プエルトマドリンという街の
自転車をこいで郊外の
約2時間かかったところ
ヒザまで届かないような乾いた草が
荒野の一面にまだらに生える
舗装してない砂の道
自転車をこぐと
ペダルが重い
そろそろかなと
海が見えるはずの方向に
道を外れて行ってみた
すぐ足もとが崖になり
水平線がみえたので
僕は煙草に火をつける
聞こえてくるのは波の音
鳥の鳴く声、耳に当たる風の音
そして、クジラの潮吹く音
「クジラサン、クジラサン
ボクハ長イ旅ノ途中、
アナタニ会イニ寄リ道シマシタ」
クジラが潮を吹くのが見えてから
少し遅れて音がする
「クジラサン、クジラサン
イッタイ僕ハ、イイ人間デショウカ?ワルイ人間デショウカ?」
クジラが潮を吹くときは
ブハッという音にまじって
トンボ花火が飛ぶときみたいな
ぶいいいんという音がする
「クジラサン、クジラサン
イッタイ人間トイウモノハ
イイモノデショウカ、ワルモノデショウカ?」
ちぇ、クジラめ!
僕の言うことがわかっているのに
答えないなんて!
僕はまた、
2時間自転車をこいで
プエルトマドリンに戻ったんだ




