腎にあるボイラーの火である命門の火で加熱された腎陰は蒸気のように一定の勢いをもって全身に送り込まれます。気や血がとおる経絡と水が通る三焦はこのボイラーにつながっていてそれぞれ体の中を巡っています。

 

この通り道で流れが悪くなると中にものがつまったようになってしまうことがあります。このつまりが生じるとせっかく薬を飲んでも効果が出なかったり体調が回復しなかったりすることになりがちです。

 

とくに更年期障害や症状が続いているのに検査によって見つけられないような症状でこれらのつまりが関係していることがよくあります。

 

気と血の流れが悪くなったときにできるのが「瘀血」(おけつ)という状態です。この瘀血という考え方は西洋医学の考え方の影響があるとされています。現在の中医学ではこの瘀血の考え方が病気治療の上でとても大切な考え方になっています。古典的な漢方の考え方では畜血とか旧血(ふるち)と言ったりしていました。この古典的な考え方では特に婦人科でこの考え方で治療をしていましたが、治世が落ち着いて栄養状態が良くなり寿命がのびて来ると老化や栄養過多などにより瘀血による症状が増える状況になってきています。

 

男女ともに更年期ぐらいになるとこの瘀血は腎からの気の流れを抑えてしまっていることが多く、補腎薬と呼ばれる薬剤を使っても十分な効果が得られないときがよくあります。

このようなときによく使われる薬剤は「丹参」(たんじん)という生薬の配合された処方です。この丹参は保険で扱える処方には残念ながらありません。丹参は心臓や脳、腎臓の血流を良くすることがわかっていて、また血管の壁をきれいにしてくれる働きもわかってきています。

 

水の流れが悪くなって来ると「湿」や「痰」と呼ばれるものができてこれが気の流れの邪魔をすることもあります。これが溜まりやすくなっているときにはむくみや体のおもだるさや天気の悪いときや雨の日に調子が悪くなるといった症状がみられることがよくあります。

これを解消するためには「二陳湯」(にちんとう)という処方が組みこまれた処方で温胆湯(うんたんとう)や加味温胆湯(かみうんたんとう)という処方をよく使います。これも健康保険では扱っていない処方となります。

 

この湿や痰がからむ症状は男性更年期では一番多く見られます。水分のとりすぎやアルコール、タバコなどによっても取れにくくなり、体重の増加などでも増えた状態になっている方が多くおられます。症状としては気力の低下、うつ的な気分、不安感、パニックなどの症状が出ているときにこの湿や痰が影響していることもよくあります。

 

もう一つ気の通り道を邪魔するものとしては「濁」というものがあります。この「濁」は血液中の汚れとして見出すことが多いものです。血糖、尿酸、中性脂肪やコレステロールなどの汚れ成分が一つの目安になります。また便秘も影響して利します。内臓脂肪が多い方の場合はこの濁と痰湿の両方があるという場合もよくあります。

この症状を改善する漢方としては「田七人参」があります。

 

田七人参はいろいろなサポニン成分を含んでいて、肝機能を助け解毒や血液をきれいにする働きがあります。これによって濁をへらすことができます。また「晶三仙」(しょうさんせん、イスクラ産業)という漢方や加味平胃散(かみへいいさん)という漢方を夕食後から寝る前までに毎日飲むことで濁や痰湿をへらすこともできます。

 

いずれのものも取り除くことで体を丈夫にするための薬剤の効き目が良くなったり、症状が早く良くなったりします。