「ローカルプロレスラー図鑑2015」発刊はファンによる草の根運動 | KEN筆.txt

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鈴木健.txtブログ――プロレス、音楽、演劇、映画等の表現ジャンルについて伝えたいこと

当コラムでも貴重な画像を無条件で提供していただき、スポルティーバアリーナを中心とした名古屋におけるプロレスの活動を克明にリポートするサイト「たこ焼きマシン.com」のウェブマスター・たこ焼きマシンさんが「ローカルプロレスラー図鑑2015」の発行を目的としたプロジェクトを起ち上げました。プロレスラーの写真名鑑は、日本唯一の週刊専門誌である『週刊プロレス』(ベースボール・マガジン社)が90年代から欠かさず編集・発刊しています。

 



基本は12月に本誌の中綴じ付録として、顔写真入りのプロフィルデータが掲載されます。そのあと、全身ポーズ写真を使った別冊として改めて発刊。前者がモノクロに対し、こちらはカラーのためヴィジュアル重視なファンの間でニーズがあるようです。

ただ、いずれにも共通するのはページ数という限界があるため、日本に存在するすべてのプロレスラーが載っているわけではありません。新日本プロレス、全日本プロレスといった老舗団体に始まりプロレスリングNOAH、現在人気の高いドラゴンゲート、DDTといった主要どころは揃っていますが、それでも500人強を集めるのが限度。地方で地域密着型の活動をする団体の所属選手の場合、東京の大きな団体へ定期的に参戦でもしないかぎりは、掲載されるのは難しいのが現状です。

「あの選手は載っているのに、なぜこの選手は載らないんだ?」といった声が出るのは毎年のこと。作る側としてはひとりでも多くデータを揃えたいのは山々ですが、紙媒体はネットと違って無限ではないのです。

そんな中、マスコミが不可能であるなら自分たちで名鑑を作れないかと、たこ焼きさんは考えました。じつはスポルティーバエンターテイメントの斉藤涼会長も、同じ団体に所属しながら載る選手と載らない選手がいる実情をなんとかしたいと思っていたひとり。ただし、膨大なデータと画像を集め、それを編集し一冊の本にするまでは時間と労力を要します。

よほどの覚悟がなければできませんし、何よりも現実問題として制作費をどうするかを考えなければならない。そこで、たこ焼きさんはクラウドファンディングによる支援を集め、それを編集・発行の資金にする方法を採りました。つまり、同じように名鑑には載らない全国のローカルプロレスラーたちのデータを集めた一冊を欲している皆さんへそれを提供する代わりに、ファンドによるサポートをしてもらうわけです。

サポートする側としては、たこ焼きさんが作った名鑑を購入する感覚で金銭的な力になれます。こうして2月下旬にクラウドファンディングのページとプロジェクトの内容を発表するや全国から賛同の声が集まり、予想を遥かに上回るペースで目標金額を超えたため発刊が決定。申し込み締切の3月31日が近づいてきた23日の時点で、176人の賛同者により目標金額の倍以上となる資金が集まりました。

この「ローカルプロレスラー図鑑」に掲載されるのは、掲載の承諾が得られた全国のプロレス団体とその所属選手、同じく承諾を得られたフリー選手となります。週刊プロレスの名鑑とはまるで違う顔触れとなるのは言うまでもありません。23日現在、北は北海道の北都プロレスから南は沖縄の琉球ドラゴンプロレスリングまで23団体に加え、海外の新台湾プロレスも登場。今後も承諾が得られましたら追加されます。

また、たこ焼きさんのこだわりによりモノクロのシンプルな作りではなく、手にした時の充実感が得られるようにとフルカラーのデザイン・装丁で作られます(A4サイズ40~50ページを予定)。資金が予想以上に集まったため、紙質もいいモノにできるとのこと。

ローカルプロレスラーのプロフィル(身長、体重、デビュー戦、入場テーマ曲など観戦するさいあると便利なデータ)がここまでひとつにまとめられたものは、紙媒体はもちろん、ウェブ上にもありません。全国のプロレスファンの協力により、製作資金の問題はクリアできましたが、本当に大変なのはここから。当然ながら、たこ焼きさんはプロレス業界の人間でなければ、編集のプロでもなく普段は自分の仕事を持っている方です。

その合間を縫って時間を作り、写真のセレクト(手元にない場合は団体や選手本人に提供してもらう)とデータのテキスト化、さらにはデザイン出し、校正、入稿をやらなければならない。もちろん今回のプロジェクトで、たこ焼きさん個人が収益を得ることはありません。つまり、なんの見返りがなくともローカルプロレスラー図鑑を形にしたいという情熱だけで、手間と時間がかかる作業に向き合うのです。

「規模や知名度などのため、既存メディアで紹介されることが少なかった団体・選手でも、一冊の本にすることが可能だと示すチャンスです。まだまだ日本には、皆さんの知らない団体・選手が存在します。名前だけは聞いたことがあるけど…といった選手が収録されているかもしれません。よかったらこの図鑑で、未知のプロレスに触れてみてください」

 



よりよいもの、上質なものを作るために、そしてひとりでも多くのプロレスファンにこの一冊を手にしてもらうために今月31日までクラウドファンディングによる支援を受け付けています。書店での流通は考えておらず、初版のみの発行となるのでこの機を逃したら入手は難しい。

全国の団体が掲載されますが、なんといってもたこ焼きさんはスポルティーバアリーナへ通い続けている方だけに、画像をはじめ名古屋関連のデータが豊富。これから地元でプロレスを見ようと思っている皆さんにとって、その入り口におけるこの上ないガイドブックとなるでしょう。

発送は5月10日頃を予定していますので、5月17日に開催される「愛プロレス博2015」に間に合いますし、パンフレット代わりにスポルティーバアリーナでの観戦のお供にもなります。ファンドは図鑑1冊とサポーターとしての氏名掲載で一口1500円より。複数購入を希望される場合やより高い額でのサポートを考えられている方はプロジェクトページを参照ください。

名古屋発のプロレス草の根プロジェクト――これは本当に意義があり、名鑑に載りたくても載らない全国のローカルプロレスラーたちのモチベーションにもつながると思います。皆様のご支援、よろしくお願い申し上げます。

 



『ローカルプロレスラー図鑑2015』クラウドファンディング
https://moon-shot.org/projects/72
Twitterハッシュタグ:#lwd15