それは、死んだ後に、その体の臓器や心臓などをハゲワシやハイエナなどが食べてしまい、
その他の体の組織に関しても、昆虫や細菌、菌類などが分解し、基本的には何も残らないからです。
そして、これらの障壁を乗り越えたものだけが、化石として後世に残ることになります。
化石として残るためには、死んだ後に、その死体がすぐに堆積物によって覆われることが必要です。
そうすれば、他の生物に食べられたり、バラバラにされることを防ぐことができます。
そして、水のなかであれば、さらに化石として残る可能性が高まります。
化石は、乾燥や酸素、生物による影響で壊れやすくなりますが、
水のなかであれば、死体をバラバラにするような微生物が少なく、
乾燥や酸素にさらされる心配もありません。
このような環境があれば、普段は化石として残ることが珍しい、筋組織などの軟組織が化石として残ることもあります。
そのような化石をラガシュテッテンと呼びます。
ラガシュテッテンのような、微細な組織まで保存されている化石は、科学者の研究にはかなり役に立ちます。
そんなラガシュテッテンの1つに、バージェス頁岩があります。
それは、カナダのブリティッシュコロンビア州の山腹で発見されました。
この採石場では、93種類の動物の化石が合計で6万5000点以上も産出しています。
この場所には、もともと礁があり、その外側は急な斜面になっていました。
そのため、ときどき泥が崩れ、生物を深い場所へと押し流し、
その結果、ほとんど酸素が存在しない深海で、体が分解されることなく、保存されたのです。
そして、このように泥が崩れることは、たびたび起こり、そのたびに化石に富んだ岩石が厚くなっていきました。
その繰り返しによって、この場所は現在、化石が大量に発掘される場所となったのです。
このような場所は、バージェス頁岩の他にも、いくつか確認されています。
そこには、今でも、はるか昔に失われた生物たちの物語の一部が詰まっているのです。
参考文献
進化の教科書
著者:カール・ジンマー
出版社:講談社