更年期や不安感から自律神経が失調してしまいドキドキするのが止まらないという方の相談が最近増えています。ご相談の多くは病院での検査では問題はなく、お薬をいろいろと処方されたりしていてもすっきりしないというご相談です。脈拍数で90ぐらいから160ぐらいまでと幅があります。

 なかには甲状腺のホルモン値の異常からという方もありますが、多くの場合東洋医学的には五臓のバランスの崩れと、それをめぐる「気血水」の巡りが悪化したことによって治りにくくなっていることが多くみられます。


 夏場に多いのは、水分や冷たいものの取りすぎで胃のなかに水が溜まってしまい生じているドキドキ。この場合は立ちくらみや頭が重いといった症状を伴っていることが多いのが特徴です。この場合は胃の中の水を取り除いてドキドキを鎮める漢方薬を使います。苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)という処方が代表的です。


 ドキドキから不安感が出るようになり、症状が気になって仕方がないという場合です。この場合は喉につまり感や胸の圧迫感があれば気の巡りが良くないので半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)、不安感が強い場合は、柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)や柴胡疏肝散(さいこそかんさん)、四逆散(しぎゃくさん)を併用します。


 更年期で、貧血傾向があり、不安から外にも出られないというような神経症状が強い場合は、足の冷え、のぼせなどがあれば上盛下虚という状態になっていることが良くあります。これは体をめぐる気や水が胸のあたりで流れがよくない状態になっているために生じます。このケースは更年期以降の女性に多くみられるドキドキです。

この場合は柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)という処方を中心にして、不眠がある場合は天王補心丹(てんのうほしんたん)や帰脾湯(きひとう)または加味帰脾湯(かみきひとう)を併用します。

閉経直後や、のぼせがひどく、手足の冷えが強い場合や甲状腺に少し問題がある場合は知柏地黄丸(ちばくじおうがん)を併用すると早く症状が改善します。

 それと併せて、症状が我慢しづらい時に頓服的にセンソの入った製剤や麝香の製剤、牛黄の製剤を適宜つかいます。

 

 これらの治療法は極めて代表的な物です。もちろん一人一人お薬は違いますが、これらの漢方薬を上手く使うことですごく楽になります。