2019年 新規収蔵品ランキング 5-1位 | 郵便・切手から 時代を読み解く

郵便・切手から 時代を読み解く

切手コレクター必見! 経済評論家にして郵便・切手評論家でもある池田健三郎が、辛口トークと共に「ゆうびん」や「切手」を通じて時代を読み解きます。
単なる「切手あつめ」や「郵便物コレクション」とは次元の違う、奥深き大人のライフワークの醍醐味をお伝えします。

2019年もいよいよ大晦日を迎えました。
昨日に続いて、【2019年の収穫品ベスト10】の上位5件をご紹介して、本年のブログを締めくくることにします。
 
※このランキングは飽くまで個人的な思い入れによるもので、「入手して嬉しかった順」となっており、マテリアル自体を格付するものではありません。またランキングと取得価格は無関係です。
 
【第5位】 児童憲章記念切手貼 速達書状 昭和26年

昭和26(1951)年5月6日に徳島局から差立てられた、愛媛県郡中局あての速達書状です。この年の11月1日には郵便料金改正があり、書状は10円に、速達料は25円にそれぞれ値上げとなることから、この「児童憲章」(5月5日発行)の適正使用期間は半年足らずという短期間で終わりました。

 



【第4位】 初期の現金書留の速達使用例 昭和26年7月
現金書留制度は、従来の価格表記郵便制度を改めて(価格表記は書留にできなかった)、昭和26(1951)年6月1日にスタートし、このカバーは制度発足翌月の使用例です。「現金封筒」は昭和26年10月5日まで発売されないので、同年6月1日から10月4日までの間は、この使用例のように従来の「通貨保険扱」の官製封筒を流用していました。

 



【第3位】 クラッシュ・カバー: 紫雲丸搭載郵便物の事後逓送封筒(速達書留)
事故で沈没した紫雲丸に搭載されていた郵便物は引きあげられて高松郵便局において乾燥処理後、封書は個別に通信事務封筒に封入され、紫雲丸搭載郵便物である旨を記載した付箋をつけて書留速達郵便で名宛人に逓送されました。その時の外封筒の使用例です。



【第2位】 短期料金期間中の別配達・重量便書状 明治32年8月

明治32年8月の書留別配達書状で、計24銭分の切手が貼られています。料金は、書状12銭(4倍重量)・書留6銭・別配達6銭の計24銭です。差立ては備中・妹尾局 明治33年8月1日、到着印は備中・足守 明治33年8月2日で、岡山県内を即日配達されました。この料金は、明治32(1899)年4月1日から翌 明治33(1900)年9月末までの僅か18か月間だけに適用された「書状3銭・書留6銭」(計9銭)料金で、期間が極めて短いだけに、使用例の残存数が極端に少ないことで知られています。拙蒐にもこれで漸く3通目が加わることとなりました。



【第1位】 別配達料不足分貼り足し使用例 明治16年
郵便条例が明治16年1月1日に施行された際に、従来の「別仕立」は「市外別配達」と名前を変え、料金は書留料6銭に加えて「基本(市内)料金10銭(東京・京都・大阪)または6銭(それ以外)および18町毎に6銭追加」とされました。もっとも、差立て時に宛先地までの里程を正確に把握して料金徴収することは難しいため、最低料金分が貼付されていればよいものとされ、不足する差額は配達局がその分の切手を加貼して受取人から徴収することになっていました。その実例が画像のものです。

京都局では明治16年3月2日に20銭分(書状2銭+書留6銭+別配達12銭<市内分6銭+市外分18町まで6銭>)の切手を貼って差立てましたが、配達局である越前・高浜局からの距離は18町を超える遠さであったことから、高浜局は不足分差額6銭を貼り足して抹消し、受取人に届けたものです。因みにこれは、郵便条例施行から僅か2カ月後の使用例であり、市外別配達の最初期データと承知しています。

 


というわけで、今年は元号が改まったからというわけではないのでしょうが、ビジネス(本業)が近年稀にみる変化を伴う多忙な年となり、例年以上にマテリアル入手機会を逃して悔しい思いも致しましたが、幸い収友やディーラー、オークションハウスの皆様方のお蔭で、最終的には前年比でもほぼ遜色ない、まずまずの補強ができた一年でした。


コレクションの増強のみならず、今年一年、多くの皆様に、多方面においてお世話になりましたこと、誠にありがたく存じます。
また、本ブログのご愛読にも感謝いたします。
 
みなさまどうか良い新年をお迎えください。
 
池田健三郎