古生物学者たちは、はるか昔の生物たちが、どのような生活をしていたのかを、化石からでもかなり理解できるようになりました。
例えば、同じ種のうち、子供の化石と、大人の化石が入手できれば、その種の成長の過程を追跡することができます。
しかし、そのような絶滅種は、すでに失われた存在であるため、実際に確かめることはできず、推測しかありません。
そして、古生物学者たちは、現生種と比較することによって、絶滅種について推測したりします。
しかし、現生種と絶滅種を比べることは簡単ではありません。
例えば、ティラノサウルスであれば、これと似た生物が現在存在していないため、
彼らがどのような生活をしていたのか推測することは非常に難しいのです。
彼らはどのように移動していたのでしょうか?
それを解決する1つの方法は、物理の考え方を化石に適用することです。
2002年に、カリフォルニア大学バークレー校のジョン・ハッチソンとマリアノ・ガルシアは、走っている動物についての生物力学的モデルを発明しました。
このモデルでは、ある大きさの筋肉が、どれだけの力を発揮することができるかを見積もることができます。
そして、このモデルの正確さはかなりのものです。
例えば、現生の動物を使って走る速さを推定してみると、実際のその動物の走る速度と一致したのです。
このモデルを使って、彼らがティラノサウルスの走る速度を推定した結果
ティラノサウルスはそれほど速くは走れなかったということが分かり、その速度は20キロ程度でした。
速い速度で走れるほどのエネルギーがなかったようです。
あれだけの巨体をもっているため、消費するエネルギーの量も相当なものです。
なので、普段はエネルギーの消費を抑えるために、あまり動かなかったのではないかと考えられており、
1日に行う食事の回数も1回程度で十分でした。
そのため、いつも腹を空かせていて、視界に入った生物を次々と襲うようなことはなかったのでしょう。
よって、私たちがティラノサウルスと遭遇しても、襲われる可能性は低く
仮に襲われたとしても逃げ切れる速度であるため、逃げ切ることは可能でしょう。
みなさんの思っていたティラノサウルスのイメージとは少し違っていたかもしれません。
少しガッカリされた方もいるかもしれません。
ときに科学とは残酷なものですね。
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参考文献
新設 恐竜学
著者:平山 兼
出版社:KANZEN
カラー図解 進化の教科書 第1巻 進化の歴史
著者:カール・ジンマー、ダグラス・J・エムレン
出版社:講談社