慢性化した成人の方のアトピー性皮膚炎の相談が昨年何件か続いてあり、その方たちが約一年ほど経過して見違えるほど良くなった方や先がだいぶ見えてきた方続きましたのでこの項を書いています。

 

慢性化したアレルギー性の皮膚炎の場合、多くのお客さんがアレルゲンを減らしたり、触れないようにすごい努力をしていたりします。ですがアレルギーは、血液検査やパッチテストなどで判明するものが全てではなく、人によっては気温の差や湿気、紫外線などもアレルゲンになっていたりすることがあります。これらを全部把握して生活上から取り除くことはとても大変です。

またこれらアレルゲンの暴露から逃れたりしても、慢性化した皮膚炎の場合は、どうやら自分の体の細胞が一部が炎症によっておかしくなり、どんどん体にとって有害な毒素(サイトカインなどの低分子タンパク質や細胞内のRNAなどの断片)に影響されて炎症が皮膚の奥で続いてしまうことがあるのではないかと考えています。

体の免疫反応の引き金になる異物を感知するセンサーには大きく分けて2つあるそうです。(参考「新型コロナ7つの謎」宮坂昌之先生著、ブルーバックスより)

1つは、細菌やウイルスなどの侵入に対して反応するセンサーで、「PAMP(pathogen-associated molecular pattern)」、もう一つは自分の体が壊れたときに放出されるものの分子パターンに反応するセンサーで、「DAMP(damage-associated molecular pattern)」です。これらのいずれもの異物センサーが反応すると免疫反応が起こります。

 

アトピーなどの慢性化した人で皮膚のキメが失われてしまい、皮膚表面はカサカサなのに表皮化に炎症が起こっているような場合には真皮層と表皮層の間の細胞分裂が盛んな層の広範囲に細胞の破壊が起きていると考えられます。また患者さんが自分で掻いてしまうことで細胞の破壊が広がります。このような箇所では外からの異物に対しての反応よりも「DAMP」に由来する免疫反応によって炎症が起こっているので、スキンケアとしてワセリンなどで皮膚を保護してもあまり効果は期待できないでしょう。それよりも内部的な炎症によって生じた予熱を油膜によって外に逃げにくくしてしまうので痒みがひどくなっているのかもしれません。

 

漢方的な治療法で一貫堂という流派があり、この流派で言う解毒タイプがこの内部的な破壊からくる「DAMP」に対しての治療としてとても有効な場合が多いことを経験しています。特に温清飲を基本とした処方によって治療を組み立て、真皮層における炎症を瘀血を解消することにより毛細血管の再生と抹消血行を促進することで、ダメージを与えているサイトカインなどを早く肝臓に集めて解毒するという方法はとても理にかなっています。

 

この治療法でうまくいくと概ね1年ほどで体に広がっていた炎症がおさまるようで、これに副腎機能をアップして副腎皮質ホルモンの分泌を元気にする補腎を併用すると皮膚が見違えるぐらいきれいになっていきます。