15年目のスーパーインディー――FREEDOMS、いざ横浜狂宴へ | KEN筆.txt

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鈴木健.txtブログ――プロレス、音楽、演劇、映画等の表現ジャンルについて伝えたいこと

BGM:Yellow Magic Orchestra『Mad Pierrot』

 

2009年9月2日、新木場1stRINGにて旗揚げ戦をおこなったプロレスリングFREEDOMSの15周年記念大会が9月15日、横浜武道館にて開催される。それに先立ちファン参加の形で1日、武道館と同じ関内にある「Party & Wedding GRACE BALI」で記念パーティーが催された。

 

▲テーブルに置かれたシングル、ジュニア、タッグとKING of FREEDOM WORLD王座4本のベルト、いずれも15年前の旗揚げ時にはなかったものだ

 

参加者は選手との写真撮り放題&サインもらい放題で、パーティー内で開かれる横浜武道館大会全カード発表公開記者会見で質問もできるというもの。試合会場内とは一味違ったドレスアップした選手との交流を楽しんだ。思えば15年前、FREEDOMSは前身のアパッチプロレス軍における不祥事を起因に設立されるという、ネガティブな理由から始まった団体だった。

 

「当時の僕は大日本プロレスにレギュラー参戦していたんで、アパッチが解散となった時に自分や葛西はこのまま呼んでもらえるかもしれないけど、ほかの選手たちはレギュラー参戦している団体がなかったんで、彼らの活躍の場をキープするには旗揚げするしかないという思いしかなかったです。もうひとつ大きかったのは、アパッチに所属していたHi69が試合中に背骨を折って2年以上も欠場を続けていて、その間に自分の団体がなくなって復帰した時に上がるリングがないなんてなったら、あんまりな話じゃないですか。マンモス(佐々木)も車で当てられて頸椎をやって1年ぐらい休んでいて、その2人が帰ってくる場所をなんとかしたいという思いもありました」

 

2016年8月、自身の20周年を迎えたタイミングでおこなったインタビューにて、佐々木貴代表はFREEDOMS設立の動機をそう語っていた。パソコンの電源の入れ方さえ知らなかった自分が団体経営者となり、試行錯誤を繰り返しながらもリング上は選手たちの自由にやらせる姿勢を続けるうちに一人、また一人とフリーダムな者たちが集まってきた。

 

▲パーティーの司会進行を誰かに頼んでおいたそうだが、なんらかの手違いにより来なかったため団体の代表自らがパーティーと公開記者会見の進行を務めた

 

それはこの日のパーティーに出席した選手の人数に表れている。正岡大介や伊東優作、最上九のように天候事情、試合のスケジュールで欠席した選手もいたから、実際に横浜武道館へ出場する選手はもっと多い。新木場からスタートし、後楽園ホールへ初進出するまで9ヵ月かかった。その後も、いつの日か大会場でビッグマッチを!の目標を追い続け、2022年5月3日に横浜武道館へ初進出(横浜文化体育館があった時は開催にいたらず)。現在の所属選手は10人ほどだが、裏を返せば他団体、フリーランスの選手が多く集まるほどの求心力を団体として誇っていることになる。

 

「所属でもない自分のためにみんながバックアップしてくれて…その恩を僕はまだ返していないですから、横浜武道館のメインをしっかり務めることでまだまだ少しだけですけど、その恩を返したい。そんな気持ちで臨みます」

 

前日、闘道館におけるトークイベントで竹田誠志はそのように語っていた。2022年、なんの前触れもなく訪れた不幸に打ちひしがれ、リングを離れている間もFREEDOMSは支援グッズを販売し、その売り上げを渡してくれた。常々、佐々木代表は「ウチは所属とフリーの違いが感覚的にもないんです」と言っている。フリーの選手であっても、このリング上でFREEDOMSを体現しているプロレスラーは仲間以外の何ものでもないのだろう。

 

▲選手とファンだけでなく、選手同士も撮影しまくり。GENさんのファッションは地元の顔役にしか見えなかった

 

14年前の2010年6月21日、初の後楽園ホール大会のメインがどんなカードだったか憶えているだろうか。FREEDOMS軍と小鹿軍団によるシングル5対5対抗戦がおこなわれ、大将戦はGENTAROとグレート小鹿の一騎打ちだった。当時、68歳だった小鹿さんを相手にGENTAROは19分10秒のレスリング勝負を成立させた。それ以外にも副将戦では佐々木がザ・グレート・サスケに勝利、TAJIRIやバラモン兄弟、小笠原和彦先生、矢野啓太、さらには葛西純との一騎打ちでネクロブッチャーも登場するなど、まさにカオスなリングとなった。

 

この時の独特な熱気とごった煮的風景、その上でプロレスならではのカタルシスを提供する空間を体感し浮かんできたのが“スーパーインディー”だった。言うまでもなくそれは、金村キンタローが新生FMW時代に他のインディペンデントと差別化するために掲げたワードである。

 

その金村と袂を分かつ形で設立された団体を、そう表現するのは適切ではなかったかもしれないが、インディペンデント=独立プロモーション本来の意味である「メジャーがやらない自由さ」こそが、FREEDOMSの方向性だと確信したので使った。

 

 

あれから月日を重ね、会社として規模を広げ層も厚くなり、何よりもファンに支持される選手たちが増えた現在も、FREEDOMSは14年前の後楽園で見たスーパーインディーとしての方向性を進んでいる。令和のこの時代、もはやプロレス界においてメジャーとインディーの違いを意識したり、価値を見いだしたりする見方は形骸化しつつあるが、それでもそこに魅力を感じずにはいられないのだ。

 

そんなことを思い起こしながら、会見を取材した。

 

▲乾杯の音頭は葛西純。15年にわたり団体をけん引し続けてきた

 

▼Death natch Love Chapter第2章~セルフボードタッグデスマッチ

葛西純&正岡大介vsアブドーラ・小林&若松大樹

 

昨年の8・12横浜武道館(葛西&エル・デスペラードvs竹田&山下りな)に続き、デスマッチ愛を語り合える相手として葛西が若松を指名したところ、そのパートナーとして登場したのが会場から徒歩圏内で酒場を経営しているアブ小プロ。「……おまえ、ほかにいなかったのか?」と若松に不満をぶつける葛西だったが、若松を指名した時点でこうなるのは「でしょうね」案件。

 

「デスペラード級のサプライズだろ!」と言い張るアブ小プロ本人に「いいからとにかく当日まで節制して来い。本当に置いてくからな」と葛西。置いていかれたら、その分の負担を若松が背負うことになるが、そこは慣れているだろう。とにもかくにも、大日本時代の先輩と後輩がデスマッチ愛を語り合う試合となる。

 

 

▼オープニング6人タッグマッチ

ドラゴン・リブレ&拳剛&レッカvs政岡純&ガイア・ホックス&川島真織

 

川島はSecret Baseからの参戦。もっともF-SWAGの2人としては、自分たちだけで十分といったコメントで、眼中にあるのは拳剛のみとのこと。唯一の所属でありながらリブレはコケにされる形となったが、ここは1年前の横浜武道館で高橋ヒロムに味わわされた悔しさを今一度思い起こして、存在感を見せてほしい。

 

 

▼ハードコア6人タッグマッチ

山下りな&藤田ミノル&伊東優作vsVENY&佐久田俊行&最上九

 

E.R.Eとチームを組むパートナーとして佐久田が呼び込んだのはVENY。妖艶な姿に「ヒュー!」といった声が飛ぶ。それに対し、山下は香港マダムのようなファッション、藤田はその場にあった銅鑼を鳴らしまくる一人騒乱罪(プロレスの会見で銅鑼を導入したのたぶん史上初)。

 

 

藤田は「VENYさん、こっちがいいですよ!」と闘うより組みたい様子。代わりに山下を佐久田の方へいかせようとするが「VENYさん、あんな下品なやつらと一緒にならない方がいいですよ!」と佐久田もけっこうな言い草。かつてDDTのリングで彰人と蛍光灯一本デスマッチで名勝負を残したVENYだけに、ハードコア戦でも独自のセンスを発揮することに期待。

 

 

▼裸足王タッグ選手権試合

<王者組>バラモンシュウ&バラモンケイvs植木嵩行&八須拳太郎

 

8・29後楽園の5WAY裸足マッチでご兄弟2人が勝っため、その場でベルトが2つに切られシングルからタッグ王座に変わった裸足王。これによりご兄弟は“初代”として認定された模様。裸足プロレスの第一人者として段ボール製のベルトを獲り戻したい植木は、その意気込みを表すかのように「公開秘密特訓」へと臨む。

 

 

このいでたちで大きなバッグを壇上へ持ち込んだ時点では田舎からやってきた行商人のようだったが、中から健康足つぼマットを取り出すとその上で裸足になり(ついでに裸にも)、縄跳びで二重跳びを披露するという。ところが、いざやってみると一度も跳べぬまま足つぼマットの上で固まってしまった。そこへドヤドヤと入ってきたのがご兄弟。

 

 

悶絶する植木に「パートナーはいるのかよ!」と突っ込むと、VTRに登場したのは“胸毛ニキ”の異名をほしいままにする男・八須拳太郎。バラモン兄弟の向こうを張って、胸毛兄弟として挑戦するのだ。「俺は普段から裸足で闘ってんだ、画鋲でもなんでも俺には通用しねえ。おまえらを胸毛の海に沈めてやるよ!」とうそぶく八須に、植木もドヤ顔。横浜武道館は画鋲使用禁止だが、それ以外も通用しないと剛毛…いや、豪語しているのだから大丈夫なのだろう。

 

これまで数々の相手にバラモンの裁きを与えてきたご兄弟だが、横浜では胸毛の裁きを受けてしまうのか。なお、この裸足王に関しては聞きたいことが山ほどあったのだが(あれほど嫌がられていたスタイルにもかかわらず、先日の5WAY戦を見ての通り競技人口が着実に増えてきている状況を植木巡査はどう思っているか等)会見時間が押しているのと必要以上の情報量を理由に、この試合だけ質疑応答を端折られてしまった。無念だ。

 

 

▼KFCジュニアヘビー級選手権試合

<王者>香取貴大vs進祐哉

 

若いチャンピオンの指名で挑戦することになった進は、情念をドロつかせる香取に対しクールかつはぐらかすような態度に終始。香取からすればFREEDOMSだけでなく天龍プロジェクトで10ヵ月間、インターナショナルジュニアヘビー級王者として君臨してきた進の姿を至近距離から見てきただけに、その存在を超えなければとの思いは強いはずだ。

 

 

▼平田智也復帰戦6人タッグマッチ

平田智也&マンモス佐々木&GENTAROvs関本大介&高岩竜一&HAKKA

 

昨年の横浜武道館メイン開始直後に場外で左足首を骨折し無念のKFC王座転落となった平田が、1年1ヵ月ぶりに因縁の会場で復帰。対戦相手である高岩&HAKKAのパートナーとして呼び込まれたのは関本だった。平田と関本の対戦はもちろん楽しみだが、かつて大日本でしのぎを削った時期があるマンモスと関本が久々に肌を合わせるのも興味深い。

 

登壇する時点ですっかりデキ上がっていたGENTAROは、平田が復帰に向けての意気込みを語る間もいい調子。一方、相手側の高岩はマイクが回ってくるとやおら「マッケンロー高岩です」と自己紹介。その場にいる全員の頭に「?」が浮かんだが、要は負傷箇所の左足をマッケンローで狙うということを言いたかったようだ。

 

 

▼KFCタッグ選手権試合

<王者組>ビオレント・ジャック&吹本賢児vs佐々木貴&YAMATO<挑戦者組>

 

杉浦とのKFC王座挑戦者決定戦に敗れ、横浜武道館メインへの道が断たれた佐々木だったが、その日がちょうどデビュー戦の日(1996年9月15日、vsトーカイブシドーX)ということでどうしてもベルトに絡みたいとわがままを通し、タッグ王座に挑戦することに。そして、そのパートナーとしてVTRを通じ紹介されたのは、ドラゴンゲートの現オープン・ザ・ドリームゲート王者・YAMATO。一関市出身の同郷タッグとなるが、2人は過去に一度だけ組んでいる(2023年9月10日、ドラゴンゲート一関ユードーム、YAMATO&佐々木&菊田円vsジェイソン・リー&Kzy&ストロングマシーン・J)。

「いつかYAMATOと組んで、やろうとずっと言っていました」と佐々木。まさに、切り札中の切り札的なタッグパートナーとなる。言うまでもなくジャックとYAMATOの対戦は注目だが、FREEDOMSへ漂着するまでは関西のドインディー畑をさまよい歩いていた吹本が、同じ関西圏では高根の花的存在といえるドラゴンゲートの現王者のチャレンジをチャピオンとして迎え撃つのも、エモーショナルだ。

 

 

▼KING of FREEDOM WORLD CHAMPIONSHIP

<王者>竹田誠志vs杉浦透<挑戦者>

 

席上、杉浦からこのタイトルマッチの試合形式が「Beyond the past“15th ANNIVERSARY”ブラッドヒストリーウェポンデスマッチ」と発表された。「15周年の中で出てきたいろんな武器、アイテムを振り返りながら闘っていこうという気持ちを乗せました。サブタイトルは『過去を超えて』という意味。僕たちの闘いでこの15年を超えていきたいと思っている」。アイテムに関しては、会場制限内でそれぞれが考えて用意するとのこと。前日のトークイベントでも言っていたが、竹田は杉浦が若手時代にこっぴどく怒られた宮本裕向をアイテムとして導入することも視野に入れていると明かした。当日、宮本のスケジュールが空いていれば、本当に登場する可能性もある。

 

これまで4度の防衛に成功してきた竹田は、一話ごとの物語性の強い作品を描くような闘いでKFC史上もっともソウルフルな王者像を築いてきた。中でも7月の防衛戦は、杉浦が名古屋時代から時間を共有してきた伊東が狂い咲きした一戦だった。それだけに、このタイトル戦へ臨むにあたってなんらかの影響を受けたはずだ。

 

「竹田誠志の防衛戦を見てきて、僕がやっているデスマッチとはベクトルが少し違うのかなと。本当にイカれていますし。後輩の優作があれだけ追い込んで心を動かされる試合でしたけど、その時は優作頑張れ!と応援しても、今から頑張らなきゃいけないのは僕なので」

 

 

以上、全8試合も決定しあとは9・15横浜武道館を迎えるのみ。パーティーの後半は翌2日に誕生日を迎える拳剛をみんなでお祝いし、締めは出席した選手たちが壇上で記念撮影。最後まで選手たちが帰り客を見送った。

 

 

ちなみに当日は、サムライTVで生中継もある。FREEDOMS年間最大のビッグマッチを生で語るのは、実況担当の塩野潤二さんともどもいつか実現させたいと夢見ていたこと。FREEDOMSのデスマッチはライブで発露する言葉に勝るものはないというのが、我々共通の思いだったからだ。


それが、3度目の横浜武道館でかなう。実況席から狂宴に参加させていただきます。

 

9・15横浜武道館を296倍楽しむための前夜祭イベント!

葛西純&山下りなが全カードの見どころ&勝敗予想を語る

 


闘道館presents「鈴木健.txt対決シリーズSeason5 Vol.55~FREEDOMS9・15横浜武道館月間②葛西純&山下りな狂宴前夜祭」
★9月13日(金)巣鴨・闘道館(18:30開場/19:00開始)
〔出演〕葛西純(プロレスリングFREEDOMS)、山下りな(GCWウルトラバイオレント王者)
〔進行〕鈴木健.txt
〔入場料金〕前売り4000円、当日4500円
〔プレミアムツーショット撮影権〕1000円
〔内容〕
開演前:鈴木健.txt余興演奏
第1部:葛西純×山下りなハードコアトーク
休憩時間後、プレミアムスリーショット撮影会
第2部:2人によるFREEDOMS9・15横浜武道館全カード見どころ解説
〔申し込み・問い合わせ〕闘道館(TEL03-5944-5588/info@toudoukan.com)もしくは鈴木健.txtメールアドレス kenpitsu.txt@gmail.com まで①イベント名②氏名③当日連絡がとれる電話番号④申し込み人数⑤イベントを知った経緯⑥今後、対決シリーズに出演してほしい選手・関係者をお伝えください
〔諸注意〕参加費をお支払いいただいた順に整理券をお配りいたします(店頭で現金のみの精算)。開場時間に整理番号順にてご案内させていただきます。整理券購入後のキャンセルはお受けいたしかねます