漢方薬の理想の形をよく仲間内で話したりします。


ある人は、「西洋医学でよくならない病気が治る薬」といいます。

またある人は「不老長寿の薬」といいます。

またある人は「飲んでいると体が楽で調子が良い薬」といいます。


この3つのうちで一番売れるのは最後の飲んでいると何となく体の調子がよい薬になります。

少し前にあるメーカーの薬屋さん向けの漢方薬を日本で一番仕入れておられるお店の先生の薬の出し方を勉強したことがあります。この先生はご自身の経験から、それまで勉強してきた理論や有名な漢方医学の書物などにのっている薬の使い方と違う使い方をされていました。

あるときうちのお客さんでいろいろ考えてお薬を出したもののもう一つという方がお見えになり、その方にこの先生の経験則から考えられた薬の組み合わせでお薬をお選びしたところ、「症状はあまり変わらないけど、この薬の組み合わせで飲むと体が一番楽になる」といわれたことがあります。

つまりこの先生の考え方は「病気を治す」「症状を抑える」ということではなく「病んでいる体の状態を楽に感じるようにしてあげる」ということに主眼を置いて漢方薬を組み合わせて使われるということのようです。

ですからほかの漢方薬よりもこの先生の漢方薬のほうが「飲んで楽になる、調子がよくなる」という形で多くのお客さんが来られていたということだと思います。


漢方薬を治す目的で使うとき飲みにくかったり、体に思わぬ強い反応が出てお客さんに我慢を強いることになることもありますが、飲んで楽になる薬なら続けるのも楽になります。

もちろん症状や病態によって選択されるべきことなのですが、こういう漢方薬の使い方があるということも治療の選択が広がるのではないでしょうか?