昨日の記事で、自筆譜の写真をアップしたところ、
各所から反響がありました。

このご時勢になっても、私はまだ鉛筆と消しゴムで五線紙に向かっています。

フィナーレやシベリウスと言うPCのデジタル譜面が全盛で、
このところ大体の作曲家さんは、その方法で作業されているようです。


デジタル譜の良い所は、それこそたくさんあります。

管理がし易く、編集が簡単で、なにより読み易く楽譜が綺麗。

良い事づくめです。


でも、私は頑なに手書きの方法を変えたくありません。
PCが使えない訳でもなく、デジタル譜の長所も良く理解していますけど。


では、なぜ?


私の人生を変えた音楽
ヴァグナーの『トリスタンとイゾルデの前奏曲』に遭遇したのは
45年前、私の中学1年生の時。
すぐにオケ譜を手に入れて、研究、驚愕、研究、呆然、、、
あまりにも凄いインテリジェンスとテクニック、そして精神性の高さに
打ちのめされたおかげで、今の私の音楽人生がある、と言っても
過言ではない。

その時は印刷の楽譜だったのですが、何年か後
私が成人してから、サントリー美術館で『ヴァーグナー展』がありました。

そして、そこで始めて見たんですよ、、、、
『トリスタン』の自筆譜を。


あれだけ、憧れ続けていた譜面が、今、目の前に、、、

涙が自然とこみ上げて来て、100何十年前に、ここの前に
この場所に座って、ヴァグナーがこの楽譜を書いたんだと思うと、
どんな絵画を観るよりも、感動させられる芸術作品だと、感じました。


それだけ、自筆譜には思いを伝える何かがある。

この2~3年、ヨーロッパに行っていますけど、そこでも
ラヴェル、シベリウス、リストなどの自筆譜を観賞して来ました。

それぞれに違った深い感動がありました。



私が、それらの音楽の巨匠と同じ位置にある、なんて
滅相もなく、恐れ多く、思ってもおりませんけど、
何かのカタチで、私の自筆譜も後進の方々のための役に立つ事にならないか?


それに、自分の手で、真っ白い五線紙に一から書き上げた自筆譜には
独特の迫力があるものです。

だから、私がどんな思いで、この作品を書いたか?
を、知っていただくには、自筆譜を見るのが一番早いのです。


今まで、手書きをスキャンした総譜集を1、2と発売しましたけど
それだけではなく、いつか展覧会方式で
私の自筆譜を展示して、実際、ご覧になって頂きたい、
と思います。

作曲家の、血と汗と涙、そして志が一杯詰まっているから。