6回目の月命日 | 余命3ヶ月だったバンドマン

余命3ヶ月だったバンドマン

Candy Vox Music 統括とLa'cryma Christi LEVINさんのローディー ケンツのBlog

ケンツが旅立ってから早半年。

 

あの頃と打って変わって季節は夏。

食欲が無い時でも、土用の丑の日には毎回大好物のうなぎを食べた。

自分を奮い立たせるような時にも食べていたと思う。

「地元の一番人気店らしい」

調べて行ったこともあった。

気持ち悪いということもあったので、

「あっさりしたものの方が良いんじゃ無いの?」

という問いに

「食欲が無くても好きなものなら頑張って食べれる」

そう答えたケンツは心底強いと思った。

 

 

1年前は痛みと闘っていた。

痛みで食べられないのか、吐き気で食べられないのか、いつからそうなったのか……

 

 

夏は幸い、ケンツの大好きなスイカや梨が出るのでフルーツを食事とすることが多かった。

実家で採れたスイカを貰って来たり、

千葉の特産の梨は毎年直売所に何度も買いに行く程だった。

 

 

抗がん剤を始めたら、食べられなくて痩せてしまう……

そんな予想を裏切り、ケンツは太った。

本人曰く、

「抗がん剤に食欲が出るのが入っている」

とのこと。

ただ、最後の1年程は、本当に努力して根気で食べていたと思うけれど——。

 

 

最初の頃は、がんに効果があるとされる食べ物や、バランスや……と考えていた。

しかし、治療を始めると、

「副作用で食べられる期間が限られるから好きなものを食べたい」

と言われた。

確かに、良いとされるものを嫌々食べてストレスを感じるより

好きなものを食べる方が良いのかもしれない。

とは言え、やはり心配なもの。

スープや野菜ジュース、豆乳などを提案すると頑張って取り入れてくれた。

あとは、意識させない程度に摂取させた。

 

そんなケンツだから、食事療法を拒否されるのは目に見えていたけれど、

これならと

「スイカ糖っていうのを目にしたんだけど、やってみても良い?」

勿論、NO。

そもそも好んで食べている訳だしと思い直した。


 

食べることが大好きだったケンツ。

皮肉にも若かったこと、そして体力があったこと、体質的なこと、

たぶん色々恵まれた条件というか偶然はあったと思う。

 

正解なんていうものはわからない。

けれど、ケンツが決めたことなのだから、私たちにとっては正解だったのだと思う。

 

体力を急激に落とすこともなく、治療を続けられたということが事実——。