前編は此方


今回は前回に引き続き、大井川鐵道の紹介です。今回は大井川鐵道で活躍する車両に目を向けていきます。


現在、大井川鐵道には元東急電鉄の車両、元南海電鉄の車両、元近鉄の車両が在籍しているほか、臨時で運転される急行列車用として、前回紹介した元国鉄の旧型客車も多数在籍しています。また、普段は新金谷駅で留置(放置?)されていますが、西武鉄道を走っていた旧型電車を改造して作られたお座敷列車用の客車も在籍しています。そして、これらの旧型客車の牽引機として、国鉄で使用されていた蒸気機関車が5台在籍しているほか、補助用の電気機関車として、大井川鐵道生え抜きの車両が2台、元西武鉄道の車両が3台、元住友大阪セメントの車両が1台の計5台が在籍しています。


尚、2022年5月現在、蒸気機関車は5台中4台が修理や検査中の他、電気機関車は元住友大阪セメントの車両が検査中のため、これら車両については運休となっています。


蒸気機関車は小型のタンク式機関車はC10 8号機、C11 190号機、C11 227号機が在籍しています。また、大型のテンダー式機関車は、C56 44号機が在籍しています。なお、現在はC11 190号機のみが稼働しています。この車両は国鉄時代にお召し列車として天皇陛下を乗せた列車を牽引した経歴があり、特別仕様車となっています。現在は青く塗られたトー◯ス仕様となっています。丁度僕が行った日はトー◯ス号の運転日で、乗車こそしませんでしたが動いているところを見る事が出来ました。人面機関車は流石に気持ち悪いので写真は撮りませんでしたが、目の前を通る迫力には圧倒されました。東武鉄道でもほぼ毎日蒸気機関車を走らせているので乗りに行こうかなぁ。


C10 8号機は大井川鐵道では最も古い車両で、静態保存含め現存する唯一のC10形という貴重な車両です。製造年はなんと昭和5年で既に90歳を迎えています。現在は大規模修繕のためボイラーが外され、新金谷の車庫で分解されているようです。順調に行けば近い内に復活するものと思われます。


C56 44号機も面白い経歴を持っており、戦時中は遠く離れたタイで運転されていた車両です。この車両は運良く日本に里帰りを果たし、今日に至る訳です。現在は整備待ちで運用を離脱しており、赤く塗られたジェー◯ス(トー◯スの仲間の機関車)仕様のまま千頭駅に展示されています。


そして、もう一台のC11形であるC11 227号機は今回は見る事が出来ませんでしたが、故障により運用を外れているとの事です。


大井川鐵道の蒸気機関車はこの他に、C12 164号機も在籍していますが、この車両は老朽化のため長らく運用を外れており、現在は新金谷駅付近の転車台に留置(静態保存?)されています。数年前に動態復元の話も出たようですが、費用面からか今の所は何も動きがありません。大井川鐵道のホームページの車両紹介のページには所有車両(休車中)として掲載されているため大井川鐵道では恐らく現在も在籍扱いになっているものと思われます。


また、つい先日、今後の動態復元機としてC56 135が搬入されました。長い間屋外で放置されていたためかなり傷んだ外観ですが、今後の復元に期待です。


続いて、大井川鐵道の電気機関車を見ていきましょう。先ずはE10形です。この車両は1949年に製造された車両で、製造されてから今日に至るまでずっと大井川鐵道で活躍してきました。車両前後にデッキを持った旧型電気機関車は現在では数を減らしており、これも貴重な存在です。現在はE101、E102の2両が在籍しています。以前はE103も在籍していましたが、他の2両と構造が異なっており、保守面で支障があったため、現在は廃車されています。

Nikon F3  Nikkor-S Auto 5.8cm f=1.4  千頭駅にて

この日はE101号がトー◯ス号の補機として運用されていました。SL列車を後ろから押し上げる役割です。7両編成の客車に連結されている姿は圧巻です。


次は、大井川鐵道では最も新しい電気機関車のE31形です。この車両は昭和61(1986)年に全部で4両製造されたもので、嘗て西武鉄道で活躍してきた車両です。現在は西武鉄道での運用は終了し、4両中3両が大井川鐵道で第二の人生を送っています。

Nikon F3 Nikkor-S Auto 35mm f=2.8  千頭駅にて

JR貨物のEF65形やEF81形を彷彿とさせる前面形状の機関車。この日の急行かわね路号の牽引機はE34号でした。大井川鐵道では他にE32、E33も在籍しています。因みに、トップナンバーのE31号は大井川鐵道へ移籍はせず、故郷の西武鉄道にて静態保存されています。


そして、ED501形です。この車両は1956年に製造されたもので、嘗て住友大阪セメントでいぶき501号として活躍していた車両です。以前はED502号も在籍していましたが、老朽化のため廃車となっています。現在、ED501号は検査のため運用を外れており、数年前から一部の部品が外され、車体は補修中の状態で新金谷の車庫に留置(半ば放置?)されています。新金谷駅へ向かう列車の車中からも中途半端な状態で放置されているED501号を見る事が出来ました。一応検査中なので流石に廃車される事は無いとは思いますがいつになったら運用復帰出来るのでしょうか?


ここからは大井川鐵道で活躍する様々な電車を写真付きで紹介していきます。蒸気機関車や電気機関車、旧型客車ばかり目がいきがちですが、どの電車も昭和の時代に作られたレトロなものです。これまた昔懐かしいフィルムカメラで撮影した写真については使用機材も記載しています。


Nikon F3  Nikkor-S Auto 5.8cm f=1.4  千頭駅にて

先ずはこの車両。此方は元南海電車の21000系です。大井川鐵道の電車の中では最古参の車両で、現在は2両編成が2本在籍しています。製造年は昭和33(1958)年で、なんと東京タワーと同級生です。写真の編成は検査を終えたばかりなので足回りが綺麗に塗装されています。


Nikon F3  Nikkor-S Auto 5.8cm f=1.4  千頭駅にて

台車付近が分かるように車体の横から撮影しました。今では珍しくなったコイルバネ台車を履いていますが、とても丁寧に整備されていますね。


この車両の銘板は運転室の直ぐ後ろに有ります。此方はもう一方の編成のものです。昭和33年に製造された事がはっきりと分かります。


僕は今回この車両に金谷駅から新金谷駅までの一区間のみ乗車しました。車内には赤い色をした転換クロスシートが並んでいます。古い車両ですが、クッションが効いていて座り心地は悪くはなかったです。


 Nikon F3  Nikkor-S Auto 5.8cm f=1.4  千頭駅にて

続いては此方。これは近鉄で走っていた16000系です。南海21000系よりは後に作られた車両ですが廃車が進み、現在では写真に写っている編成のみが現役です。この編成も引退が近いのか車体は所々塗装が禿げており痛々しい外観です。近鉄時代は主に特急列車として使用されていたため、豪華なクロスシートを備えています。そのため、この車両が充当されるとかなり得をした気分になります。



Nikon F3  Nikkor-S Auto 35mm f=2.8

21000系との並び。新金谷駅にて。

此方は元東急電鉄の7200系。昭和43(1968)年に製造された車両で、大井川鐵道には2両が在籍しています。この車両は東急電鉄で引退した後、東北地方の十和田観光鉄道へ移籍したものの、同線が廃線となってしまったため大井川鐵道へ第3の人生として移籍してくるという変わった経歴の持ち主です。東急電鉄では一部の車両が改造を受け、2015年頃まで活躍していたため、東急電鉄をよく利用する方にとっては懐かしい車両なのではないでしょうか?

因みに、此方の車両は十和田観光鉄道移籍時に1両だけでも運転が出来るよう、運転台を増設する改造が行われています。大井川鐵道鐵道では基本的に2両1編成での運転となっているため1両のみで運転する事は殆ど有りませんが、十和田観光鉄道在籍時の名残として、車両の両端部の形状が異なっています。なお、写真はオリジナルの先頭部側です。


また、新金谷駅の車庫では元南海電鉄の6000系が整備を受けていました。関東の方にとっては馴染みの薄いこの車両は大井川鐵道が新たに導入する車両で、製造からは既に50年以上が経過しています。本格的に導入されると恐らく近鉄の車両を置き換えるものと思われます。車両の整備は殆ど完了しているようで、あとは試運転を待つのみといった所で、コルゲートを持つステンレスの車体が美しく輝いていました。


そして、導入予定の客車として、元JR西日本の12系客車も新金谷駅に留置されています。この車両は嘗てSLやまぐち号で使用されていた車両で、通常の12系とは異なった外観をしているのが特徴です。大井川鐵道には旧型客車への負担を減らす目的でやってきました。しかし、諸事情により現在になっても一向に整備される様子は無く、新金谷駅で放置され続けています。(一説によると、部品の盗難に遭ったらしく、運転出来るような状態ではないとか。)いずれにせよ、車体は長年の放置の結果、ボロボロになっており、一刻も早い整備が望まれる所です。

Nikon F3  Nikkor-S Auto 5.8cm f=1.4  新金谷駅にて

21000系の隣に写っている茶色の車両が旧型客車よりもボロボロな12系客車。状態はかなり悪く、腐食により車体には穴が開いてしまっています。今後再び乗客を乗せて線路を走る事は果たしてあるのでしょうか?


このように、大井川鐵道では他社から譲り受けた古い車両を今でも大切に走らせています。地方の小さな鉄道会社なので残念ながら費用面により整備も追いついていない部分も見られますしこれらの古い車両達がいつまで走り続ける事が出来るかも分かりません。製造から既に70年以上が経過した車両も多く在籍しています。これらの車両は恐らく補修用部品の入手も難しい筈です。いつ車両の寿命が来てもおかしくないでしょう。しかし、鉄道マニアの方や僕の様な鉄道マニアでは無いがレトロな雰囲気に惹かれたといった方など様々な人達が実際に足を運び、こういった列車に乗る事によって今後も大井川鐵道の貴重な車両が少しでも長く走り続けられる事に繋がると思います。


大井川鐵道の車両紹介ページは此方


P.S.今回は千頭駅より先を走る山岳路線の井川線には乗りませんでした。井川線もまた日本では珍しいアプト式鉄道を採用している貴重な路線なので今後機会があればそちらにも足を延ばしてみたいです。