小麦 20g、ナツメ(大棗) 6g、甘草 5g


この料理のような構成が一般的にはヒステリー症状や子供の夜泣きに使われる「甘麦大棗湯」という処方です。

専門的には「臓躁」という状態に使う薬ですが、症状的にヒステリーというぐらいですから体が緊張してわめきちらしたり、ひきつけを起こしたような状態で呼吸が苦しくなったり、おなかにすごい動悸を訴えたりと強い症状が現れたりすることもあります。行動も乱暴になりものを投げたりすることもあります。
現代医学的には鎮静剤のような感じですが、これが効かなくて、うえに書いたような「小麦、ナツメ、甘草」を煎じた煮汁がよく効くというのも人体の不思議なところです。


この処方、考えてみると、最近言われだした「脳腸相関」に関係する薬ではないかと個人的には感じています。小麦、ナツメ、甘草に含まれる糖質やミネラルが腸内の細菌叢に何らかの影響を与えたり腸神経に影響して脳の神経の緊張をほぐすのではないかと考えています。


甘麦大棗湯は見ていますと、躁的にはしゃぎすぎる方、しゃべりだすと止まらない方にもよく効きます。また脳下垂体系の疾患の既往歴がある方の不眠やイライラ、過緊張にもよく効き、これは加味逍遥散やほかの薬よりも優れていることが多いです。

あと、この処方は10代、20代ぐらいの女性の摂食障害、とくに拒食気味の方の精神的な緊張を解くことがあります。量は少しづつ初めて調子をみながら増量しつつ経過を見ていくとよいことがあります。栄養状態がよくない場合にはこれに小建中湯を併用すると効果がよくなります。


慣れないと使いずらい処方ですが、これでないとダメという方もあるちょっと不思議な漢方薬です。