速達料金不足分の事後追徴の実例 | 郵便・切手から 時代を読み解く

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切手コレクター必見! 経済評論家にして郵便・切手評論家でもある池田健三郎が、辛口トークと共に「ゆうびん」や「切手」を通じて時代を読み解きます。
単なる「切手あつめ」や「郵便物コレクション」とは次元の違う、奥深き大人のライフワークの醍醐味をお伝えします。

2009年のブログで、速達料金を追徴した実例をご紹介しましたが、このたび7年半ぶりに同様の使用例を入手することができました。

 

この書状は、書留扱いの速達書状として、昭和16(1941)年7月29日に、大阪の東淀川三津屋局から徳島県三好郡三野町あてに差立てられましたが、その際、東淀川三津屋局では、書状料金4銭、書留料金10銭に加えて、速達料金8銭(郵便区市内)を徴収し、計22銭分の切手を貼って逓送しました。

 

ところが、宛先地である徳島県三好郡三野町は、「郵便区市外」に該当するため、速達料金は8銭ではなく30銭が正当でした。ということは、これは差立て局である、東淀川三津屋局が正当な料金を徴収しなかったことによるものです。

 

この書状は、配達局である徳島江口局に翌日(昭和16年7月30日)に到着し、これは速達郵便として東淀川三津屋局が引き受けてしまった郵便物なので、まずは大急ぎで受取人に配達されます。

 

しかし郵政当局としては、ルール上、速達料金の差額22銭を受取人から徴収しなければなりませんので、徳島江口局は、受取人からこの「外封筒」のみを回収して、ふたたび引受局である東淀川三津屋局に返戻し、そこで差出人から改めて差額22銭を徴収します。

 

その証に陽明門10銭と航研機12銭切手を貼って、傍らに「7月29日代用」と朱書きした上で、同局の8月1日の日付印で抹消して、めでたく業務が完了となりました。

 

因みに、これが差出人のミス(料金不足のままポストに投函したしまった等)であった場合には、このような対応がとられることはなく、単に「料金不足のため速達失効」となって普通郵便扱いで逓送されるだけです。

 

いずれにしてもこのような使用例は非常に例外的で、めったに市場に現れることはありませんが、郵便史的にとても興味深いものです。