生薬の構成が穏やかなものでできているので「君子のごとく」といわれて名づけられて漢方薬の四君子湯。それに痰湿(この場合胃酸過多)を良くするために半夏と陳皮を加えて、穏やかな胃腸の薬として良く使われるようになっているのが㊸六君子湯です。
処方箋で良く出されている漢方薬のひとつです。
ですがこの薬も単に胃薬のように考えて、漢方的にきちんと証を合わせないととんでもないことが。
ある男性の方。ストレスを感じると胃が痛くなり吐気がひどくなるので内科で診てもらっていたけど良くならず心療内科へ。そこで安定剤と㊸六君子湯を処方されました。
ところがこの方、漢方の分類でみると陰虚でちょうど虚熱というほてりの症状があり、睡眠不足もありますますその症状がひどくなっている状態だったのが悲劇の元。
ここに脾気を補い体に気を造らせる漢方薬を飲んだために、熱の症状が一機に暴発。顔、上半身、腕にひどい発疹と熱感とむくみとかゆみが。何度かお医者さんに訴えて塗り薬を出してもらったりしていましたが結局皮膚科に行って原因不明のアレルギーとされてステロイドの塗り薬や保湿剤、抗アレルギー剤での治療を。でも症状は一向に改善せず、熱くて熱くてたまらない。
自発的に六君子湯の服用をやめてみたら少しずつ引いてきているものの、掻きむしったところがただれて、そこにステロイドを塗ったためにむくれあがった状態で私のところに相談に見えました。
陰虚の熱をさます薬で少しづつ落ち着いてきているようです。
証明することは難しいですが原因としては六君子湯がこの方の体質では使ってはいけないという方だったと漢方的には思えます。
穏やかな薬でも、証があっていないととんでもない状態になるのが漢方薬。
きちんと専門的な根拠に基づいて使うようにしてほしいものです。(よいち)