雪
イヤホンをつけて、
曲を再生してから、
10秒。
まだイントロの途中なのに、
もう次の曲を選んでしまう。
もっと!しっくりくる!
今この瞬間に聞きたかったはずの曲が
まだきっとあるはずだ。
と欲張る。
今!この瞬間を待っている曲がどこかにある、
むしろ、
俺が曲を選ぶのではなく、
曲が俺を選んでくれるはずなんだ、
そんな曲が!聞ける!
と
そんなアホみたいな事思って、
欲張ってiTunesを上下にスワイプ、
フリック&ロールで探索する。
先日の東京は大雪。
街に積もるその白のせいで、
いつも通りの景色もとても美しかった。
だからいつも以上にiTunesを上下にスワイプ、
フリック&ロールで今この瞬間に似合う曲を
真剣になって探しながら雪の中を歩いた。
あまりにも真剣になりすぎて
画面上でのDJに気を奪われていたその時、
まるで台本通りに、
雪に滑ってバランスを崩し、
そのバランスを保とうとブレた指は、
せっかく選んでいたその曲ではなく、
意図しない曲を
「ぴ」
と再生させてしまったのだった。
その曲が、
これだった。
妙に雪の街に似合う曲だった。
雪で足元が滑るので、
けして歩道は
「安全地帯」
ではなかったが、
いい曲だった。
運命はいつだって
「そうきたか〜、」
みたいな所から始まる。