最近お客さんが処方箋で出してもらったと言ってよく見かける41番の補中益気湯。

この処方は四君子湯という気を補う処方の発展処方で、金元時代に考案された処方です。処方の目的としては「中(脾胃)を補い、気を益すという意味があり、体力が低下しているときの疲労感を補益する働きがあります。

補気剤の王者と言ってもいいぐらい使いでの良い処方で「医王湯」という別名もあります。

 

現代中医学では「中気下陥(ちゅうきげかん)」と言って脾胃の力が虚していて手足の筋肉などの倦怠感や話しても声がしっかりと出ない、目に勢いがない、口の中に白い沫が出たり、食べ物の味がわかりにくい、冷たいものを嫌がり温かいものを好む、臍のにあたって動悸がするなどの症状があるときに使う処方となっています。

また、内臓下垂全般に使うことの多い処方です。

 

とても使いでの良い処方ですが、時々この処方があわない、使う問の辺りが調子が悪い、痒みが出てくるというような症状を訴えている方がおられます。

これは陰虚と呼ばれる体質の人に起こる症状です。陰虚とは、太りにくく、痩せてはいるのだけれど元気がある体質の方です。この陰虚の人は、体の中の陰と陽のバランスが取れにくくなっていて、補中益気湯によって中気を持ち上げると体の中で自由に動き回る気が増えすぎてしまうことがあります。この増えすぎた気は、かゆみやふらつき、しびれや、痛みという症状を起こすことがあります。

 

今日お見えになったお客さんも陰虚の体質で、補陰剤と呼ばれる太り薬を普段飲んでおられる方が、補中益気湯を服用して首や腕に湿疹が出てきてしまい、処方を変えてもらい参蘇飲というこれも気を補う働きのある薬を飲んでますます皮膚の症状が悪化してしまったという方の相談をお受けしました。このかた補中益気湯を服用を始めてから1ヶ月で体重が1kgも減少してしまい、もともと痩せているのに食欲がまして太りますよと言われて処方されたのにと残念がっていました。

陰虚の体質の方は四君子湯の系統である補中益気湯や六君子湯、半夏白朮天麻湯などを服用するとこのようなことが起こるので中医師たいものです。

残念なことに健康保険でケアできる漢方薬には陰虚体質の方に向いた処方がとても少ないのでその点でも注意が必要です。