「郵趣2月号」届く | 郵便・切手から 時代を読み解く

郵便・切手から 時代を読み解く

切手コレクター必見! 経済評論家にして郵便・切手評論家でもある池田健三郎が、辛口トークと共に「ゆうびん」や「切手」を通じて時代を読み解きます。
単なる「切手あつめ」や「郵便物コレクション」とは次元の違う、奥深き大人のライフワークの醍醐味をお伝えします。

公益財団法人日本郵趣協会(JPS)の機関誌「郵趣2月号」が届きました。

さっそく全体に目を通しましたが、中でも私自身が出品者として参加してきた、
マレーシア国際切手展のレポート(吉田敬さん執筆)はとくに興味深く拝読しました。
この記事には唯一、入賞コレクションのうちの1リーフが写真で掲載されており、
本誌が一応、郵趣誌であることを確認することができます。

同誌には他にも
「切手でたどるラインの流れとロマンチック街道」、
「東南アジアの内陸国を行く! ラオスの郵便局と切手商めぐり」、
「優雅な船の旅! バルト海&アドリア海で出会ったポスト」、
「切手の図案を巡る旅『信越』編(下)」
といったカラーページを惜しげもなく使った楽しい記事に加え、
(こちらはモノクロですが)
古沢保さんの「風景印★歴史散歩 古沢さんと愉快な仲間たち 上野~浅草編」、
ばばちえさんの「切手女子的ヨーロッパの旅」
という大変面白いコンテンツがあり、自分も旅をしている気分にさせられました。

ところで、上記の各記事はいずれも会員のみなさんによる寄稿であり、
すべて楽しさ溢れる読み物で大変結構なのですが、全体を読み通して
「肝腎のフィラテリー(郵趣)の記事はどこにあるの?」
という疑問が湧いた方もいらっしゃることでしょう。

というわけで、上記のいわゆる「旅もの」ないし「街歩きもの」の
記事の総ページ数を数えてみましたら、何と15ページもありました。
この雑誌全体のページ数が80ページで、これにはかなりの広告スペースが含まれますので、
概算で全体の2割以上を「旅もの」ないし「街歩きもの」が占めていることになります。

ちなみに、発行元であるJPSは、日本の郵趣組織のなかでは
「郵趣」の定義をもっとも狭く定義しており、その定款第3条では
「日本及び世界各国の郵便切手類の歴史及び郵便制度の研究(以下「郵趣」という。)」
としています(よって、トピカルやテーマティクは郵趣とは見做されないし、伝統郵趣家が当然と考えている「製造面の研究」なども埒外となる筋合いにある)。

つまりJPSにいわせれば郵趣とは「切手の歴史と郵便制度の研究」だけなのですから、当然、その機関誌にも「切手の歴史と郵便制度の研究」の記事があると思いきや、実態はまったく異なっています。

事実、今号に限らず、最近の機関誌には驚くべきことに、
「郵趣」に関するコンテンツが極めて少ないのが実情なのです。
仮に、上記のいわゆる「旅もの」ないし「街歩きもの」の記事を
「これも立派な郵趣だ」と主張するのならば、
今度はJPSの定款における郵趣の定義を変えなくては辻褄が合わないことになります。

それでいて、同誌75ページには
「郵趣を広く社会一般に普及啓発し、郵便切手文化を未来に継承する-目的を果たすため、さまざまな事業に取り組んできました」などとしつつも
「残念ながら10年以上前から続く“切手離れ”は止まることがなく、会員数の減少が協会財政に大きな影響を与えています」と謳われており、
いったいどのような方針に基づいて機関誌を発行しているのか、ますますその方向性が分からなくなっているように思われます。

まさか機関誌制作を委託している日本郵趣出版にコンテンツも丸投げ
などということはないと信じますが、
一会員としては、早期にJPSの事業方針と機関誌の内容の平仄を、
せめてもう少し合わせるようにしてほしいものですね。

このままだと、この雑誌は日本旅行協会の機関誌にしかみえませんので・・・。