私がまだ20歳未満のある時期、ものすごくジャズにハマった。ジョン・コルトレーン、マイルス・デイヴィス、セロニアス・モンク、ビル・エヴァンス、ウイントン・ケリー、キース・ジャレット、そしてハービー・ハンコック・・・アルバムとして彼の代表作『処女航海』(1965年)や『スピーク・ライク・ア・チャイルド』(1968年)が好きだった。

  
1973年に問題作『ヘッド・ハンターズ』を発表。私はこのアルバムジャケットが面白かったのでレコードを買って聴いたら、なんじゃこれ?いつも聴いているアコースティックピアノではなく、電気楽器だった。従来のジャズ・ファンの枠を超えて反響を呼び記録的に売上げをあげ、大きな名声を獲得したが、正直私はがっかりした。当時のジャズ・ファンからは、ハービーも堕落したなと非難する人もいたようだ。

ちょうどボブ・ディランが1965年のニューポート・フォーク・フェスティバルで、それまでアコースティックギターで「風に吹かれて」や「時代は変わる」などのプロテストソングを歌ってきたディランがエレキを抱えて登場したため、観客からブーイングを受けたのとよく似ている。
 

1983年のアルバム『フューチャー・ショック』では、ヒップ・ホップを大胆に導入
このころからハービー・ハンコックが嫌いになった。その後10年ほどハービー・ハンコックを聴くことがなかったが、1996年リリースされた「ザ・ニュー・スタンダード」を聴いて、また聴くようになった。

タイトルがスタンダードなので、きっと昔やっていた時のようなジャズバラードでも集めた作品なのかと思っていたらとんでもない!作者をみてびっくりだ!

1    ニュー・ヨーク・ミニット(イーグルスのドンヘンリー)
2    マーシー・ストリート(ピーターガブリエル)
3    ノルウェーの森(ビートルズのレノン&マッカートニー)
4    ホエン・キャン・アイ・シー・ユー(ベイビーフェイス)
5    バッド・ガール(スティーヴィーワンダー)
6    ストロンガー・ザン・プライド(シャーデー)
7    スカボロ・フェア(サイモン&ガーファンクル)
8    シーヴス・イン・ザ・テンプル(プリンス)
9    オール・アポロジーズ(ニルヴァーナのカートコバーン)
10    マンハッタン(ハービーハンコック自身)
11    ユア・ゴールド・ティース II (スティーリーダン)
収録曲の作者やシンガーを見て、なんじゃこりゃ?と驚きだった。当時の売れっ子の作品が多数占めていた。

当時のポピュラー・ソングを見事なシャズ・ナンバーにしたアルバムであった。これぞまさに「新しい」スタンダードだったのだ。

パーソネルは

ハービー・ハンコック(ピアノ)

マイケル・ブレッカー(テナーサックス)

ジョン・スコフィールド(ギター)

デイヴ・ホランド(ベース)

ジャック・デジョネット(ドラムス)

などの豪華メンバーで、第30回(1996年)のスイングジャーナル、ジャズディスク大賞金賞を受賞した「畏れ多い??」大層なアルバムなのだ。

 

それにしても、ハービー・ハンコックはまじめな堅物ジャズピアニストという一面と、真逆の、過激でちょっとお茶目なキーボード奏者でもある。天才だがつかみどころのないアーチストだ。