一.  軍人は信義を重んずべし。

  凡そ信義を守ること、常の道にはあれど、わきて軍人は信義なくては一日も隊伍の中に交りてあらんこと難かるべし。

  信とは己が言をふみ行ひ、義とは己が分を盡すをいふなり。

  されば、信義を盡さんと思はゞ、始より其の事の成し得べきか得べからざるかを、審かに思考すべし。

  朧気なることを仮初に諾ひて、よしなき関係を結び、後に至りて信義を立てんとすれば、進退谷りて身の措き所に苦むことあり。

  悔ゆとも其の詮なし。

  始めに能く能く事の順逆を辧(わきま)へ、理非を考え、其の言は所詮、ふむべからずと知り、其の義はとても守るべからずと悟りなば、速やかに止るこそよけれ。

  古より、或は小節の信義を立てんとて、大綱の順逆を誤り、或は公道の理に踏み迷ひて、私情の信義を守り、あたら英雄・豪傑どもが、禍に遭ひ身を滅し、屍の上の汚名を後世まで遺せること、其の例尠(すくな)からぬものを。

  深く、警(いまし)めでやはあるべき。

 

 

一.  軍人は質素を旨とすべし。

  凡そ質素を旨とせざれば、文弱に流れ、軽薄にはしり、驕奢華靡(けうしやくわび)の風を好み、遂には貪汚(たんを)に陥りて、志も無下に賤しくなり、節操も武勇も其の甲斐なく、世人に爪はじきせらるゝまでに至りぬべし。

      その身生涯の不幸なりといふも、中々愚かなり。

  此の風、一たび軍人の間に起りては、彼の傳染病の如く蔓延し、士風も兵氣も頓に衰へぬべきこと明らかなり、朕、深く之れを懼れて、曩(さき)に免黜條例(めんちゅつじょうれい)を施行し、ほゞ此の事を誡め置きつれど、猶も其の悪習の出でんことを憂ひて、心安からねば、故らに、また之れを訓ふるぞかし。

  汝等軍人、ゆめ、此の訓誠を等閑(なをざり)にな思ひそ。

 

 

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右の五箇條は軍人たらんもの、暫も忽(ゆるか)せにすべからず。

さて、之れを行はんには、一つの誠心こそ大切なれ。

抑〃(そもそも)此の五箇條は我が軍人の精神にして、一の誠心はまた五箇條の精神なり。

心誠ならざれば、如何なる嘉言も善行も、皆うはべの装飾にて、何の用にかは立つべき。

心だに誠あれば、何事も成るものぞかし。

況してや、此の五箇條は、天地の公道・人倫の常輕なり、行ひ易く守り易し。

汝等軍人、能く朕が訓に遵ひて、此の道を守り行ひ、國に報ゆるの務めを盡さば、日本國の蒼生、挙りて之れを悦びなん。

朕一人のよろこびのみならんや。

 

 

 

 

○しきしまの大和心をみがかずば剣おぶともかひなからまし

 

○ますらをに旗をさづけていのるかな日の本の名をかゞやかすべく

 

○こらは皆軍のにはにいではてゝ翁やひとし山田もるらむ