このところ痔の相談が目立つようになってきました。
ここ最近あったのは痔瘻の相談で、瘻管ができている方とまだできつつあるという方の相談がありました。
痔はトイレが洋式になり、排便後に洗浄器を使うようになって減少すると言われていましたが、そうでもないようで相談はコンスタントにあります。少し前だと雑誌や新聞で痔専門の薬屋さんがありましたが最近はあまり見なくなましたが需要がへったのでしょうか?
痔には痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔)、痔瘻(穴痔)があります。痔核は直腸の末端にある痔静脈叢でうっ血が起こったときにその一部が腫れてくる症状です。場所によって外痔核と内痔核があり、内痔核は脱肛の症状になることがあります。
症状としてはかなり前に有名な痔の薬のCMで流れていたように「痛み、出血、腫れ、かゆみ(不快感)」です。痔は生活習慣や便通、食事に影響されて起こることが多く、予防としては肛門部のうっ血を避けることになります。この場合女性に多いのが足の冷えがあって下半身の血行が悪くなってしまい、これが痔の原因になることもあります。
この症状によく使われる処方としては「乙字湯」という処方です。この乙字湯は江戸時代、水戸藩の侍医だった原南陽と漢方医が創った処方とされていて、痔核の内服薬として代表的な処方です。痛みや脱肛、出血のある場合に使います。うっ血がひどいときには、同じ先生が創った甲字湯を使ったりや桂枝茯苓丸、桃核承気湯と合わせて使ったりもします。
出血がひどいときには芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)や槐角丸(かいかくがん)、黄連解毒湯、黄連阿膠湯、三七人参などを使います。
さて、痔瘻ですが、よく使われるのは托裏消毒飲(たくりしょうどくいん)や千金内托散(せんきんないたくさん)という処方です。痛みや膿が溜まっているときにはこれらの処方に排膿作用のある処方をあわせたりします。これらの薬は数ヶ月から年単位で服用して効果を得ることが多い薬です。以前あったお客さんは3年続けて穴が塞がったという方もありました。(このときは煎じ薬でした)。
また体が疲れていたり、体力が弱い方の場合は、帰耆建中湯(きぎけんちゅうとう)を使うこともあります。この処方は肉芽を形成してくれると言われていて、これに伯州散(はくしゅうさん)という処方を合わせて使ったりします。
漢方的な塗り薬としては「紫雲膏(しうんこう)」がよく使われます。ステロイド剤を嫌う方にはよく使ってもらうことがあります。以前は、この紫雲膏を成形した座薬がありましたが残念なことに販売中止となっていまいました。妊婦さんに勧めやすいものでしたが復活を望みたいおくすりです。