と1時間ぐらいは食事をしながら飲んだのだった。
鼠が帰った後、流川警部は一人で酒を呑んだ、寒い冬なので熱燗は五臓六腑に染み渡った。
他に客もいなかったので、、ママが話掛けて来た、ママの名前は砂由美と云った。
「はずれたら、ごめんなさいね、、お客さんは刑事さんですか、、」と、聞いてきたので、刑事では不味いかな、、と、、聞き返した。
「いえ、そんなことはありません、、心配しないでください」と、、言いながらお酌をしてくれた。
そして、美味しい料理を出してくるれので、嬉しくもあり、料理を楽しんでいる京十郎であった。
暫くは捜査で大坂にいるので、寄らせてもらいますと、、言って、その晩は大阪の冬の風を受けながら、ホテルに戻った。
そして、情報屋の鼠の連絡を待つことにしたのである。


16)情報屋「鼠」から連絡が、、、


流川鬼警部は楽しみに「鼠」からの連絡を待っていた、、その待ち合わせ場所が
赤提灯「曙」だった。しかし、待ち合わせ時間になっても「鼠」は来なかった。
代わりに来たのは、「鼠」の仲間で託を持って来てくれた。
「すいません、、流川さんですか、、、大室さん「鼠の本名だった」から、これを預かってきました、、」と、、メモ書きを渡された。
そして、、鼠がこれ無い理由を聞かされたのである、、太田黒一家に殺されたというのであった。太田黒清三会長の住処を聞きこんでいた時に、太田黒一家にその聞き込みがバレて、掴まり、誰に頼まれたかと、、拷問されたという噂ですが、確かな殺され方は分かりません、、と、言って、そのメモ書きを持ってきた男は帰って行った。
流川鬼警部は「くそ、、鼠すまんな、、勘弁してれ、、」と、、地団駄を踏んだ。
そして、、「鼠、仇は執るからな、、本当に済まなかった、、」と、、心の中で手を合わせた。「あの、太田黒の野郎、、必ず、しとめてやるぞ、、今にみていろよ、、」と、鼠の為の「弔い酒」を飲んだ。
流川鬼警部の目には「鬼の涙」が零れた。
「曙」の砂由美ママは無言で、酒を注いでくれた。その晩は黙って酒を呑んで、流川鬼警部は帰って行った、その夜の世風は冷たかった。人の世の儚さを知った夜の帰り道だった。


17)流川鬼警部の目に涙が、、

流川鬼警部は怒りに燃えた、、都合が悪ければ抹殺するという、太田黒清三のやり口にはどうにも我慢が出来なかった。今回の情報屋「鼠」の、死には悔し涙が溢れた。
彼は悪党ではあったが、「義」を弁えた子悪党だった。そして、流川鬼警部には協力もしてくれたし、考え方によっては「良き友」でもあった。
独りホテルに帰った流川鬼警部は、今回は自分のために、わざわざ、京都から,来なくてもよかった大阪で殺されてしまったのである、心から済まないと、手を合わせて謝り、祈った。
流川鬼警部は、もし仮に、この世に天国があったなら、「鼠」には成仏して欲しかったのである。
「ありがとう、、わが友よ、、」と、一人、涙したのであった。
」に誓ったのである。
太田黒清三に関する確かな情報源の一つが消えたのであった。
東京駅へ着いた,その脚で芝浦桟橋へ向かったのだった。そして、流れ者たちの溜まり場でもある「パラダイス」を訪ねた。
そして、元「暁会の幹部」の太田次郎のいる、事務所に顔を出した。
「あれ、、暫くですね、、旦那、元気でしたか、、、そう云えば鼠が大阪で殺されたってね、、噂が入って、、きましたよ、、太田黒会長に、、」
「そう何だよ、、実は俺が頼んだ件でな、、本当に済まないことをしてしまったよ、、」と、、言いながら、頼みがあって,お前のところに来たことを話した。
「そうですか、、まだ、太田黒会長には手をやいているみたいですね、、あの人は腹黒狸みたいだから、、大変ですよね、、」と,、同情してくれたのだった。
「兎に角、あいつは逃げ足が速くてな、、いつも、後手に回ってしまう、、この前、有馬温泉で会った時にケリをつけて置けばよかた、、」と、、後悔している流川鬼警部だった。
「旦那、、鼠と同じくらいに、悪知恵の回る情報屋を一人,紹介しますよ、、そいつは、あだ名がルパンという男ですが、、明日、来ますので、此処へ来てください、、」と言われた。
そして、次の日に決められた時刻に、流川鬼警部は太田次郎を訪ねたのである。
「旦那、この男がルパンですよ、、、名前は名乗りたがらないので、おいおい、聞いてください」と、、一人の小男を紹介してくれた。
「ただし、、このルパンは金をとりますよ、、それで寡黙だし、、いい仕事をしますから、、それは俺が保証します、、使って見てください、、料金も後払いで、納得しない情報なら払わなくても大丈夫ですので、、」と、、太田次郎は言ってくれた。
流川鬼警部は、太田黒清三の調査を依頼した、、連絡はルパンからの一方通行であった、、
始めは太田次郎が仲介をして、連絡を問いますから、信頼関係が出来たら直接の連絡をということになったのである。用心深い男だったので、逆に流川鬼警部は安心したのであった。
そして、流川鬼警部はパラダイスを出て、、警視庁にも寄らずにに大坂へ向かったのである。
今度こそは、太田黒清三を逃がさないぞと覚悟の上での大坂入りであった。


18)情報屋「ルパン」から連絡が、、、

流川鬼警部が大阪のホテルに着いた時だった、情報屋ルパンから電話が鳴り、太田黒清三の隠れ家が分かった、、神戸にある「六甲山の高級別荘地の一角」に城壁のような塀を巡らした屋敷に居たのだった。
その砦のような屋敷からは外には出ずに、指令を出していたのである。
そんな訳で消息は掴めなかったのだった。
その砦のような屋敷の前に立った、流川鬼警部は考えた、真正面から行っても出てこないだろうし、どうしたものかと、、、少しばかり困った。
太田黒清三も今度ばかりは逃げないで、屋敷で悠然と構えていることと思うのであった。
まさか、流川鬼警部が、自分の屋敷の前まで来ているとは夢にも思わないだろうと、、安心はしていた。
しかし、普通の警察官とは違うのであった。
泥棒の真似をしても、中に入ろうと考えていた流川鬼警部である。
太田黒清三のことだから、警備は固くしていると思われた。
しかし、何かある筈だと、様子を見ていて、今更、捜査令状を取ったところで間に合わない筈であり、、そんな情報は流れて、太田黒清三には逃げられるのであった。
そんな時に、出前が正門の脇にある、くぐり戸から入って行った。出前は寿司屋で、流川鬼警部はしっかり、寿司屋の名前を覚えた。そして、その寿司屋を訪ねた。
流川鬼警部はその寿司屋の大将に会い、事情を説明して、了解してもらった。最初は大事なお客なので出来ないと断られたのであるが、太田黒清三の素性を話し、とんでもない極悪人であることを、流川鬼警部は説明して納得してもらった。
彼の為に、どれだけの人が、、ただ,欲徳の為に殺されたかを話したのである。本来は捜査内容を話してはいけないのであったが、、そして、今回は自分が一人で、乗り込み、社会の悪人を退治することまで話したのであった。
寿司屋の大将も流川鬼警部の覚悟を聞いて、「分かりました、、いいでしょう、、おなたの男義に感じました、、、協力しましょう」と、言ってくれた。
「私が、失敗して、、太田黒清三の一派に殺された時には、大将、、あなたにも迷惑が掛かりますので、
その時は警視庁特捜班の江戸警視課長に連絡してください、、守ってくれますので、、本当に無理な頼み事で申し訳ありません。」と流川警部は大将に頭を下げた。
「いいですよ、、あなたも命がけで、国民の為に闘っているんですから、、頑張ってください」と、、言って、その寿司屋の出前用の車を貸してくれたのであった。
流川鬼警部は感謝し、、寿司屋の出前の半纏まで貸してもらって、すし皿の受け取りに出かけたのである。流川鬼警部は覚悟を決めていた、、半纏の下には防弾チョッキを付けて、彼得意の拳銃を隠した。
流川鬼警部も今度ばかりは問答無用の「極悪刑事」に成りきろうと、、、、


19)流川鬼刑事、決戦へ

流川鬼刑事は太田黒清三の堅固な城攻めを始める決意をして、出前のカラ皿を受け取りに太田黒邸の正門脇の潜り戸を叩いて、開けられた小門から中へ入った。
警護の者も不審に思わずに、流川鬼警部を入れてしまったのである。
その後は太田黒清三宅の裏口に廻り、、堂々と邸宅内に侵入して行き、、来ていた寿司屋の半纏を脱ぎ捨て、大声を出した。
「おーーい、、太田黒、、出て来い、、今から行くぞ、、覚悟しろよ、、」と、、怒鳴りながら奥へ進んだ。
途中から警護のやくざ連中が出たきたので、、、
流川鬼警部は出て来て、前を遮る奴らに片っ端から銃弾を撃ち込んでいった。情無用の銃殺であった。
騒ぎを知った太田黒清三は慌てて、、警護のやくざ達を叱咤しながら、大声を張り上げていた。
「馬鹿野郎、、何をもたもたしてるんだ、、相手は一人じゃないか、、早く、片付けろ、、みんなを集めて、撃ち殺せ、、」と、怒鳴り廻していた。
しかし、流川鬼警部の方が進入が早く、迎え撃つ、やくざ簾中の方が後手後手に回っていたのである。
「どけ、どけ、、邪魔するな、、お前ら雑魚には用がないんじゃ、、死にたくなかったら、どくんじゃ、、」と、叫びながら、拳銃を撃ち込み、やくざ達を片付けて行った。
そして、銃を構えた警護のやくざ達に守れた部屋に、流川鬼警部が入って行った、、一斉に鬼警部に銃弾が放たれたが、、同時に流川鬼警部も撃ち返した。
やくざ連中も全員倒れた、、流川鬼警部も撃たれた、、しかし、力を振り絞って、太田黒清三の前に立ち塞がったのである。
そして、、「太田黒、、今日はお前の命日だな、、死ねや、、」と言って、これでもかと銃弾を撃ち込んだ。
流川鬼警部は太田黒清三の最後を確認してから、床に膝まづいたのである、、
「やっと、、決着がついたな、、、少し、疲れたよ。。」と言いながら、撃たれた流川鬼警部も倒れた。
警視庁特捜部の江戸課長は大阪府警から連絡を受けて、飛んで来ていた。。江戸課長は特捜部の仲間を引き連れて、大阪府警の力を借りて乗り込んで行ったのであった。
そして、倒れた流川鬼警部に駆け寄り、、「しっかりしろ、、死ぬなよ、、京十郎、、こんなに撃たれやがって、、救急車呼んで有るからな、、死ぬなよ、、馬鹿野郎、、」と、、抱きげた。


20)誰を守る、、警察とは、、捜査とは、、、


流川鬼警部は倒れて、、救急車で運ばれた。運ばれる救急車の中には、江戸警視課長が付き添っていたのである。
「死ぬんじゃあ、無いぞ、、お前みたいな阿呆はいないよ、、いいか、、死ぬなよ、、」と、、祈りながら病院に着いた。
流川鬼警部には家族は居なかった、恋女房はいたが、やり過ぎた捜査の果てに、逮捕した犯人の家族の恨みをかって、殺されたのであった。その日から、彼の犯罪を犯した者への態度は変わった。
捜査態度も一変して、一人捜査が多くなったのである。
そして、犯罪者、特に権力者に対しては容赦なく対応していった。まるで、復讐者のような態度で、、誰の言うことも聞かなく、強引な捜査をして行くようになった。
しかし、、そんな捜査をする流川鬼警部を、陰ひなたで援護していた江戸警視課長であった。
組織第一にしている警察の中に、流川鬼警部のような、権力者に立ち向かう捜査官が居てもいいと、、思っていた江戸警視課長であった。
そんな意味でも、流川鬼警部には死んで欲しくはなかった、
警察がなんであるか、、国民の安全を守るために、誰にも出来ない、持つことの出来る「捜査権」があるのではないのか、、、
その捜査権を束縛したり、、抑止のために圧力をかけるような、警察であってはならない、、、そう、思い、信じていた江戸警視課長であった。
一人、手術室の前で、、待っていた時間は長かった。
手術室の赤い灯りが消えて、担当医師が出たきた、、そして、、
「命は取り留めました、、、凄いですな、、あれだけ撃たれて生きていることが不思議です、、」と、、江戸警視課長に告げた。
「よかった、、、本当に良かった」と、、呟いていたのである。