マスク
ドラッグストアに買い物に行くと
突然見知らぬ奥様に、
「こども用のマスクが欲しいのだけれど、
『お一人様につき一点』までなので、
かわりに2つ目を買ってもらえないですか?」
と頼まれた。
少しまどろっこしい言い回しと、
突然のお願いを受けて、
その<状況とミッション>
を理解するのには2秒を要してしてしまったが、
つまりそれは、
<奥様が欲しい2個目のマスク>を、
俺が代わりに替え玉としてレジに並んで買って欲しい
という事だった。
ふむ。
このご時世、
この状況、
それぞれに、
それぞれのシチュエーションがあり、
それぞれの事情があるだろう。
しかし、
俺が代わりに買ってあげたら、
「ほな、」
「結果、お一人様につき2点になってまうでないかい!!」
「ダメに決まってるやんかーーーーい!」
と、俺の心の中の天使が呟いてはいたが、
なんとなく、その<お願い>を受け入れてしまった。
「あ、いっすよ。」
と言って、買おうとしていたお菓子と一緒に
その『こども用のマスク』を持ってレジに並んだ。
レジに持っていくと店員さんが、
「これ、こども用マスクですが大丈夫ですか?」
と心配そうに確認してくれたが、
そのような確認をするって事は、
つまり逆に、俺がまだ
『こども』に見られてるって事だよな。
とも思って妙な気持ちにもなった。
会計を済ませ、奥様にマスクを手渡すと、
「ありがとうございます、助かりました!」
「お釣りは大丈夫です〜」
と、300円程のマスクに500円玉を手渡してくれた。
良い事をしたのか、
それとも悪い事をしたのか、
複雑な気持ちでその場を去る時、
右手には500円玉を握りしめ、
左手にはお菓子が入った袋を持って、
それこそまるで、
初めてのお使いを終えた
「こども」のようだなと思った。