新型コロナウイルスの治療に、ツムラ小柴胡湯加桔梗石膏がよいというドクターからの報告があり、第7波にはいってから一時的な品切れ状態になっているようです。

 

一部ではこの小柴胡湯加桔梗石膏と葛根湯を併用して、柴葛解肌湯(さいかつげきとう、保険漢方にはありませんが市販薬にあります)のように使って非常に効果を得ているようです。

 

漢方薬をうまく使って、新型コロナウイルス感染に対応するのはとても良いことです。

そこでうまく使うためには、この処方を使わない方が良い方があるのを知っていたほうが良いです。

 

小柴胡湯加桔梗石膏の元になるのは小柴胡湯という処方です。この処方は傷寒論という書物に出てくる古い時代から使われている漢方薬です。この傷寒論の中では「風寒」という邪気が体を侵して敷く症状に対応する処方やその時の体の症状を脈や汗、排便や排尿を中心にして段階的に追っていきながら対応方法を解説した医学書です。

このなかで、侵入した風寒の邪気と、体が持つ防御反応の状態で大きく6段階に分類します。発病の初めから太陽、陽明、少陽、太陰、少陰、厥陰(けっちん)と進んでいくとしています。最初の三陽を陽経、あとの三陰を陰経と分類していて、三陽の段階はまだ体力が衰えていない状態の時で、そこで使う薬剤も力のある作用の少し強めの薬となっています。あとの三陰の段階に進むと体力が衰え、体重の減少、体液成分の減少、慢性の下痢などの症状がある状態です。

 

台湾生まれの東洋医学に造詣の深かった張明澄先生の書かれた「中国医学概論」(医研文庫)には、「三陽の時期は機能失調状態で、三陰の状態は器質の破壊時期」と書かれています。このときに三陽で使う処方を間違えて三陰の状態にある方に使うと、器質性の破壊が進むので注意を促しています。現在の中医学で言えば、薬を使うことにより陰を傷つけてしまい、ひどい急性の陰虚にしてしまうということになります。

 

ツムラ小柴胡湯加桔梗石膏の添付文書にも、使用上の厳重注意として65歳以上の年齢人にはあまりすすめられていませんし、個人的には最近体重が減少した人や、体の何処かに乾燥感を訴える方には使わないほうが良いと思います。

また、肝硬変や間質性肺炎、心臓の器質的な病気のある方で薬剤治療中の方、腎臓に問題があり体の電解質のバランスが取れにくい方なども使わないほうが良いです。

ぜひ漢方薬を使える人をきちんと見極めて、使える人にきちんと使って効果を上げていく、使えない人には無理に使わないということで漢方薬によって事故が起こることのないようにしてほしいです。